鬼の根城

文月ヒロ

鬼の根城

 

 ――今、ここに告白する。


 俺はたった1つの、しかし、唾棄だきすべき途轍もない過ちを犯してしまった。


 10月の夜空は清々しい程に晴れ渡り、満月の冷たい光が頭上から降り注いでいた。

 異様に明るく、月が俺を逃すまいと監視の目を光らせているのではとさえ感じる。


 怖かった。

 満月ではなく、澄み渡る月明かりにこの身が晒され続けるその事が、俺には酷く耐え難かったのだ。


 草むらをかき分けながら、一心不乱に森の中を駆ける。


『えっと、それじゃ皆集まった事だし、そろそろ肝試しの時間という事で……行こうか』


 始まりは、10年来の友人であるトモヤを肝試しに誘ったあの時だ。


 トモヤと俺は腐れ縁ともいうべき関係にあった。

 中学、高校、大学を通して同じクラス、同じ部活に所属し、更には、別々に決めたはずなのにゼミまでまるで示し合わせたように同じという程だ。


 トモヤはとにかくモテた。

 顔が良く、勉強も得意で、性格すら周りからお人好しと言われるくらいだったのだから当然である。


 おまけに、トモヤはバスケ部のエースだった。

 その地位は中学から現在の大学に至るまで不動であり、2年前には遂にスカウトの話が来て、彼が心底喜んでいたのを今でも覚えている。


 そんな彼を友人として誇らしく思う反面、俺は彼を憎んでもいた。


 俺は顔も頭も大して良くなかった。

 性格もどちらかというと内気で、その所為か皆から「根暗で地味な奴」として扱われる事が多かったと思う。

 唯一の取柄のバスケすら、トモヤの実力の前では霞んで見えた。


 常に優秀な友人と比べられ、存在を下に見られ続ける毎日。

 何とかバスケの強豪校には入れこそしたが、レギュラーには選ばれず、ベンチ側からトモヤの活躍を見ている時が一番辛かった。

 それでも俺がバスケを辞めずに続けて来られたのは、高校時代に出会った同級生の女子の存在が大きかった。


 彼女――マナミは、バスケ部のマネージャーだった。

 とても美人でトモヤと同様、よく男子からモテた。


 同じ学年の女子なのに、どこか遠い存在。

 けれど、彼女は落ち込んでいる俺にも優しく接してくれた。励ましてくれた。

 そこに特別な感情があっただなんて勘違いはしないが、それでも俺がマナミに惹かれて行ったのは当然の結果だった。


 結局、高校では告白出来ずじまいだったものの、幸いにも大学が同じだった事で彼女との縁が切れるという展開にはならなかった。

 俺はこれまで以上に本気でバスケに打ち込んだ。そうしてプロになれば、彼女に振り向いてもらえると、彼女に自分の想いを伝えるだけの自信がつくと信じて。


 だが、俺にスカウトの話は来なかった。

 成績や経歴も決して輝かしいものとはいえず、プロへの道は立たれたも同然。

 いや、そのんなもの初めからなかったのかもしれない。


『大丈夫。お前なら、絶対プロになれるって』


 落ち込んでいる時、トモヤから無邪気な顔で言われたその言葉にどう返事を返せばいいか分からなかった。

 もし仮にそうだとするのなら、一体いつまで待てばいい?


 もう4年の10月だ、来年には卒業して働かなければならない年になった。

 子どもの頃からこれだけやって来て、これだけ頑張って、それでも無理だったのにあとどれだけ足掻き続けろというのだろう。


 俺には、トモヤの応援が慰めにしか聞こえなかった。


『トモヤには言ったんだけど、その、この森の「鬼伝説」。一応皆にも説明しとくね。何でもここには洞窟があって、そこは昔、悪鬼が根城にしていた場所だとか。で、今もそこには鬼が隠れていて、迷い込んだ人間を食い殺す……っていう伝説なんだけど』


 一見完璧に見えるトモヤにも、唯一弱点が存在した。

 彼は幽霊やお化けの類が全くダメなのだ。


 バスケ部の部員で卒業旅行中のこのタイミングを使って、俺は季節外れの肝試しを企画し、トモヤの情けない姿を皆に見せてやるつもりだった。

 俺と2人だけならば断わっただろうが、皆がいる手前、トモヤも断り辛いと感じたのだろう。

 彼に反対されるという事はなかった。


 人数はそこまで多くなかったので、俺達はくじ引きで2人1組に分かれた。

 部員の中にはマナミの姿もあり、個人的には彼女と一緒にルートを回りたかったのだが。


 しかし、こんな時でも腐れ縁が悪さをし、俺とトモヤが組む事になってしまった。


 道筋はこうだ。スタート地点から森を真っ直ぐに歩いて行き、洞窟を目指す。

 流石に洞窟の中まで入るのは危険なので、その近くまで来たらUターン。

 スタート地点へ戻る。


 至ってシンプルだが、トモヤを怖がらせるのには十分過ぎるのを俺は知っていた。


 満月の下、ひたすらに続く一本道を歩いて行くと開けた場所が見えて来る。

 その頃には巨大な岩壁が姿を現し始め、更に近付けば、人一人が容易に出入り可能な程の洞窟の入り口も顔を見せた。


『こ、ここが噂の鬼の根城……ふ、雰囲気あるな……』


 この洞穴ほらあなの先にある暗闇には、ある鬼の言い伝えが眠っていた。

 人食い鬼の伝説だ。


 その昔、森の奥に鬼が住んでいたのだという。

 けれど、誰も彼も噂をするだけで、食人鬼の姿を目にしたと口にする者はいなかった。

 森へ足を踏み入れた者は、誰一人として帰って来なかったのである。


 伝承を耳にした時、俺は形を掴めない煙のようなその鬼に僅かながら恐怖を抱いた。

 よくある話では、鬼の容姿は詳らかに語られるか、絵によって直接描かれているイメージがあったからだろう。


 もっとも、トモヤはこの場の何とも言えない不気味な雰囲気の方に怯えを感じているようだったが。


『雰囲気だけだよ、トモヤ。鬼は一応、封印されたっていうし。……まぁ、何かの拍子にその封印っていうのが解けて、鬼が解き放たれてなければだけど』


『ば、馬鹿!怖い事言うなよっ。ホントに出たらどうすんだ。……てか、もう折り返し地点なんだから、さっさと帰ろうぜ?な?』


 軽くからかってやると、トモヤは焦った顔で俺にそう言った。

 こんなに取り乱したトモヤを見るのは珍しい。


 彼は朗らかな性格ではあるものの、何に対してもストイックというか、弱音や愚痴を吐かず黙々と打ち込む人間だ。

 徹底している。そんな言い方も出来れば、心の冷え切った機械のように見えると評価する事も出来た。


 ともかく、普段完璧に見えるトモヤの完璧でない言動を目にした事で、劣等感で押し潰されそうだった心がすっと軽くなったのを感じた。

 同時に、若干の罪悪感も芽生えた。


 自分はどうしてこんな馬鹿な真似をしてしまったのだろう。

 嫌がると分かっていて、何故友人にこんな酷い真似をしたのだろう。

 トモヤならばきっと、そうしなかったはずだ


 そう思うと、またあの胸が締め付けられるような感覚が押し寄せて来そうだった。


『そう、だね。もう行こう――ん?』


『ど、どうした?』


『いや、何でもない。帰ろうトモヤ』


 これ以上自分を下げるような行いは止めようと、踵を返した瞬間、俺は背後に誰かの気配を感じ取って後ろを振り向いた。

 けれど、そこには誰もおらず、洞窟の引き込まれるような怪しい暗闇だけが俺を見つめるのみだった。


 よく分からない気持ち悪さに足を引きずられつつも、俺はトモヤとその場を後にした。


 俺は半ば安堵していた。

 今夜の出来事はいずれ、皆の中で、若い頃のほんの少し刺激的な思い出の一つとして刻まれるだろう。

 少なくとも、俺が真実を墓場まで持っていけば、この過ちは誰にも知られずに済む。なかった事にしていられる。


 そう思っていた、帰路について暫くの間は。


『はぁー、良かった……組むのがお前で。皆の前でもそうだけど、マナミの前では特にこんな情けねぇカッコなんて見せられないし』


『え?』


『いやぁ、その、俺ら付き合ってっからさ』


『なっ、え?は?トモヤ、付き合ってるって……』


『悪い、言ってなかったよな。わりと最近の話。部活内で噂になるの嫌だし、皆には黙ってるけど……まぁ、流石に親友には伝えとかなきゃだよな!』


 月明かりが彼の笑顔を照らしていた。

 俺は、はにかむように言うトモヤのその顔から目が離せなかった。


 彼の言葉を理解はした。しかし、心の整理が追い付かなくて頭がどうにかなりそうだったのだ。


 何を言えばいいのだろう。どうこの場を乗り切れというのだろう。

 いつものように本心を飲み込んで、それらしい態度を取る事さえ俺には考え付かなかった。


 マナミが好きだった。

 そのために努力した。

 そして報われなかった。


 けれど、ずっと隣にいたこいつは、目の前でへらへら笑みを浮かべているこの男は、彼女どころか俺の欲しかった全てを手に入れているではないか。




『……親友なんかじゃ、ない』


『え?』


『お前なんか、友達でも何でもない。お前さえいなければ俺は、俺は……』


 ふと口をついて出たのは、トモヤへの積年の恨みだった。

 ポツポツと、最初は静かに。しかし、段々と止められなくなっていく。


『ちょ、落ち着けって!おい――』


『触んな、死ねよッ……死ねよトモヤ!……お前なんか、お前なんかぁぁぁぁあ!』


 殺すつもりはなかった。

 ただ、激しい怒りに我を忘れて、俺は思い切りトモヤを突き飛ばしてしまった。


 トモヤはその勢いによって転倒し、近くにあった木の幹に思い切り頭をぶつけ、そして――ピクリとも動かなくなった。


『えっ、トモヤ?……お、おい、しっかりしろよ。おい、おいって――』


 慌ててトモヤに近寄って肩を揺すりつつ、そこまで言って、俺は言葉を失った。


 トモヤの薄く開かれた無機質な瞳が俺を見つめていた。

 後頭部からは黒い液体が流れ出ており、それが木の幹や地面に少しづつ広がって行っている最中であった。


 彼は既に、息をしていなかった。


『そ、そんな……うそだ、嘘だ!』


 俺は怖くなって、その場から逃げ出してしまった。

 いや、今この瞬間においても、俺は無様に己の罪から逃げ続けている。


 月は未だ、俺を冷たい瞳で睨み付けていた。


 既に整備された道から外れ、どこを走っているのかなど分からなかった。

 ただ、緩やかな坂を下っている事から、肝試しのスタート地点の方面に向かっているのは確かだった。


「くそ、クソ、クソッ」


 悪態が口をいて出る。


 ちょっとした手違いが全てを狂わせた。

 何もかも上手く気がしない。


 夜の闇に紛れて逃走を続けようとする俺の足にも、そのどうしようもない無力感がつるのように巻き付いて来た。

 仕舞いに、俺は躓いて転んだ。


 胸や膝がじくじくと痛んで呻くが、その時、唐突に近くの地面を青白い光が照らしたのが見えた。

 慌てて見上げると強い光を正面に突き付けられ、俺は眩しそうに目を細めた。


「ん?どうした?」


「あぁ、いや、何かいた気がしたからさ」


「あっ。もしかして、鬼じゃね?」


「んな訳ないだろ、肝試しなんかで出るかっつーの。ほら、馬鹿言ってないで行くぞ」


「へーい」


 あの洞窟に向かい始めた後続の組が、こちらに懐中電灯を向けたのだ。

 しかし、俺の存在に気付いた様子はなく、止めていた歩みを進め始めた。


 俺は不味いと思った。


 あそこにはトモヤの死体を放置したままだ。

 遺体は直ぐに彼らによって発見されるだろう。

 そして、真っ先に疑われるのは同行者だった俺に違いない。


「ま、待ってくれ!俺だッ」


 俺はその2人の方へ無様に駆け寄り、彼らを引き留めた。


「お、鬼だ。鬼が出たんだ!逃げてッ、洞窟に行っちゃダメだ」


 咄嗟に鬼の伝説を口実に、2人を引き返すように促すが――


「何だよ、ビックリした。いいよ、肝試しのサプライズ的な奴とか……」


「おい、付き合ってやれよ。せっかく雰囲気出そうとしてくれてんのに、かわいそーじゃんか」


 必死の訴えも空しく、盛り上げるための演出だと思われるだけ。


 俺は途轍もない焦燥感に駆られた。


 手を伸ばしても、去って行く2人の背中は止まってくれそうになかった。

 それどころか、必要以上の強引さでもって彼らを引き戻そうとすれば、今度はそれを不審に思われてしまう危うさすらあった。


 俺は道の端に見つけた大ぶりの石を両手で掴んだ。

 自分でも、息遣いが徐々に荒くなり、心臓の鼓動も加速を始めているのが分かった。

 それは躊躇いによるものか、焦りと興奮によるものか。


 いずれにしても、俺は止まれなかった。


 バスケットボールより遥かに重い石を手に、俺は2人の背後へ気付かれないよう迫った。

 そうしてそれを夜空へ高々と持ち上げ、次の瞬間、思い切り振り下ろした。


「っぁあッ!」


 血飛沫が顔に付着した。

 それにも構わず次の標的を狙う。


「死ねッ、死ねッ、死ね!し、ねぇ!」


 俺は倒れた2人の頭を石で殴った。

 1人ずつ、死ぬまで。


 何度も、何度も、必要以上の力で容赦なく。


「はァ……はァ……はァ……」


 気が付けば頭の潰れた死体が2つ、足元で力なく横たわっていた。

 興奮が冷めないまま、俺は必死に冷静を装った。


 血に塗れたこの姿で鬼が出たと訴えれば、今度は皆信じてくれるはずだ。


 俺は覚束ない足取りを演出しながら、他の部員の影を探した。

 暫く歩くと、もう1組の部員の姿を見つけた。


「みん、皆――」


「うわ、うわぁぁぁぁぁあ」

「やばいやばい逃げろ!マジかよッ」


 だが、2人とも俺を見た途端逃げ出した。

 俺は何が何だか分からないまま、彼らを追いかけた。


「ま、待ってくれ!待って――くそッ。おい、待てェ!」


 苛立ちの最中、俺は今まで上げた事のない程に大きく荒々しい声を放った。


 何故逃げる?何を間違った?

 と、そこまで考えて己の間違いに気付いた。


 俺は先の2人を殺した石を片手に持ったまま、ここまで歩いて来てしまったのだ。

 あのドス黒い血に塗れた大ぶりの石を、その姿のまま。


 やってしまった。

 となれば、奴らは俺が何をしたのか勘付いたのか?


「……クソ、クソッ、殺してやる。殺してやる!」


 そうして、今度こそ上手く騙してやるのだ。


「ひぃ、ま、待って――」


「ッぁぁぁあ!」


 2人に追い付くと、奴らをさっきと同じように撲殺してやった。

 だが、俺は戻り過ぎていたのだ。


 更にもう1組の部員が騒ぎを聞きつけ、こちらにやって来てしまった。


 彼らが目撃したのは、俺が入念に仲間だった連中の頭を石で潰している姿だった。

 俺は奴らを睨み付けるように見据えると、石を握る手の力を強め、立ち上がった。


「あぁぁッ、クソが、クソがァ!死ね、死ね、死ねぇぇェエッ。あぁぁぁぁぁァァア!」


 だが、連中の息の根を止めようと何の解決にもならなかった。


 ここは肝試しのスタート地点に近い場所にある。奴らの背を追い掛け回し、死体に変えている内に他の部員達に見つかってしまう。


 焦り、苛立ち。


 俺はもうなりふり構わず、目につく人間を殺しに回った。

 いつしか石は砕け、凶器は拳へとすり替わった。


 大きく掲げられた腕は、馬乗りになった相手の顔面に、体重を乗せた渾身の力で振り落とされる。

 幾度も、例によって、ソイツが指一本動かなくなるまで。


「鬼がッ、鬼が悪いんだ!鬼がやった!俺じゃ、俺じゃないッ。鬼ガァァァァァァァア!」


 叫んだ、訴えた。

 この言葉が誰かに伝わり、信じてくれる事を願って。


 しかし、途中で気付く。


「……ぁ?――ッ」


 俺は今の今まで腹の上に跨り、拳を叩きつけていた相手の存在に意識を向けた瞬間、思わず言葉を失ってしまった。


 そう、それはかつて俺が恋心を抱いていた相手だった。


 マナミ。彼女は完全に顔が潰れ、血塗れの状態で息を引き取っていた。

 長い黒髪と、女性らしいその体つきだけから、それを彼女と認識する事が出来た。


「ぁ、あぁ……そんな。こんな、こんなはずじゃ……」


 周りを見てみると、死体は他にも横たわっていた。


 数えるまでもない。

 結局、全員殺してしまったのだ。


 震える声で、辿々たどたどしい自己弁護の言葉を呟く。

 だが、その声はどこか違和感があった。

 まるで俺の声でないみたいに野太く、荒々しい獣のような声。

 ふと、既に大量の血で染まっているであろう自分の両手に視線を落とした。



「――ッ!?」


 月明かりに照らされた俺の腕は、異様に太く、いわおのようにごつごつとしていた。

 掌から伸びる指には鋭い爪。


 マナミの頭部から広がる血溜まりを覗き込み、そこに映る自らの姿を見た。


「……あぁ、あぁ!あぁぁぁぁあ!」


 いつの間にか、


 いや、鬼に体を乗っ取られたのか。


 今となっては、もう分からない事だ。


 何故なら、俺は既に引き戻せない段階にまで来てしまっていたのだから。


「ハ、ハハ……」


 友を殺し、仲間を殺し、ついには恋心を抱いていた相手すらこの手にかけてしまった。

 今さら、どうやって戻れというのだろう。


 もう身も心も、俺は鬼になってしまっているというのに。


「ハハハ……」


 次第に視界が闇に呑まれていく。

 意識も、音や臭いさえも。


「……フフ、フフフ、アハハハハハハハハハハ!アーッハハハハハハハ!」


 だというのに、俺は笑っていた。

 口から洩れ出たそれは、徐々に、徐々に、抑える事を放棄したように大きくなって行く。


 それは己の中の狂気が満たされた悦びに聞こえた。


 あるいは、自分をあざけっているようでもあった。

 嫉妬に囚われ、愚かな行動に走り続け、こんな醜い存在に成り下がった自分を。


 もしかすると、トモヤを妬む気持ちが僅かでも暴走し始めたあの時既に、俺は過ちを犯してしまっていたのかもしれない。

 少しでも誰かに相談していれば、塞ぎ込まずにいられれば、あの気持ちに正しく向き合えてさえいれば、こんな惨劇は起こらなかったのかもしれない。


 俺は自らの行いを悔いた。

 今更、そんな行為に意味はないというのに。





 閉ざされていく世界の中、最後まで聞こえ続けたのは気味の悪い鬼の高笑いだけであった――。

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