滅亡/観測

「さぁ、このたびも滅亡の頃になりました。皆さん準備はよろしいですか」

 古ぼけた白い拡声器で以って高らかに微笑むあの子がいる。

「わたくしは終焉の使者。皆さんに世界の終わりを告げる者です」

 そのようにはとても見えない。セーラー服とボブヘアーの普遍なる少女。

「まだ生が恋しいですか? でも残念、わたくしが来たからには終わりです」

 わんわんと蝉の鳴き声を背にしたあの子の澄んだ声が響いた。

「だいじょうぶ、生きるチャンスはまた来ます。せいぜい生まれ変わってください」

 煌々と空が燃えては暗雲が渦巻きいよいよ終焉らしい。

「……あぁそろそろ、時刻を迎えるようですね。それでは皆さんまたいつか! アデュー!」

 高々と手を振るあの子の白さだけ妙に視界に焼きついた、夏。


 僕はまたいつかの世界の終焉であの子を観測するのであろう。

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