第58話

電話を切ってから二時間が経とうとしていた。健はまだ帰ってくる気配がない。




怒り、苛立ち、悲しみ、恐怖、ありとあらゆる感情が頭の中をぐるぐるぐるぐると回っていた。御手洗には、これらの感情がないのだろうか。




どうして私がこんな目に遭わないといけないのだろう。人一人のせいで、こんなにも人生が狂わされるなんて思わなかった。




御手洗の嫁は、一体どんな人なのだろう。全く想像がつかない。



自分が刺したみたいなこと言ってたけど、通報した方がいいのだろうか。そんなことを考えているとインターフォンが鳴った。

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