#題詠100_2024

001:言

言うことはそれだけですか。他にこう、好きだったとかないわけですか


002:置

百年も放置されたら良い加減きみを嫌いになれても良いのに


003:果

そらの果てを見つけたならばそのときは互いの鼓動を止めても良いよ


004:吸

きみが吸うキャメルの煙はいつも白くちびるが燻るのが好きだった


005:大切

大切にしたいよしたいしたいけど手首がここにあるのがいけない


006:差

その差異が正当なそれと分かるまで何年かけても良いが分かれよ


007:拭

目の下のラメごと涙を拭ったらきみにさよならを言うしかない


008:すっかり

もうすっかりわたしたちってお互いがいないと生きていけないもんね


009:可

この想いに触れる可ず さもなくば破裂等々辞さない構え


010:携

いつもきみの不携帯電話が鳴っては知らない女の律儀な留守電


011:記

きみが書く日記の中を探しても探してもわたしの名前が無い


012:ショック

ショックだなんてよく言えるよねわたしのことハナからなにも知らないのにね


013:屈

屈してるきみからの恋の圧力があまりに強く眩しかったの


014:外国

外国という国は無い三年前旅立ったきみは知らなかったの


015:見

外見から分かることなんてなにも無いきみがわたしを好きかどうかも


016:叡

人類の叡智だかなんだか知らないが押し付けるのはやめにしないか


017:いとこ

わたしたちいとこ共々社会的にポシャってますが感想はどう?


018:窮

窮屈な思いをしたねもうそろそろ空に開放される頃だよ


019:高

高いところが怖いと言ってしがみつく東京タワーのいちばん上で


020:夢中

無我夢中の顔つきをしているきみの頬を叩けど醒めてくれない


021:腰

ちょっと話の腰を折るようで悪いけど今わたしのこと馬鹿って言った?


022:シェア

心にはきみときみときみときみとがシェアハウスしてるだけなんだよな


023:曳

きみに向けて曳光弾をぶっ放し軌跡を急いでスケッチさせる


024:裏側

さて月に裏側は存在するのか? きみはわたしを愛しているか?


025:散

散歩中しばしばすれ違うきみとはごくごく稀に目が合う気がする


026:頁

頁数がかさめばかさむほど良いよ角で相手をぶん殴るには


027:おでん

少しだけ寒さが増した秋口におでんが売れるとかって話


028:辞

辞めてやれそんな仕事も恋愛もほんとはきみに必要無いもの


029:金曜

終電ならもう終わったよもう朝までここで飲み明かすしかないよ


030:丈

風に揺れるスカート丈が眩しくて不意に視線を逸らしてしまう


031:けじめ

けじめとして小指はいらないただ一度優しく口づけされてみたいの


032:織

ひらがなも上手く織れずに紙上には長く長くのみみずが這って


033:制

制服のまま待っていてくれないかこれがエゴだと分かっていても


034:感想

きみに告げる平々凡々な感想に相槌を打ってほしいそれでも


035:台

断頭台が高くそびえる広場にてきみが君臨するのを見てる


036:拙

もうやめよう稚拙な愛撫には飽きたもっと哀しいことをしようよ


037:ゴジラ

明け方はゴジラに見下ろされながらあたたかいうどんを啜っている


038:点

顔面に点数をつけてくる奴が絶句するほど恋をさせたい


039:セブン

セブンイレブンをブンブンと略す後輩がこの春無事に社会人になる


040:罪

「この果実、罪みたいな味がするね。一緒にすべてを背負ってみない?」


041:田畑

答案を田畑で燃やす遠方で祖父母の怒鳴る声がしている


042:耐

酸っぱさにいつまで耐えていれば良い? 揚げ物を食べる理由はあれど


043:虫

秋服にひっつく虫を殺せない一生残ってしまう気がして


044:やきもち

「正月から余計な餅を焼くんじゃない」「ならその女は一体誰よ」


045:桁

桁違いの人類の一部を見ては絶句したとて無為なことだし


046:翻訳

暴れ散らかすきみのことばを翻訳してなるべく笑って宥めてしまう


047:接

接待をひとりで受ける愛情の方向なんて八方で美し


048:紐

アカウントを紐づけている死ぬときにすべてまとめて消せるようにね


049:コロナ

またしても陰謀論を語る医者にはぁとあいづちだけ打っている


050:倍

倍にして返してくれよ三万もずっと与えてきた愛情も


051:齢

年齢を忘却しつつあることをそもそもいつも忘れているし


052:圧力

この冬こそ帰って来いと電話中に角煮ができたのでブチ切った


053:柄

柄シャツを延々と集めていようわたしの輪郭が見えないよう


054:朧

朧月じっと見つめて笑うのはきみとの帰り道だからだよ


055:データ

データによるときみがわたしを好くことは無いって話だったんだけど……


056:紋

紋黄蝶を指先にひらり携えて結婚するなら今だと思う


057:抑

性欲を抑えきれないきみだから可愛いけれどマジでカスだな


058:反対

わたしには暴力反対とか言って被害者面しかしないきみだね


059:稿

原稿を遺書にするなよわたしたち好き合ってたって世界にバレる


060:ユーロ

怪獣が出てこない映画きみとしかきっと来ないよユーロスペース


061:老

老いる親を世話する親を眺めてはいつまでわたしが分かるのだろう


062:嘘つき

女の子はみんな嘘つきの素質があるんだよってベッドの中で


063:写

出かけた際に写ルンですで切り取ったきみの寝顔が永遠となる


064:素敵

その服が素敵だねって笑うときなにを思い出しているか言え


065:家

家族だからなんだって言うの放っといてほしいの(ほんとはたすけてほしい)


066:しかし

しかしきみ犯人とは違う割には怯えたように笑うものだね?


067:許

許可が無いときみに愛を囁けない欲しいときだけわたしを呼んで


068:蓋

蓋が開かないときだけ駆けつけてくれたねいまでもわたしひとりじゃできない


069:ポテト

きみもじきにマックのポテトのマジックにかかるよ塩しか使ってないよ


070:乱

忘れてく姿を写生したままにほんとはきみを抱き締めたくて


071:材料

材料がまだ足りなくてきみのこと愛しているか判断できない


072:没

きみという湖に少しずつわたし沈没しては水面を見てる


073:提

きみのことどれだけ分かるかってテスト? 確かに白紙で提出したよ


074:うかつ

しまったなとうかつに笑うきみだから好きになってしまったんだろう


075:埒

わたしたち真面目に不埒に陥って真面目に不埒を解消したね


076:第

なんだその奇妙な踊り きみがよく言うラジオ体操三百?


077:オルガン

確実にパイプオルガンを弾いたのきみをこっそり祝いたかった


078:杯

一杯のワインですべてを狂わせて滴り落ちる赤は共犯


079:遺

数少ない遺品のうちのほとんどがわたしとの写真だったきみだから


080:なかば

もう良いよなかば同罪なもんだし地獄に果てまで一緒にいよう


081:蓮

こんな夜に上野の池を見つめてるきみとわたしはもう付き合わない


082:統一

精神を統一するとか言うけれどほんとに最初はひとつだったの?


083:楼

熱しやすくまた冷めやすいきみだから一緒にならない砂上の楼閣


084:脱

きみという牢獄からの脱走がどんなにどんなに苦しかったか


085:ブレーキ

会話にはブレーキ役が必要でいつもきみに担わせてごめんね


086:冥

ならせめて冥土の土産に教えてよきみはわたしを愛しているの?


087:華やか

華やかに愛を誓えよ花束のふたつやみっつ隠しておけよ


088:候

気候ならとっても良いよきみとしか散歩をしないと気づいたからね


089:亀

厳密には亀甲縛りでないやつをきみの身体に施している


090:苗

恋心の苗を与えられ植えたけどアフターサポートが無くて枯れた


091:喪

喪失を悔やんでいてよもう一生きみを愛してなんかやらない


092:休日

きみとなら積極的な休日を過ごしても良いなんて思える


093:蜜

知らないよ他人の不幸の味なんてきみは舐めたことがあるのか?


094:ニット

誕生日に手編みのニットをもらってはきみと別れたあとも着ている


095:祈

祈ることをこっそりしてる祈ることくらいがせいぜいできることだし


096:献

献血に行くには足りない体重が女の子であるには多すぎる


097:たくさん

たくさんは望んでいないつもりだよ一度だけで良い名前を呼んで


098:格

品格があるかじろじろ見ることがいちばん品格の無い行為です


099:注

ダマになったココアにお湯を注ぐとき現実もこうなら良いと思う


100:思

思うとは当然のこと思うだけに留めることはうつくしいこと


≪寄り道コース≫

101:倫敦

倫敦の恋人たちは傘を持たず寄り添っているただ溶けていく


102:巴里

巴里の中で恋人たちは豊満に愛してたまで囁いている


103:伯林

伯林の恋人たちがつつきあうソーセージだけ綺麗に割れない


104:維納

維納にて恋人たちは歌うよう奏でるように一緒になった


105:北京

北京では恋人たちがつらさについて量だ質だと争っている


106:上海

上海の恋人たちは夜景ごと指輪にこめて渡し合ってる


107:香港

香港の恋人たちはお互いの香りが紅茶混じりと気づく


108:紐育

紐育の恋人たちは手を広げ愛だこいだと振る舞っている


109:桑港

桑港の恋人たちはやっと終わる旅の果てだと笑い合ってる


110:聖林

ハリウッドの恋人たちはこれもまた映画のようだと喜んでいる

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

短歌まとめ 天鵞絨リィン @L_Belord

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ