episode.2 ファーストコンタクトが大事

 私立の高校に入学してすぐ、両親の転勤が決まり私も一緒に転勤先へと引っ越しをすることになった。

 私の両親は転勤が多く、行く先々で友達を作っては別れての繰り返しが普通の日常となっていた。お別れした友達の中には今でもメッセージのやり取りをしている子もいるが、ほとんどとは疎遠になっている。幼少期からこんな生活を繰り返しているんだ、他人に対して友情が芽生えるなんてことはほぼない。だから別れても全然寂しくなんかないもん。

 だって私は愛想がよくて、明るくて、顔がよくて、スタイルがよくて、誰からも愛されるような模範的な美少女転校生というキャラクターを行く先々で演出出来るから。だからそんなキャラクターを演出していれば勝手に友達ができるの。勝手にみんなが私のことを好きになってくれるの。

 でも私は別にみんなのことは好きでもなんでもないけどね。どうせ両親の転勤が決まったら、みんなとはまたお別れするんだから。

 それまでの間、私はこのキャラクターを演出するの。それが自分の今までの人生で学んだ私が賢く生きていく方法なんだもの。


 私は今日も元気で愛想よく、明るくて可愛い美少女転校生を演じるわ。

 担任となる姫川先生はすごく負のオーラが強い女性で、話しをしているときはほとんどの語尾に『鬱です』を付けるような癖のある人物だった。初めて会ったときは本当にこの人が担任で大丈夫なのだろうかと不安が過った。


 姫川先生は私と目線を合わせてくれない。陰キャ特有の対人に不慣れなゆえに出る行動なのかなと思ったけど、リアクションを見ていると不慣れっていうよりかは何か太陽を直視したときに目線を避けるような仕草に近く感じた。

 どうやら最初に姫川先生が説明をしてから私が教室に入るという話しらしい。

 気のせいだろうか。先生の陰りがどんどん濃くなってきているような気がする。


 姫川先生は話し終えると同時に一目散に教室へと入っていった。変わった先生だわ。


 さてさて。この高校でも美少女転校生としてみんなに好かれるよう頑張りますか。

 私がフェイスアップをして笑顔の準備をしていると、姫川先生が教室から助けを求めるような視線を送ってきた。

 

「……そろそろか。ん~! この学校でも天真爛漫な美少女を演じないとね」


 そう意気込み、姫川先生の『入ってきてください』の言葉と同時に元気よく教室へと入っていった。


「おはようございます! 転入してきました清水六花シミズリツカです! 両親の転勤の都合で引っ越してきたばかりで、まだこのあたりのことも分からないことだらけなので教えてもらえると嬉しいです! これからの生活よろしくお願いします!」


 とびきりの笑顔とともに少し胸を張り、人差し指を顔の下あたりに持っていきフェイスラインをシャープに見せる。これで前列の男どもは私の可愛さに太陽礼拝をささげるほどハートを掴まれただろう。

 しかしこのアプローチはあまり同性受けがよくない。といってもどうせほとんどの人間は私のことを好きになってくれるだろうから、アンチが沸こうが関係ない。負け犬は吠えさせておけばいいんだ。


「前の学校では『りっちゃん』『リツ』って呼ばれてたよ! みんなもよかったら呼んでね!」


 前列は成仏したわね。


 にしてもこのクラスの過半数はもうすでに私のビジュアルに虜になっているものだと思ったのだけども、意外と手ごわいわね。前列の男子どもは鬼籍に入ったというのに、その後ろの列以降はほとんど普通の転校生がきたときのリアクションそのものだわ。

 女子に至ってもとくに私に対して嫌悪感を抱いているような表情は見せない。ただ普通に転校生を迎えている絵面だわ。


 どうなってるのこの高校? ひょっとして私よりもさらに上の次元の美少女がいるってこと? 私は死神も虚も超越した存在だと思っていたのに、そのさらに上の次元の存在が目の前に立ちはだかっているとでもいうの!?


「それでは清水さんの席はあそこの空いている席でお願いします。隣に座っている蒼君が面倒見てくれると思うので頼ってください。私には頼らないでください。まぶしすぎて鬱になります」


 姫川先生に促された先に目を配ると、そこには私より遥か上の次元に立っている美少女が鎮座していた。

 

「補足ですが。顔は女の子にも見えますが男の子ですよ」

「先生、その説明いりますか?」


 男の子だったわ。いや、正確にはオトコの娘なのかしら。


 いえ、それよりも重要なそこじゃなくて……彼の顔が私のドンピシャということ!

 え!? すごい! え? まって! 本当に男の子なの? 髪サラサラっだし、肌も白くて、まつげも長いし目も大きい! 唇も! ああ! すごい柔らかそう! 体格も華奢でもうこれ完全に美少女じゃない! 興奮してまうわ!


「最近校内で流行っている『春駆ける星』という漫画を読んでから、蒼君の性別が分からなくなってしまって」

「先生、僕今日は早退したいです」


 何ですって? その薄い本はぜひとも入手したいわね。私実は家では漫画やアニメを貪る人種なので。その手の話しを聞くとどうしてもコミケ本番当日の血がたぎるわ。絶対に観賞用、布教用、実用で揃えておかなくては。


 今までの人生で男なんて私の魅力に群がるだけのただの羽虫程度にしか思えなかったけど。今この瞬間私の三次元での好みのタイプが分かった気がするわ。私ってこういう女の子みたいなタイプの子が好きだったのね。

 別に私の恋愛対象が男だからとか、女の子を好きになれないからってわけじゃないの。 ただ今までそういうタイプの子と会ったこともないし、そんな子がいるなんて聞いたこともないから。でも今この瞬間に私はこの蒼君という子に恋をしたわ。


 だって本当に可愛いんだもの! こんな子が男の子なわけがないじゃない! もう私の中で彼は女の子で確定よ! これはもう運命ね! 神様ありがとう! 私がこんなに早く運命の人に巡り合えてくれて! 正直恋人は『商店街の祓屋』という漫画の押しキャラ天龍院榊テンリュウインサカキ様しかいないと思っていたわ!

でも! でもそれはそれとして! 蒼君よ! 蒼君こそが私の運命の人なんだわ! この梅雨、運命が動き出したんだわ! ああどうしよう~! 胸がキュンキュンしちゃうのぉ~。私もう我慢できないっ! 今すぐ蒼君に抱きついてキスしたい気分なのぉ~! あ、でも待って? いきなり抱きついたら嫌われるかしら。それは嫌ね。ならまずはお友達からよね。そう、友達から始めましょう。そしてゆくゆくは恋人に……ふふ、ふふ、ぐふふふふ。


 おっと危ない。素が顔に出ちゃうわ。平静を保って席へ移動しないと。第一印象はしくじれないわ。


 クラス中が別の話題で盛り上がっている中、私がさっそく蒼君の席へと馳せ参じようとしたところ、少し背の小さなポニーテールの女の子が前に現れた。


「あたし、天野有紀。よろしくね、さん!」


 苗字呼びをわざと強調したかのような言い方ね? 照れているだけかしら。

 ……いや、この目は違う。照れなど一切ない! まさか!


「……こちらこそ、よろしくお願いします! さん!」

「文春はさ、清水さんも困ったことがあれば、文春だけじゃなくあたしに頼ってくれてもいいよ! 文春は今部活で忙しい日もあるから」


 そう来たわね! 幼馴染!? 令和のこの世にそんな設定まだ存在しているとでも!? 王道だからこそ存在しているとでもいうの!? それよりこの子間違いない。私にけん制しているんだわ!


「わーい! ありがとう! では天野さんと今日からはお友達ね!」


 私が蒼君に、いや文春君に好意があるということを勘づいたというの!? なんて野生の勘!


「いいよ!」


 この子、幼馴染というアドバンテージで私の前に立ちはだかるつもりね! いいわ、受けて立つわ! 私の方があなたより美少女な分、そのポテンシャルを最大限に活用すれば勝ち筋は見出せるはず!


「それじゃあ、私は君の隣の席に移動するね!」

「あたしともちょうど隣になるから一緒に行くよ!」


 チッ。よりにもよって隣だなんて。たぶん邪魔してきそうね。まあ今日のところはまず、この天野さんと文春君がどういう関係なのかを探らないとね。


 天野さんと一緒に席へ移動してきた私は金髪のガラの悪そうな男の子と話している文春君のもとへと足を運んだ。


「おはよう! 文春君! これからよろしくね!」


 今日一の美少女スマイルをプレゼントしたわ。私って本当につくづく愛想がいい愛され美少女ね。


「うん、よろしくね。あれ? 僕の名前って知ってた?」

「さっきあたしが教えたのよ」


 さっそく私と文春君の間に入ってきたわねこの子。文春君も私の笑顔を見たというのに顔色変えずに返事をしてきたわ。やっぱり他の男子とは違うわね。好き。


「俺のことはー?」

「あ、ごめん。忘れてたわ」

「おい」


 文春君の後ろの席にいた金髪の不良が彼の両肩に手を置いて前に乗り出す。

 何それ羨ましいじゃないの。初めて男に生まれてくればよかったと思ったわ。


「清水さん、この金髪は北斗流星ホクトリュウセイって、あたしたちの幼馴染よ」

「よろしくな。清水さん」

「うん! よろしくね! でもみんな、私のことはぜんぜん名前呼びでいいんだよ!」

「初対面の相手に名前呼びって、なんか抵抗感あるなーって感じだから……僕は慣れてきたらそう呼ばせてもらうよ」

「フミは考え方が変に堅いよなー。俺はリツカで呼ばせてもらうわ」


 馴れ馴れしいわねこのパツ金。


「あたしも気が向いたらそうする」

「……お前も素直じゃねーな」


 天野さんは私のことを警戒しているようね。


 それにしても文春君。近くで見るとよりビジュアルの強さが際立つわ。ビジュアルだけで判断するなら、きっと彼は押しに弱いタイプの草食男子よ。漫画やアニメのヒロインにもこういうキャラいたし。だったら私がぐいぐいアプローチをかけていけば彼が私のことを好きになってくれる可能性も高いわ! 実は男の子だったという事実は驚いたけど、私はそれでも彼(のとくに顔)が好きなことに変わりはないわ。むしろそのギャップでさらに好きになっちゃったわ!


「ねえねえ、みんなっていつもどんな話ししているの? 私転校してきたばかりで何も分からないから色々教えてほしいな!」


 まずは情報収集が先ね。


「どんなって言われてもなぁ。最近だとフミが入ってるメディア部の取材関係の話しとかが多いかな? コイツうちの高校のいろんな部活に取材行ってるから」

「メディア部?」

「新聞部と放送部が一緒になった部活だよ。僕はそこで今校内新聞の取材を主に担当しているんだ」


 よしそこに入部しよう。正直取材なんて興味ないし、早く家に帰って漫画やアニメに興じたいところではあるけども。今は文春君との親密度を上げることの方が最優先だわ。


「あ、天野さん。バレー部顧問の猿渡サワタリ先生が呼んでましたので体育館までお願いします。連絡遅れてごめんなさい。自分が無能すぎて鬱になります」

「……チッ、こんなときに……わかりました! 今行きます!」


 舌打ちしたわねこの子。


「文春! 余計なことすんじゃないよ!」

「え? 余計ってなによ?」

「いーから! あーもう! じゃああたし行ってくるから! 流星あとよろしく!」

「あいよー」


 その場を名残惜しそうに彼女は教室をあとにした。

 よしこれで邪魔者が消えたわ。心置きなく文春君と親密になれるわね。


「メディア部っておもしろそう! 私も取材してみたいなー!」


 関係を構築するチャンスだわ。天野さんがいないうちに文春君からいろいろと聞き出しましょうか。


「取材ってことはこの学校のこととかいろいろ知れるってことでしょ? それなら私転校してきたばかりだし、ピッタリの部活だと思うの!」

「たしかに。でも本当にうちの部でいいの? 他にもいろいろ部活あるけど」

「俺は陸上部だけど、リツカは何部に入ってたんだ?」

「私は両親の転勤が多かったから部活とかには所属してなかったな~」


 何気安く私のこと呼び捨てにしてるのよこのヤンキー崩れ。あ、私が名前で呼んでいいって言ったんだわ。


「へー、部活への入部希望ってことは、今後は転勤の予定がないってことか?」

「そうなの! 今回は卒業までは転勤ないかもって話だから部活に入ろうと思って!」

「なんかすごく大変な生活を送っているんだね」


 文春君が私を心配してくれている! 嬉しいわ!


「いきなり入部ってのも……他にいろいろと部活もあるし、よかったら今日の放課後に取材で校内を回るから一緒に見学に来てみる? できればメモとか手伝ってくれると嬉しいんだよね。今日僕一人しか活動できる人いなくてさ」

「ぜんぜんいくよ!」


 早くも二人きりの時間! 運命だわ! ドュフフフっ。


「……あー、フミ。お前さ、このこと有紀には黙っといたほういいかもだぞ」

「え? なんで?」

「いや、その、な。あー、なんでもねえや」

「流星ってたまによくわかんないこと言うよね」

「心配してんだよ」

「ほーん」


 何やら二人でコソコソと話しているわね。あんなに顔を近づけてあのパツ金なんて羨ましいことを。そこを譲ってほしいものね。


「それじゃあ清水さん。放課後はよろしくね」

「はい! よろしくです!」


 文春君の微笑みが見れたわ! もうこれだけで一生分の運を使っちゃったかしら!? でも後悔なんてないわ! 今日の放課後は取材で校内のあちこちを回るのよね。そこでも彼と仲良くなるために、私はこの学校のことをよく知っておかないとね。


「有紀。これは厄介なことになりそうだぞ」


 後ろでひとりごとを呟くパツ金をしり目に、私は隣の顔面つよつよ天使様の周りの空気を静かに吸引した。

 放課後が待ち遠しいわね。ちょっと高めの柔軟剤かしら。



 ◇◇◇



 放課後の学校は、徐々にオレンジ色に染まりはじめていた。一日の疲労が肩に重くのしかかり、僕の足取りも重くなる。

 今日は朝から転校生の清水さんの相手をしていたのだが。距離がすごく近いし、質問攻めにあうし、有紀からは悪態をつかれるしで一段と疲れたな。

 いつもは会話に混ざってくる流星も清水さんに気を使ってなのか、どこか遠慮がちでほとんど僕一人でやり過ごしていたから。


「はぁ」


 思わずため息がこぼれる。

 有紀の僕に対する気持ちは分かっている。新しく来たかわいい女の子と僕がずっと話していることにヤキモキしているんだろうと思う。問題なのは、清水さんの方だ。

 彼女と一日も接していればその好意に気づかないはずもない。僕はそこらのラブコメの主人公とは違う。あんなに露骨にアプローチをされていたら普通に勘づく。そして、彼女はそれを見越した上で僕に迫ってきているんだ。

 僕の一応思春期の男子だし、あんなにかわいい子からアプローチを繰り返されたら正直悪い気はしない。でも、今は部活の方に熱中したいから、やっぱりここもどうにかやり過ごして、僕からの興味を引くように仕向けたいんだ。

 別に恋愛なんてこの先の人生でいくらでもできるんだから。それなら今この高校生活中にやれることを精一杯やりたい、というのが僕の考えなんだけど。


「有紀に変な勘違いされなきゃいいんだけど……」


 親しき仲にも礼儀あり。いくら好意を寄せてくれるからと言って、僕ばかりが不誠実な態度で接していては彼女もきっと気分を悪くするだろう。

 今までも女子に好意を寄せられるなんてことはあったけど、幼馴染がその中に含まれるとなると、なんというか難しく考えてしまう傾向にあるのかもしれない。


「はぁ」


 またため息が出た。なんかこんなんばっかりだな僕は。


 今日は瑠璃川さんが家の手伝いでお休みで、もう一人は昨日から風邪で学校を休んでいるみたいだし、取材は僕と……清水さんの二人か。

 日中はまだ他に人がいたからなんとかなったけど、放課後二人きりっていうのはちょっとつらいところがあるかな。

 取材先の部活は漫画研究部とテニス部か。テニス部はこの前の取材でいなかった部長のみのインタビューとして、問題は漫研だよな。僕と流星が題材となった作品の押収をしなくちゃいけないし。

 有紀がちょうど実物の本を持っていたから少し読ましてもらったけど、途中で僕の尊厳と貞操が破壊されていく音が頭の中に鳴り響いて最後まで直視できなかった。

 僕の後ろに流星のあんなものが…………おっええ。


「ちょっと憂鬱な気分になるよな……」


 僕が独り言をつぶやいたそのとき。清水さんの声が聞こえてきた。


「文春君! お待たせしました!」

「ん。大丈夫だよ。今日は二つしか回らないし、時間もあるからゆっくり行こう」

「はい!」


 清水さんが小走りに駆け寄ってきて、僕の隣に並ぶ。


「最初は漫研の取材だよね! 私、漫研ってどんなところか気になってたんだ!」

「清水さんは漫画とか読んだりするの?」

「うん! お兄ちゃんがよく漫画を買ってくるので、その影響でアニメとかも観たりしてるよ!」


 意外だな。僕はてっきりファッション雑誌ばかりを読んでるものと思ってたけど。


「どんなの読むの?」

「いつもは少年漫画がほとんどかな! 最近だと『商店街の祓屋』って漫画がイチオシ!」

「それ僕も読んでるよ。けっこうおもしろいよね」

「ホント!?」


 商店街の祓屋といえば、ヒーローとヒロインがそれぞれ活躍する陰陽ファンタジーだ。商店街を舞台に派遣された祓屋のヒーローが襲い来る妖をヒロインと一緒に祓っていく王道ものだったな。ヒロインが有紀に似た勝ち気な性格で炎の術を使うのに対して、ヒーローはクールな性格で氷の術を使って闘うんだよね。

 バトルものを読んでいるのはお兄さんの影響なのかな?


「たしか今は『蘆屋カンパニー襲来編』だっけ? 妖とのバトルから対人戦闘に変わって一層面白くなってきたよね」

「そう! とくに私の推しの天龍院榊様の登場シーンはすごいよくて!」


 けっこう読んでるなこの人。見た目とのギャップがすごい。いや、別に惹かれてるわけではないけど。


「あ、ごめんなさい。盛り上がりすぎちゃった」


 そう言って彼女はあざとく舌を出して頬を赤く染める。


「なんとなく、清水さんって漫画やアニメとかってあんまり興味なさそうなイメージだったから、ちょっと意外だなっては思ったかな」

「ふふっ、よく言われるの!」

「そうなんだ」

「だから、こうやって趣味のことを話せる人が近くにいるのが嬉しくてついはしゃいじゃうの!」

「あはは、大げさだよ」


 明るくてよく笑う子だ。今日会ったばかりの僕にも気さくに話しかけてくれるし。普通の男子ならここで恋に落ちているんだろうな。

 

「でも、本当に意外だなって」

「そう? 私ってそんなにお堅いイメージ?」

「いや、お堅いというか、もっとこう……女子高生って感じのファッションとかに興味のあるようなイメージだったからさ」

「そうかな?  ふふっ。文春君っておもしろいの!」


 いや、別におもしろくはないと思うんだけどな。


「私はね、自分の好きなものには素直でいたいの!」


 そう言って彼女は僕の前に躍り出てくるりと一回転して見せた。スカートがふわりと浮き上がり、彼女の細くて白い足が覗く。

 自分の好きなものには素直に、か。その気持ちは分かる気がするな。


「だから私は自分の好きなものに素直でいるの! それがアニメでも漫画でも、なんでも、ね!」

「そっか」


 素直に自分の好きなものを好きと言えるのはすごいな。ちょっと、羨ましいかも。

 そう話しをしていたら漫研の部室が近づいてきた。


「じゃあ、まずは漫研に行ってみようか」

「うん!」

 

 二人で漫研の部室の前に立つ。ここが、漫画研究部の部室か。初めて来たけど、意外と普通っぽいんだな。もっとこうオタクっぽいというかアニメチックな装飾とかされてるのかなとか思ってたけど、そんなことはなかったみたいだ。

 扉を開くと目の前には作業用と思われる机が並び、席にはそれぞれ数名ほどの部員が座って僕たちに気づいてないような様子で一心不乱にペンを動かしていた。


「あのー、メディア部の蒼です。今日は校内新聞に載せる部活動紹介の取材で来ました」


 僕たちが入ってきたことに気づいていなさそうだったので、少し大きめに声を張った。

 すると一番奥の席に座っていた部長らしき小柄な女子生徒がその小さな顔には大きすぎる丸眼鏡をくいっと持ち上げて、こちらに振り返った。


「ああ! メディア部の蒼さんですね! お待ちしておりました!」


 彼女はそう言うと席から立ち上がりこちらへ小走りで駆けてくる。

 そして僕たちの前まで来ると、スカートをちょこんと持ち上げお辞儀をした。


「私は漫画研究部部長で二年の堂島絵美ドウジマエミです」


 あ、この人が部長なんだ。なんかすごく大人しそうな人だな。僕と流星で薄い本を出しているというから、もっとこう……オタクっぽいというか、奇抜な髪形とかしてるイメージだったけど。でも、よく見たら髪形は毛先がウェーブのかかった長髪で肌は僕よりも白くて外国の人形みたいだな。

 僕も男子の中ではそこまで背が高い方ではないけど、そんな僕が視線を下に向けないと顔が見れないくらいには身長の小さな人だ。


「部長さんだったんですね」

「はい! よろしくお願いします!」

「こちらこそです。じゃあ、さっそく取材の方させてもらってもいいですか?」

「はい! あ、でもその前に部員のみんなに声をかけてくるので、こちらのソファにお座りください」


 そう言って彼女は作業中の他の部員に声をかけにいった。

 僕たちは堂島先輩に言われたとおり、応接スペースのような空間にあるソファへと座った。


「先輩が戻ってきたら取材始めようか」

「うん!」


 清水さんは元気よくそう返事をすると、漫研の部室の中をきょろきょろと見回していた。


「どうしたの?」

「……『春駆ける星』って本はどこにあるのかなって」

「それは今から僕が押収するんだよ」


 誰だ。彼女に余計なことを吹き込んだのは。


「うお! この前部長が書いた大作のモデルがいる!」

「え!? まって!? 実物初めて見たけどめっちゃかわいい!」


 何やら向こうで盛り上がってるようだけど。あれ描いたのってあの人だったのか。雰囲気的には、木漏れ日のあたる中庭でローズヒップティーを味わいながら文庫本を嗜む方があってる気がする。


「ふふんっ」


 なぜか僕の隣では清水さんが誇らしげに胸を張っていた。


「お待たせしました!」


 そう言って堂島先輩は僕たちとは向かい側のソファに腰をおろす。それに合わせて僕も姿勢を正した。

 先輩は隣に座っている彼女に目を配り。


「そちらの女の子は校内で拝見したことのない方ですが……」

「私は今日この学校に転校してきました! 清水六花です!」

「まあ! そうなんですね! ということは、蒼さんと同じクラスでしょうか?」

「はい!」


 先輩が僕へと視線をスライドさせる。


「そうですね。僕は彼女と同じクラスです」

「そうですか! では改めて、私はこの漫研部の部長をしています二年の堂島絵美といいます。蒼さん、清水さん、本日は取材の方よろしくお願いしますね」

「こちらこそお願いします!」


 清水さんはそう言ってぺこりとお辞儀をした。


「では早速取材の方を始めても大丈夫ですか?」


僕がそう聞くと彼女は少し申し訳なさそうに眉尻を下げて言った。


「その前に一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「はい? なんですか?」

「蒼さんは後ろの方はまだ処女ですか?」

「何言ってんだ」


 いきなり何を言い出すんだこの人は!?


「いえ、この前私が描いた作品では開通済みなのですが、もし現実でもそうなのであれば巻末の注意書きにある『この物語はフィクションです』を『この物語はノンフィクションです。おめでとうございます』に修正した方が良いのかな、と」

「本人目の前にしてよく堂々とそんなこと聞けますね! ノンフィクションですよ! ノンフィクション!」

「その反応は私の作品をすでに拝見されているのですね! 嬉しいです!」


 忘れていた。さっきまでは優雅に中庭でローズヒップティーを飲んでいるようなお嬢様なイメージだったけど、実際この人は他人のヒップにあらぬ幻想と欲望を手掛けた作品を作るような人間だった!

 後ろがもぞもぞしてきたぞ!


「よかった。まだバージンは守っていたのね」


 清水さんがボソッと呟いたけど、声が小さくてよく聞き取れなかった。


「あーっと、堂島先輩。今回は取材の他にその本についても僕の方からお願いがありまして……」

「続編のご希望ですね! すでにペン入れに入っていますのでご安心ください!」

「安心できるか! 没収しに来たんですよ! 没収!」


 そう言うと堂島先輩はキョトンとした顔で小首をかしげる。


「「どうして?」」


 なんで清水さんまで一緒に先輩と同じリアクションしているのかは気にしないでおこう。


「実はこの漫画はですね……もうアップロードしているんです」

「……アップロード?」


 おやおや? おやおやおや? 僕はてっきりアナログな手法だとばかり思っていたんだけど。だって有紀に見せてもらったのはしっかりの本の形になっていたし。


「本という形にしたのはほんの数冊だけで、基本的に私たちの部活動で制作した作品はインターネットにアップロードして、たくさんの人からの感想や評価をいただくというのが主流になっています」


 とてもにこやかな表情で話す先輩の姿が今の僕には悪魔のように写っている。どこかに腕の立つ悪魔祓いはいませんか?


「大丈夫、文春君。私は処女よ?」


 いきなり何を言い出すんだ清水さんは? 同情しているのか?


「あの、清水さん、なにを……」


 ハッとした彼女は慌てて自分の頭をコツンとたたき。


「美少女をかんじゃったみたい! えへへ!」

「そ、そうなんだ」


 脇汗すごいよ、とはさすがに今日会ったばかりの女子の前では言えなかった。


「蒼さん。インターネットにアップロードしたということは、もうすでに私たちの作品は多くの人の目に触れているということですよね?」

「……そうですね」

「では、その感想や評価はどうなっていると思いますか?」

「え? それは……良い意見も悪い意見もあるんじゃないですか?」


 あ、なんか嫌な予感がする。この流れはまずい気がするぞ!


「はい! その通りです! つまりですね!」


 堂島先輩は立ち上がり僕の目の前まで来て言った。


「すでに『春×星』『星×春』というカップリング論が私の投稿したページのコメント欄で舌戦が繰り広げられ、一部の界隈では大きな盛り上がりを見せております。今年の夏コミの予定も立てておりますし、一定数以上のファンを抱えるこのコンテンツにおいて! 何者も私たちの邪魔はできないということなんですよ!」


 この人うやむやにしてこの場を逃げ切る気だ!


 僕の隣で清水さんがうんうんと頷きながら拍手を送っている。その後ろでは漫研の部員たちも同じように拍手を。

 ダメだ、もうこれは諦めるしかない。そもそも校長先生が重版を検討している時点でこの学校に僕の仲間はいないんだ。ごめん、流星。


「文春君? 神の御前よ? そんな悲しい顔をしないで?」

「……清水さん? なんかここに来てからキャラ変わってない?」


 女の子ってなに考えてるのか分からない。


「あー、えっとー。それでは漫研での活動は主に制作した作品をネットにアップロードして評価や感想を得ることで部員全体のモチベーション向上に繋げている~って感じですかね?」

「そうなりますね!」

「それではあと堂島先輩に漫研のおすすめポイント、というのを提出いただけたら取材は終了になります」

「おすすめポイントですね! 分かりました! 後ほど提出しにまいりますね!」

「はい、お願いします」


 疲れたなあ。しばらく漫研には近づかないでおこう。ネタにされそう。


「それでは、取材の方は以上です。ありがとうございました」

「ありがとうございました!」

「いえ! こちらこそ取材のためにご足労いただきありがとうございました」


 なんというか、こういう言葉遣いや立ち居振る舞いはしっかりしているんだけどなぁ。


「清水さん、帰ろうか」


 これ以上ここにいては自分のあずかり知らぬところで恥ずかしい妄想が本になる可能性が増えそうだ。なるべく早く立ち去るに限る。


 僕は清水さんと一緒に部室を後にした。


「なかなか楽しいところだったね!」

「そうかな。僕はすごく疲れたよ。しばらくは漫研に行かなくてもいいかな」

「私はまた来たいな!」


 よほど満足したのか。彼女は浮足立ったようにはしゃいでいた。


「そうだ! 私ってまだ文春君と連絡先の交換していなかったよね?」


 スマホをカバンから取り出すとQRコードが表示された画面を差し出してきた。


LEINレイン! やってるよね? 交換しよ!」

「うん、いいよ」

「ありがと! これからもいっぱいお話しできるね!」

「ははっ、お手柔らかに頼むよ」


 連絡先を交換したあと僕たちは今日最後の取材先であるテニス部の元へと向かった。テニス部の取材は漫研と違ってスムーズに進行することができた。やっぱり普通の人が一番だな。

 今夜は早く寝よう。


 取材を終えた後、僕たちはそれぞれ別れを告げて家路についた。

 僕は家に帰るとすぐに自室へと引きこもった。学校の取材で精神的にも肉体的にも疲れてしまったので、今日はもう何もしたくない。

 ベッドに横になり、スマホをいじっていると、ふと清水さんからメッセージが届いていることに気づいた。


『今日は取材に付き合ってくれてありがと! 明日もよろしくね!』

『こちらこそ、今日はありがとう。また明日ね』


 僕はそう返信してスマホを枕元に置いた。

 そしてそのまま目を瞑る。仮眠を少しとってからご飯とお風呂にしよう。

 明日からも忙しい一日になりそうだ。



 ◇◇◇


 

 今日は久々によく晴れた天気だ。最近はずっと雨が続いていたから日差しが新鮮に感じるな。

 清水さんが転校してきて二週間が経過した。

 あの後、僕と清水さんは他の部活の取材を回り、最終的に清水さんはメディア部に入部することになった。彼女は誰にでも人当たりがよく、メディア部の他の部員ともすぐに打ち解けていた。美少女転校生のコミュニケーション能力の高さには驚かされる。ひょっとしたら有紀よりも人と打ち解けるのが早いんじゃないだろうか。


 ちなみに彼女からのアプローチは転校初日から相変わらず続いており、僕はのらりくらりとかわしているつもりだ。

 有紀も最近はよく僕と清水さんが一緒にいるとどこからともなく間に入ってくるようになった。二人とも表面上は仲良さげに見えるのだけど、時折不穏な空気が流れることがあるのでちょっと心配だ。


「おはよう、文春」

「あ、おはよう。有紀」


 教室に入ると有紀が話しかけてきた。


「……清水さんとはどうなの?」

「どうなのって。今日も放課後は部室で一緒に取材した内容を記事にまとめるけど」

「そうじゃなくて――」


 と言いかけたところで有紀はなにか思いとどまったような表情で。


「いや、とくになにもないならいいや。文春ってそういうやつだもんね」


「なんだよ、そういうやつって」

「なんでもない。気にしないで」


 有紀はそう言うと自分の席へと戻っていった。

 有紀が何を言おうとしたのかはよく分からないけど、僕は僕でやらなきゃいけないことがある。それは……。


「……よし、こんな感じかな?」


 記事のフレームはあらかたできたし、あとはどこに取材内容をバランスよく配置していくかだな。このあたりの作業は放課後に部室でやっていこう。


 今日はいつもより授業が進んでいくのを早く感じた。

 清水さんはいつものように事あるごとに僕に話しをかけ、それに有紀が入ってきて流星が後ろからからかってくる。何気ない日常の風景だ。


 放課後になると僕たちはそれぞれ部活へと足を運ぶ。


 部室に入るとすでに清水さんと瑠璃川さんが待っていた。どうやら僕の方が遅かったようだ。


「ごめん、ちょっと遅くなった」

「大丈夫だよー!私もさっき来たところだから!」

「私も今着いたばかりです」


 そんな会話を交わしつつ、僕達はそれぞれの作業にとりかかるのだった。

 作業が一段落ついたところで部室の扉が開いた。


「おっつー。みんな調子はどうよ?」


 入ってきたのはメディア部二年の副部長、横島希紗ヨコシマキシャ先輩だった。僕を漫研に売った張本人だ。


「あ、先輩。いたんですね」

「最近、蒼君は冷たいなー。まだ私が漫研で蒼君のエロ同人誌作ったこと怒ってんの?」

「怒るに決まってるでしょう」


 横島先輩は『まあまあ。これでも食べて落ち着けって』と言いながら、駅前のちょっと高めのシュークリームを僕たちに配った。

 まあ、僕がいくら甘党とはいえ、こんなシュークリームで許すわけないけど? 今回は部室の空気を悪くするといけないから甘んじて受け入れるとしようか。


「で、今日はみんなどんくらい進んだ?」

「僕はもうすぐ終わるところです」


 横島先輩が部室に入ってきてから再び作業を始めた僕は先ほど取材した内容をまとめているところだった。


「じゃあ、私が一番だね!」


 清水さんがそう言い、今日の取材内容をノートにまとめて横島先輩に渡す。

 横島先輩はそれを見ながら言った。


「いやーでもあんたらこの短期間でよくここまでまとめたよね。これ掲示までまだ一週間あるでしょ?」

「そうですね。最初はそんなに長くないのかなって思ったんですけど、結構やることいっぱいありましたし」


 横島先輩の言葉に瑠璃川さんが答える。


「たしかにー。各部活の取材したり、取材メモまとめたり、インタビュー内容考えたりでやること多かったよね!」

「そうですね。ですがなんとか無事に終わったのでよかったです!」


 確かにここ二週間は濃密だったと思う。


「まあでもこれであとは写真とか配置していくだけだし、みんな頑張ってね!」


 横島先輩がそう言うと、それにつられて他のみんなも『はーい』と返事をした。


「あ、ところで先輩。真宵君の方はどうです?」


 真宵寛太マヨイカンタは僕たちと同じ一年生の男子だ。たしか彼は病み上がりの後復帰して、今は放送周りの担当をしていたはず。最近見かけないからちょっと気になってんだよね。


「真宵君は引き続き私と一緒に放送の方をやってくれているよ。あっちはあっちで学校行事の打ち合わせとかも兼ねてるから今は手が空いてないみたいね」

「みたいねって、他人事ですよね」

「うん。全部押し付けてきたから」


 こういう人が将来会社で部下に仕事を押し付けるパワハラ上司になるのだと思う。


「そうそう! そんなことよりみんなに週末行ってきてほしい取材があってさ!」

「なんですか? 週末ってことは土日ですよね?」


 僕がそう聞くと横島先輩は鞄からなにかのチケットを三枚取り出し、僕たちに見せた。そのチケットは僕もよく知っているものだった。


「これ、羊山メリーランドのチケット! 夏休み前に地元の遊園地の紹介記事を書いたらどうかって、先生に渡されたんだよ! 私と一緒に行く予定だった友達が急に予定入ったみたいでさ! よかったら代わりに行ってきて! てか行け!」


 横島先輩から渡されたのは地元民なら誰もが知る遊園地のチケットだった。てか参加強制じゃないか。


「メリーランド? 遊園地?」

「そういえば清水ちゃんはこっちに転校してきたばかりで行ったことないんだっけ? ちょうどいいから、蒼君と瑠璃川ちゃんの三人で一緒に行ってきなよ! もちろん蒼君は強制ね」


「なんで僕だけ強制なんですか」

「だって、蒼君はどうせ暇でしょ。だから一緒に行ってあげて!」

「余計なお世話ですよ! 僕だって予定くらい……ありますけど?」

「なんで疑問形なの? ないんだから行ってきて」

「は、はい」


 半ば強引に行くことになったけど肝心の二人はどうだろう。


「私も週末は家の手伝いがないので大丈夫ですよ」

「私も行きたい! すっごく楽しみだな!」


 行く気マンマンですね。


「じゃあ、週末は三人ね! 楽しんできてよ!」

「楽しむっていっても取材でしょう?」

「そんな真面目に考えなくていいって! 取材なんて二の次で普通に遊園地を楽しんできなさい」


 そう言うと横島先輩は意気揚々と部室を出て行った。

 まったく勝手な先輩だな。


 横島先輩が出て行くと今度は瑠璃川さんが口を開いた。


「それでは週末に駅前に集合して地下鉄から向かいましょうか?」

「そうだね。その方が清水さんにとってもよさそうだし。清水さんもそれで問題ない?」

「問題ないよ! じゃあ駅前についたら連絡するね!」


 そう言って僕たちは週末に取材もとい遊びに行く約束をした。


 文春たちは再び作業に戻ると、部室の前をたまたま通りかかっていた有紀はわなわなと口を震わせていた。

 有紀は遊園地のくだりから部室の中で交わされていた会話を盗み聞きしていたのだ。


「これはゆゆしき事態ね。まさか、文春と清水さんが遊園地デートに行くなんて……あたしはどうすれば」


 有紀はジャージのポケットからスマホを取り出すと、一目散に流星へと週末の予定について連絡をしていた。


「これ以上あの女の好き勝手にされないように監視しなきゃ!」


 そんな有紀が盗み聞きしているとはつゆ知らず、六花は週末の予定に喜びを隠せないでいた。ここ二週間ほどメディア部の面々と一緒に時間を過ごしてきたが、自分以外の女性が文春に好意を寄せいているような素振りはとくに見られなった。

 これはすなわち明日の遊園地取材に瑠璃川翠が一緒に同行しようとも、彼女は文春を異性として意識していないので実質自分と文春のデートになるんじゃないかと。

 男性経験皆無の六花はとりあえずスマホでデートの必勝法をググっているのであった。


 そして水面下でそんなやり取りが行われていると知らない二人は、週末の取材の段取りを考えつつ目の前の作業に集中していた。

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青春の大バカ野郎! 茶葉茸一 @chabatakeichi

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