28 鷹城 ――滝岡と秀一――



 滝岡が病室に呼ばれて、鷹城に向き合って怒る。

「聴取の内容なんて、おれが院長から聞いてる訳ないだろう。第一、何で警察でもない院長が、そういうことを知ってるんだ?おかしいだろう」

むっ、としてこどものように鷹城が腕組みして横を向く。

「わかってますよ、けど、どうして関が僕に危害を加えるなんてことになるんです?橿原さんは電話に出ないし!」

滝岡が鷹城を眇めた目でみる。

「おまえな。それで、文句をいって捌け口にする為におれを呼びつけたのか」

「当り前でしょ?看護師さん達や他の先生方を困らせる訳にもいかないし」

「…――――おまえな、おれも忙しいんだぞ?いまは手術も無いからいいが、…―――秀一、聞いてるか?」

「大体、本当にどうしてそんなばかなことで、あのばかが容疑者として取り調べを受けるなんてことになるんです?」

滝岡があきれた顔で隣に座りながらくちにする。

「血圧上がるぞ、…―――。本人の主張はおまえも聞いていたろう」

「そうですけど、って、何してるんですか」

訊ねる鷹城に構わず、滝岡がサイドテーブルに持ってきたトレイを置いて、並んでいる食事を前に手をあわせる。

「いただきます。…何をって、休憩だ。おまえのぐちを聞いてる時間を活用して食事をする」

「…――――食事制限受けてる患者の傍でそれやります?」

「丁度良いだろう。水分制限は守ってるだろうな?うん、うまい」

実にうまそうに食事をくちにしはじめる滝岡に。

「…にいさん」

「ああ、そうだ。秀一、おまえ、また病院を抜けだそうとは考えていないだろうな?病院のスタッフには協力しないよう依頼してあるから、無理はするなよ?」

「――――…」

「うまいな、うん。うちの食堂のメシは最高だ。ほら、いいだろう、煮昆布」

箸でつまんでみせる滝岡に、鷹城がむっ、と顔をしかめてみせるのに。

「おまえ、顔が面白いぞ?」

「―――…にいさん!」

滝岡が声を立てて笑うのに、鷹城が思わずというように抗議して。





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