ダニエルとアンナの年越し

「にしても今年の冬はすごい雪だねぇ」


 ダニーはなぜだか嬉しそうにしている。この雪ではフライトは中止だろう。各飛行場への連絡で疲弊しきっているアンナは、ぐったりとソファーに座っている。


「元気そうで結構ね。明日には地獄の雪掻きが待っているというのに」


 鋭い瞳がダニーを貫く。うっ、と苦しそうにダニーは呻く。もう若くは無いのだ。一日雪掻きをしたら体がどうなってしまうのだろうか。かといって、愛しのハニーには雪掻きをさせられない。


 うんうんと悩むダニーに、アンナはくすりと笑いを漏らす。


「大丈夫よ。翠先生や仁が手伝ってくれるらしいわ。きっと清凪せなも来るだろうし」

「それは嬉しいねぇ!仁くんや清凪ちゃんはともかく、翠くんはちょっと心配だなぁ」


 確かに、と二人で笑い合う。普段は高飛車な物言いが多いアンナも、疲れや年越しの緩い空気のせいでふわふわとしている。そんな彼女が愛おしくて、ダニーの口元が自然と緩む。


 穏やかな時間が過ぎていく。ぽつり、ぽつりと話が出ては盛り上がり、そしてまた静かになる。時計の針はあと少しで年越しを指していた。


「あ、見てよハニー!もうすぐ年越しだよ!」


 子供のようにはしゃぐ彼を見て、アンナはまた笑った。膝にかけた毛布を引き上げて、彼の方へと寄る。疲れのせいか、お酒のせいか、もうだいぶ眠たくなってきた。けれど、年を越すまでは彼と起きていたい、と口には出さずとも思う。


『それではカウントダウンを始めます!』


 ラジオのパーソナリティが声を上げる。機械の向こうの声と共に、ダニーも数字を数えている。


さん



いち



『ハッピーニューイヤー!』

「ハッピーニューイヤー!」


 わっ、と空気が明るくなる。にこにこと、ダニーは楽しそうにアンナの方を見ている。


「ふふ、ハッピーニューイヤー。今年もよろしくね」

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