第8話 ニート、奈落の三層に挑む
【奈落 第一層】
クロスを含め、今回のパーティにはもはや一層は通過点に過ぎず、モンスター達も本能から勝てないと理解して襲ってこない。それどころか道を開け始める。熟練の冒険者ともなると進路の邪魔になるモンスターを枝を払うように殺していく。モンスターが道を開けるより歩きながら武器を一振りする方が早いのだろう。稀にアイテムが落ちているのはそのためである。
それでも死者数が1番多いのは一層である。その理由は、奈落を知らない駆け出しの冒険者や観光者が少しだけのつもりでロクな準備もせずに安易に入るからである。
モンスターはもちろん、駆け出しを狙った族にも殺されるのだ。事実、クロスも入り口付近でジャンが族と戦闘している場面に遭遇しており、その場面に遭遇しなければより奥に進み、モンスターの餌食になっていた可能性もある。
【奈落 第二層】
ジャンのギルド証のレベルが上がる。二層からはモンスター達が襲ってくる。それはつまり、モンスターからすれば勝てると思われているからである。さっそく、目の前に死人剣士が3体現れた。いきなり切り掛かる死人剣士の攻撃をガイアが防ぐ。
「効かんな…おい、今だ」
「任せろ、おらぁあ!」
ジャンは鉄の斧で頭から真っ二つにした。日々の現場作業で鍛えられた肉体と斧の相性は抜群だ。
「ウィンド」
エリスは攻撃魔法を唱える。風の刃が残りの2体にダメージを与え、怯ませた。この世界には魔法が存在し、限られた才能を持つものだけが鍛錬をする事で使えるようになる。魔法を使える人間の割合は約20人に1人と言われている。
「行くぜ!」
怯んだ2体をクロスが横薙ぎでまとめて一閃した。このパーティでの初戦闘の割には上手く連携が取れていた。ドロップした死人剣士の遺骨をエリスが拾い、先へと進む。
【奈落 第三層】
今度はジャンだけではなく、クロスのギルド証のレベルも上がる。景色や雰囲気は変わらないが、初めて二層に来た時に洗礼を受けたクロスは油断しない。それより気になることがあった。
「エリス、こんな遺跡みたいなところに草なんて生えているのか?」
「いや、生えているわけじゃない。このエリアの冬虫夏草というモンスターからドロップする。もちろん地上に存在する者とは違い、人間の膝の高さほどの大きさを持つモンスターだ」
なるほど、とクロスは納得した。散策をしていると宝箱を見つける。中には鉄鉱石が入っていた。探索の途中で手に入れたものは話し合って分配する。しかし即席で作られたパーティの中には、このアイテムを巡って争いに発展することもある。深層には人を殺してまで欲しくなるほどのレアアイテムが手に入ることがあるのだ。
今回はエリスの手伝いという形で奈落にきているため、魔力草以外のアイテムは3人で分けることになっている。エリスが管理し、分配は無事に帰ってから行う予定だ。
やがてモンスターとエンカウントする、二層にもいた死人剣士と冬虫夏草が2匹ずつだ。同じモンスターでも二層にいる者より強い。
クロスが死人剣士に先制で切り掛かるが一発では倒れない、すかさずガイアが追撃をする。しかしそれでも倒せない。死人剣士のもう一体がクロスを、2体の冬虫夏草がガイアを攻撃しようとする。
「くらえ!」
ジャンが飛びかかる死人剣士を斧で叩き切る。2人の攻撃でも倒せなかった死人剣士は一撃で倒れ、消滅した。鉄製の武器の攻撃力は一味違う。
「ウィンド」
エリスは魔法で冬虫夏草2匹をまとめて攻撃する。相性がいいのか、風の刃に切り裂かれた2匹は同時に消滅して1つの草をドロップした。
残る死人剣士の攻撃をガイアが盾で受け、クロスがトドメを刺した。ジャンがドロップした草を拾う。
「この草が魔力草か?」
「そうよ、すぐに手に入ってラッキーだったわ。さあ、帰りましょう!」
4人は二層に戻ろうとするが、目の前に強そうなモンスターが現れる。ガイアが舌打ちをして呟いた。
「ついてねぇな、あれはこのフロアのレアモンスターじゃねぇか?」
「そうね…でも階段は奴の向こう、やるしかないわね」
クロスは書紀から知識を得ている、各層にはレアモンスターが存在し、ごく稀に出現することがあると。その強さは次の層からさらに次の層のモンスターに匹敵するが、倒せば必ずレアアイテムをドロップする。
兜と鎧を装備し、剣と大楯を持つアンデッド。三層のレアモンスター、死人騎士との戦闘が始まる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます