餌やりの時間
ふっと意識が浮かび上がり自分が寝ていたことに気づく。…あのまま寝ちゃってたのか。
まだ少し眠たくて起きたくないと瞼が主張してきているせいで中々目を開けられない。
やっとの思いで目を開けると思わず声を出しそうになった。
「お、起きてたんですね」
「さっき起きたよ」
寝顔ガッツリ見られてた…!?恥ずかしいんですけど。
あぁ、それよりも
「体調、どんな感じですか?」
「少しは、マシになったかな。頭痛と吐き気と寒気と倦怠感しか無いよ」
いや、重症なんですけど。全然良くなってませんけど?
これはしばらく安静だなぁ。
「ご飯作るので、待っててくださいね」
「作ってくれるの…?ありがと」
素直でよろしい。ずっとこんな感じなら良いのになぁ。
さてさて、お粥でも作ろうかなぁ。梅干しとかあったかな…
さっさと手際よく自分の分と先輩の分のご飯を作っていく。
私は…うどんでいいかな。素うどんだけど。
サクッと作って先輩のところに持っていく。
「先輩?食べられますか?」
「何とか…たぶん」
まあ、食べてもらわないと良くならないから困るんですけどねぇ
ゆっくりとした動作で起き上がる先輩を横目に自分の分をさっさと食べてしまう。
先輩が鍋に手をつけようとしていたのでこちら側に寄せる。
「……いじめ?」
「いやいや、違いますよ。食べさせてあげますから楽な姿勢になっててくださいね」
スプーンで気持ち少なめに掬い、ふーふーと息をふきかけて冷ましてから先輩の口元に運ぶ。
「先輩、あ〜ん」
「ん」
控えめに口を開けて私の持つスプーンをパクッと食べる姿はどこか幼さを感じさせてくれ、より一層可愛く見えた。
これ、餌やりみたいで楽しい。
お粥が無くなるまで先輩の餌やりを堪能した私は先輩を寝かしつけて洗い物をする。
可愛かったなぁ。大人しい時の先輩ってなんでこんなに可愛いんだろうか…顔?顔なのか?もしくはギャップ。
ギャップは私の設定だったんだけどなぁ。いつの間にか先輩に…?
恐らく私だけが知る先輩の弱い所や、態度。
どれも守ってあげたくなるような感じで、とにかく、可愛かった。
さすがにこんなことを考えるのは失礼だけどずっとあのままでいい思ってしまった。
普段もあのくらい、とは言わないけどもう少し大人しくなってくれてもいいと思う。
そう、私くらい。
そんな淡い希望を抱きつつ、先輩の寝ているベットに腰掛ける。
サラサラとした髪に、あどけない寝顔。
私は、起きないように優しく頭を撫でた。
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・ワンポイント・
風邪回これにておしまい
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