19 捜査 ――資料渉猟――




「しかし、やっぱり、ほら、考えてみるとまずくないか?いま、俺達は、事故で終わらせる為にもう、だから、上も手仕舞いに仕掛けてた事件をその、――部長は勿論、知らないだろ?課長だってまだ、―――それに、だから、いま扱ってる事件に関してなんていうか、」

「黙って調べてください、斉藤先輩、手が止まってますよ」

「…あのな?山下、――前から思うけど、おまえ、一応、おれ先輩なんだけど」

「知ってます」

情けない顔でいう斉藤に視線を向けず山下が云う。

「おまえなー、…しっかし、よし、これ読んだ」

読み終わった資料を、積み上がる山に置いて、斉藤が腕を組んで上に伸ばす。その隣で、淡々とプリントアウトした資料を読みながら山下が云う。

「現在の事件の始末に関してですが、その件の責任者は課長ですから、最終的には全部、課長に背負ってもらいましょう」

端正というか、婦警達には童顔でかわいい!とかいわれて騒がれている山下の整った顔をしみじみ斉藤が眺める。

「…――おまえって、鬼畜」

「はい」

あっさり流す山下に斉藤が目を閉じて俯いて、ついでに机に突っ伏す。

「いーけどな…、関は関だしな、…鷹城さんは暴走してるし、鷹城さんが暴走してちゃ、関止めてくれる人がいないし、橿原先生は――…―――」

ぐちってから、斉藤が無言で資料を繰る関をちらとみて。

 大きく手をあげて、あきれた顔でいう。

「――こーしてるのもあきたんで、当時の話を訊きに所轄へいってきます」

小学生よろしく、手を挙げたまま斉藤が橿原をみていうのに。

「お願いします」

短くいう橿原に、ほら、と斉藤が山下を呼ぶ。

 読み込んでいた資料から顔をあげて、山下が軽く眉を寄せる。

「僕もですか?」

「一応、二人行動が基本だろ?基本だけど大事だぞ?まあ、―――もう基本が何か解らない状態な気がするけどな」

「わかりました」

淡々と多少あきれた視線で山下が斉藤をみて立ち上がり、資料を揃える。

「では、橿原さん。僕達は、資料の裏を取りに回りますので」

「よろしくお願いします。ご苦労様ですね」

おっとりという橿原に、斉藤が何か云い掛けて、山下にスーツの袖をひっぱられて、あわてて出ていく。






斉藤と山下、二人と擦れ違いになり、資料の山を台車に積んで押してきた西が第一資料室の入り口で残っている関を見て眉をしかめて橿原を見る。

無言で橿原が指示した通りに、気付かずに資料を読み込んでいる関の前に、第二資料室から運んで来た資料の山を積み上げていく。

「関さん、これもお願いします」

「…―――」

無言で頷く関をみて、橿原が山下の開いていった資料検索画面に向き合う。







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