イシスルビーの守護者メルネイト
エジプトから来た女
エジプト、それは様々な神秘が集う国。今日のクィーンズ・ナイトはこのエジプトにあるとある宝石の守護者の話をすることにしよう。
◆
「はっはー!!俺たちボトルネック盗賊団にかかればこんな遺跡、朝飯前だぜぇ!!」
「流石ボス!!イシス遺跡のトラップをこうもあっさりと解くなんて!!」
「お前たち!!イシス遺跡の秘宝【イシスルビー】は目の前だぜぇ!!アレを手に入れたら俺たちは大金持ちだぜぇ!!」
「イエーイ!!ボスサイコー!!」
「ボスかっこいいー!!」
ここはエジプトのイシス遺跡、古代の遺跡の盗掘を専門とした盗賊団【ボトルネック盗賊団】はイシス遺跡の最深部までたどり着いていた。
「さぁ、このイシス遺跡の秘宝【イシスルビー】俺たちの前にその姿を見せろ!!」
ボスがそう叫ぶと、イシス遺跡の最深部にある巨大な岩が二つに割れ、そこには大きな宝箱が現れる。
「イシスルビーだぁ!!」
「やったー!!」
盗賊団が宝箱を開けようと手をかけるとしたその時である。宝箱に手をかけていた盗賊団のメンバーが突如として倒れたのだ。
「「んべらぁぁぁぁぁ!!」」
「な……なんだ!!どうしたお前らぁ!!」
突然の事態に動揺するボス。そんな盗賊団の前に一つの声がこだました。
「我らの一族の秘宝を狙う愚か者どもよ、私が天誅を下そう」
「誰だ!!」
ボスが声のする方を向くと、そこには一人の女性が立っていた。女性は黒髪のショートカットにエキゾチックな印象を抱かせる褐色、頭に金色の装飾品をつけ、その衣装は白と金を基調とした大胆なものであった。
「くっ!!こんな女に俺の部下が……いや、あれはまぐれに違いない!!お前たち!!あの女を倒せぇ!!」
「「「「「おおおおおお!!」」」」
ボスの指示の元、盗賊団は武器を持ち女に襲い掛かる。しかし、女は盗賊団の動きをあざ笑うかのように軽々と躱していき、盗賊団の1人に強烈な肘鉄を食らわせる。
「ぐふぅ!!」
その後はもう一方的な戦いであった。盗賊団は1人、また1人と女が繰り出す格闘術に倒れていく。最終的に残ったのはボス1人となった。
「くぅ……このボトルネック盗賊団のボスたる俺がぁ……ぬおおおおおお!!」
ボスはやぶれかぶれに剣を持ち女に斬りかかる、しかし女はボスの攻撃をいとも簡単に避けると、目にも止まらぬ速さで手刀をボスの首に叩き込んだ。
「ぐはぁ!!」
「ふん、この私に勝てると思ったか。愚か者めが」
女はそう吐き捨てるように言うとイシスルビーの無事を確認する。しかし本来イシスルビーのある場所には何もなかった。
「な……ない!!イシスルビーが……どういうことだ!!」
「これがイシス一族の秘宝【イシスルビー】か」
「誰だお前は!?」
女の前に現れたのは派手な歌舞伎役者の様な衣装を来た男であった。右手には刀、そして左手にはイシスルビーを持っていた。
「私の名はウルトラカブキ、怪盗だ、この秘宝は貰い受ける」
「怪盗だと!?ふざけたことを!!」
女はウルトラカブキに殴りかかるが、ウルトラカブキは身軽にそれを避けると、再び女に話しかける。
「私は名乗ったのだ、貴殿も名乗るのが筋ではないか?」
「……メルネイト、この遺跡の守護者
だ」
「そうか、ならばメルネイトよ、イシスルビーは私が貰い受けよう、ここに置いておくより余程有用な使い道がある」
「ふざけるな!!イシスルビーは我が一族が代々守ってきたものだ!!貴様のような怪盗に渡してたまるか!!」
メルネイトはそう叫ぶとウルトラカブキに飛びかかる。しかし、ウルトラカブキはメルネイトの攻撃をひらりと躱すと、そのままイシスルビーを懐にしまう。
「さらばだメルネイト、また相まみえる日を楽しみにしている」
「なっ!!待て!!」
ウルトラカブキは闇に消えるようにメルネイトの前から姿を消した。
「くっ!!どこだ!!出てこい!!」
メルネイトはウルトラカブキの姿を血眼になって探したが、結局見つかる事は無かった。メルネイトは拳を地面に叩きつけ悔しさをあらわにした。
「怪盗ウルトラカブキ……次会った時は必ずお前の命は無いと思え!!」
メルネイトはそう叫ぶと、ウルトラカブキの後を追う様にイシス遺跡を後にした。
◆
それから1ヶ月後、メルネイトは千歳空港にいた。
「ついにウルトラカブキ、そしてイシスルビーの手がかりを見つけた……奴はこの日本の北海道を拠点にしている」
ウルトラカブキにイシスルビーを盗まれてからメルネイトは情報を集めた、そしてついに彼女はウルトラカブキは北海道を拠点に活動しているということを掴んでいたのだ。
「北海道にくれば奴の手がかりを掴めると思ったが……」
しかしメルネイトには一つ誤算があった、それは北海道にたどり着いた時点で自らが持っている資金を殆ど使い果たしていたのである。
「くっ……これじゃあウルトラカブキを見つけるどころか、数日も食いつなぐこともできない……」
メルネイトは打開策を考えようとしたその時である。メルネイトの前に一人の女性が話しかけてきた。
「もしもし、そこの貴方」
「ん?私か?」
メルネイトが振り返ると、そこには黒いスーツを着た一人の茶髪の女性がいた。
「何か用か?」
「貴方もしかして困っていますか?例えばそう……お金がないとかで」
「そうだが、何故わかった?」
「貴方のことは調べ上げていますから……メルネイトさん?」
「なぜ私の名を!?」
メルネイトは一歩後退り、戦闘態勢をとろうとするが、茶髪の女性はそれを制止した。
「落ち着いてください、私は貴方の敵ではありません、寧ろ資金を提供して差し上げたいと考えているんです」
「なんだと?」
「私はとある方に雇われていましてね、あなたの様な強く美しい女性を私たちは求めているのです」
「……どういうことだ?」
「それを知りたいのでしたら私についてきてください」
女性はそう言うと歩き始めた。メルネイトはついていくが悩んだが、結局ついていくことにした。
◆
「ここは……」
メルネイトが女性に連れられてきた場所は北海道一の歓楽街【ススキノ】であった。
「どうですかメルネイトさん、エジプトにはこの様な場所はないでしょう?」
「……それで?あんた達は私に何をさせようとしてる?」
メルネイトがそう聞くと、女性はクスリと笑いこう答える。
「千歳空港でもいいましたが私たちは強く美しい女性を求めています、そして強いものに求めるものはそう多くはないでしょう」
「……」
しばらく歩いているとどうやら目的の場所についたらしい、女性は歩みを止めてメルネイトにこう言った。
「さぁ、ここです」
「これは……エレベーター?」
メルネイトが見たものは何の変哲もないエレベーターであった。
「ええそうです、メルネイトさん、さぁこのエレベーターの中に……」
女性に言われるがままメルネイトはエレベーターの中に入っていく。女性も一緒に入りエレベーターを操作する。しかしその操作は普通とは違うものであった。
「……何をしてる?そんなにボタンを連打して?」
「このビルは地下2階まだしかないと表向きはなっています、しかし特定の動作をすることによってより地下深くに潜ることが出来るのです」
「どういうことだ?」
「メルネイトさん、ようこそ我らがクィーンズ・ナイトへ、ススキノクィーンに代わり私が歓迎します」
女性がそう言うとエレベーターは地下深くへ潜って行った。
◆
メルネイトが来たのは鉄の壁で舗装された広い空間であった。
「ここは一体なんだ?私に何をやらせようとしている?」
メルネイトは隣にいる女性にそう聞くと女性はクスリと笑いこう答えた。
「ここは地下闘技場クィーンズ・ナイトの試験会場、あなたにはこれから試験を受けてもらいます」
「地下闘技場だと?なるほど、そこで私を闘士として戦わせようとしているわけか」
「うちでは格闘女王と呼んでいますがね、ともかく、クィーンズ・ナイトに勝つことが出来れば賞金が手に入る、ウルトラカブキを追うための資金を欲しているあなたにとっても悪い話ではないでしょう?」
「ふん、確かに悪くはない話だ、わかった、お前の口車に乗ってやる」
メルネイトはそう言うと戦闘態勢をとろうとする。
「なるほど、確かにこれはススキノクィーンが欲するはずです」
「御託はいい、早く試験とやらを始めろ」
「分かりました、試験の内容は単純です、10分以内にこの私を地につかせることです!!」
女性はそういうと、メルネイトに殴りかかった。
「はぁぁ!!」
しかしメルネイトはその攻撃をいとも簡単に避けると、カウンターの蹴りを女性に喰らわせる。
「ぐっ!?やりますね!?」
「不意打ちとは大した試験管だな?だがその程度、私には通用しない」
「その様ですね、私の名は旭ミナミ、次は本気で行かせていただきます!!」
「やれるものならやってみろ」
メルネイトとミナミはお互いに構える、そして同時に駆け出した。
「はぁ!!」
ミナミは渾身の力を込めた突きをメルネイトに放つ、しかしメルネイトはそれをいとも簡単に避けると、ミナミの顔にカウンターの蹴りを食らわせる。
「がはぁ!!」
ミナミは地面に倒れこむ、メルネイトはそんなミナミに追撃を食らわせようとするが、ミナミはそれをギリギリで躱し立ち上がる。
「はぁ……はぁ……強いですね」
「どうした?その程度の実力で試験官を気取るつもりか?」
メルネイトはミナミを挑発するが、彼女はそれを気にせずに再び構える。
「行きますよ!!」
ミナミは再びメルネイトに殴りかかる、しかしメルネイトはそれに動じず、再びカウンターの蹴りを食らわせようとする。しかし、ミナミはメルネイトの蹴りを避けた。
「なにっ!?」
「私だってクィーンズ・ナイトの元格闘女王です、いつまでもやられてばかりではありません!!」
ミナミは回し蹴りをメルネイトの腹に入れようとする、メルネイトはそれをギリギリで避けるが、ミナミはそこに追撃の突きを食らわせる。
「ぐっ!?」
「どうですか!?これが私の実力ですよ!!」
「なるほど……少しはやるようになったな、だが!?」
メルネイトはそういうと呪文を唱える、するとメルネイトの体からオーラがあふれ出し、それがメルネイトの右足に集まっていく。
「これは……!!」
「行くぞ……イリュージョンキック!!」
メルネイトはミナミめがけて飛び蹴りをかました。ミナミはそれをガードしようとするがしかし、蹴りがすり抜けてガードが空ぶる。
「なっ!?すり抜けた!?」
「それは幻だ!!」
「なっ……きゃあ!!」
ミナミの後ろ側からメルネイトの実体が突撃し、ミナミは倒れこむ。
「勝負ありだな」
「なるほど……これがイシスルビーの守護者の力……侮っていたわけではありませんが、まさかここまでとは……」
「そういうわけだ、これで試験は終了だな」
「……そうですね、合格です」
ミナミがそういうと、メルネイトは不思議そうな顔をする。
「なにか納得のいかない点でも?」
「貴様……実力を抑えていたな?なぜだ?」
「私はあくまで試験官、試験官が本気になるわけにはいきませんので」
「そうか、まぁそれで納得しよう、ともかく、私はこれで格闘女王になった、ということなのだな」
「ええ、明日に試合をセッティングしています、そこで勝てば貴方はウルトラカブキを追う為の資金を獲得できるというわけです」
「ふん……まぁ金がないというのは本当だからな……貴様らの口車に乗ってやろう」
「では、明日の試合会場で会いましょう」
ミナミはそう言うと去っていく、そしてメルネイトはそんなミナミを見送ったのだった。
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