第25話

 帰り道、電車から降りるとスマホに着信が。電話帳に登録された「双葉」の文字が点滅する。


『はい』


『美人な同僚と仲良く仕事してる糸森の電話で合ってるよね、双葉ちゃんですけれども』


 言葉が刺々しすぎるだろう。どうして職場でも怒られてる帰り道でも怒られてるんだ俺は。


『イタ電なら切るぞ』


『そんな態度とるんだ〜私は悲しいです、いつもご飯作ってあげてるのに』


『おい、数回だろうが。毎日作ってるみたいな言い方しやがって』


『冗談はさておき』


 冗談に聞こえないんだよな。

 人の流れに逆らわず、退勤した社畜たちの並に乗る。


『今日社員証届けてあげたじゃん?』


『あぁ、助かった。ありがとな』


『私今週末予定ないの』


 何だ急に。ゆっくり休んでくれとしか。

 こういう内容ならチャットでいいじゃねぇか。しかも俺が電車から降りたらすぐかけてきやがって……監視カメラでもついてんのか?


『……ゆっくり休んでくれ』


『ありがと。そうじゃなくて!』


 電話の向こう側ではむーむーと唸る声。動物かよ。

 まぁなにをご所望かはわからんでもない。休日に外行くのあんまり得意じゃないんだよな。

 5日間で溜まった疲れは2日では癒せないのだ。


『どこ行きたいんだ』


『んーーとね!動物園もいいし美術館もいい、本屋さんにも寄りたいしカフェも行きたい。遊園地も外せないし綺麗な景色も見に行きたい!』


 欲深すぎる。美術館とか意外だな、もっとナイトプールとかチャラついたところじゃないのか。いいのかギャル、それで。


『美術館とか行きたいのか』


『この前読んだ本が美術館を舞台にしてたから!絵とかなんにもわかんないけど!』


 こうやって「わからないこと」を恥ずかしがらないところ、誇らないところは彼女の魅力だと思う。見習っていかないと。


『俺も絵とか1ミリもわからんが、それでもいいなら美術館行くか?』


『決まりね〜!ちなみに他のもいつかは全部行くから、糸森と』


 そう言って彼女はぷつんと電話を切る。破天荒ったらありゃしない。

 それでもその行動力に、明るいところに救われる日もあるわけで。


 すっと軽くなった心を携えて、俺は家へと足を進めた。

 






◎◎◎

こんにちは、七転です。

生まれてこの方書きだめなんてものができたことないんですが、もう新しい話を書きたくなってる。


みなさんは美術館行きますか?私は結構行くんですが……。


話は変わりますが、更新が不定期なるかもしれません。12月は師も走るということで忙しく……飲み会です、えぇ。

忘れたいことが多いので忘年会が多発してます。



またTwitterとかで食べた美味しいものの写真とか載せますね。

ではまた!

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