謎の主催者ススキノクィーン

シルバーランクマッチ マーガレット・ワシントンVS長谷川ダイヤ

格闘女王と呼ばれる美しき女たちが各々の目的で戦う地下闘技場【クィーンズ・ナイト】、今宵もこの場で新たな戦いが始まろうとしていた。


「ようお前たち!!ブロンズランクの試合は楽しかったか!?次はシルバーランクの格闘女王による闘技が始まるぜ!!目ん玉開いてよぉく見るんだな!!」

 

 クィーンズ・ナイトの名物実況者【DJドグマ】による実況で観客たちは盛り上がる。ブロンズランクの試合を見たばかりの観客たちのテンションは最高潮に達している。


「さて!早速選手紹介と行こうか!!まずはこの地下闘技場に併設されているカジノのディーラーであり【カードアーツ】というトランプを使用した格闘術の使い手でもあるこの女!!【長谷川ダイヤ】だぁ!!」


 DJドグマの紹介とともに選手入場ゲートから1人の美女が闘技場へ現れた。彼女は前髪が斜めに流れた緑色のショートヘアに白と黒を基調とした胸元が大きく開いたディーラー服を身に纏っている。


「さて!!もう1人の格闘女王にも出て来て貰おう!!彼女はアメリカからやって来たカウガール!!クィーンズ・ナイトで得た資金で自らが経営している牧場を復興するためにこの地下闘技場で戦い続ける女!!【マーガレット・ワシントン】だ!!」


 DJドグマの紹介とともにもう1人の美女が入場ゲートから登場する。彼女は鮮やかな金髪のロングヘアを靡かせ、カウボーイハットと露出度の高いビキニめいた服とグローブを身に纏っている。


「マーガレット、あなたはパワーでこのクィーンズ・ナイトを勝ち進んでいるようだけど、この私相手にパワーで勝てるかしら?」


 ダイヤは余裕の表情でマーガレットを挑発する。それに対してマーガレットはニヤリと笑みを浮かべる。


「ふふん、あなたみたいな変化球の使い手を私は力でねじ伏せて来たのよ。私のパワーとあなたのテクニックがぶつかり合ったらどっちが勝つか……この闘技場の観客たち全員に見せつけてあげるわ!!」


 マーガレットは自信満々に自身のパワーを見せつけると宣言した。これには観客たちも大盛り上がりだ。


「うおおおおおお!!やれええええ!!」

「圧倒的パワーを俺たちに見せてくれ!!」

「パワーがなんだ!!そんな物カードアーツで跳ね飛ばしてしまえ!!」

「さて、そろそろ試合の時間だぜ!!2人揃って戦闘態勢を整えるんだ!!」


 DJドグマがそう告げると、マーガレットとダイヤは同時にファイティングポーズを取る。


「行くわよ!!マーガレット・ワシントン!!」

「来なさい長谷川ダイヤ!!」

「試合……開始だ!!」


 DJドグマの合図で、2人は同時に動いた。


「先手は貰うわよ!!カードアーツ!!【ワンペア】発動!!」


 ダイヤは一対になったカードをマーガレットに向けて投げつける。


「ふん!!そんな物私に通用するとでも!?」


 マーガレットはダイヤのカードアーツを真正面から突進して弾き飛ばした。


「ふん!!それくらいじゃあ、あなたを倒せないわよね!!カードアーツ!!【エーストラップ】発動!!」


 ダイヤはエースのカード4枚を自分の前にばら撒くと、そこを起点にしてカードの爆発が連鎖する。


「くっ!!小賢しい真似を!!」


 マーガレットは咄嗟にバックステップして爆発を躱す。ダイヤはそれを見て感心した様子で呟く。


「流石ね……あの勢いのある突進から私のエーストラップを回避するなんて……」

「ふん、あの程度の爆発なんて見えきっているのよ、この私にそんな小細工が通用すると思って?」

「そうね……あなたをただのパワー馬鹿と思っていたのは謝るわ、でもこれはどう!!」


 そう言うとダイヤはカードの1枚を地面に叩きつけた。すると、地面から大量のトランプが飛び出してマーガレットに襲い掛かる。


「カードアーツ【スパイダー】よ!!そのカードたちは蜘蛛のようにあなたの身体を這いずり回るわ!!」

「くっ!!こんなもの、私には通用しないわよ!!」


 マーガレットは襲い掛かるカードたちを思い切り薙ぎ払った。しかし、ダイヤの仕掛けた罠はこの程度ではなかった。


「甘いわね!!そのカードたちは暴れれば暴れるほど絡まっていくのよ!!」

「な、何ですって!?」


 するとどうだろうか?マーガレットの身体にカードがどんどん絡まっていくではないか。


「ぐ、ぐうう!!くっ、くそぉ!!」

 

 マーガレットは必死にもがく。しかし、カードはどんどん絡まっていくばかりだ。そしてついに、マーガレットの両手はカードによって完全に身動きが取れなくなった。


「く、くそぉ……」


 マーガレットは悔しそうに顔を歪める。そんな彼女に向けてダイヤはカードの束を突きつけた。


「どうかしら?私のスパイダーからはそう簡単には逃れられないわよ」

「くっ……このカードを離しなさい!!」

「あら?さっきまでの余裕はどうしたのかしら?」

「くっ!!この、くそぉ!!」

「さて……そろそろトドメと行きましょうか!!」


 そう言うとダイヤはカードの束から一枚カードを引き抜き、そのカードでマーガレットを斬りつける。


「が……あぁ……」

「ふふ……これどけで根を上げてもらっちゃダメよ。まだまだお楽しみはこれからなんだから」


 ダイヤはカードの束をもう一枚引き抜くと、そのカードでマーガレットを斬りつけた。


「あ、あぁ……うぐ……」

「おおーっと!!これは長谷川ダイヤ、マーガレット・ワシントンをカード一枚で翻弄しているー!!」

「はははーっ!!どうかしら!!これがカードアーツよ!!この私にかかればどんな相手もイチコロなのよ!!」

「くっ……この私が……こんな一方的にやられるなんて……」

「ふん、あなたみたいなパワー馬鹿じゃあ、カードアーツを極めた私には勝てないのよ」


 ダイヤはさらにカードをもう一枚引き抜くと、マーガレットに向けて斬撃を繰り出していく、そしてカードの束が後一枚になった時、マーガレットはその場に膝をついていた。


「ぐっ……うぅ……」

「ふぅー、これで最後よ!!カードアーツ【ジョーカー】発動!!」


 ダイヤはトドメとばかりにカードを1枚地面に叩きつけようとする。しかしその時、彼女に対して足払いが仕掛けられる。


「なっ……!?」

「おぉーっと!!ここでマーガレット・ワシントンが長谷川ダイヤに反撃を繰り出すー!!」

「ふん!!手だけじゃなくて足も縛っておくんだったわね!!」

「くっ……」


 ダイヤはマーガレットの足払いを喰らって倒れる。それとともにマーガレットに施されていた両手の封印が解かれた。


「ダイヤ!!そのまま押し切れ!!」

「マーガレット!!パワーでねじ伏せてやれ!!」


 観客たちの声援がマーガレットに向けられる。そんな観客たちに対して、彼女は自信満々な様子で告げる。


「ふふ!!あなたを私の必殺技で倒してやるわ!!」

「強がらないで!!あなたはもう満身創痍のはずよ!!」

「ふふ……それはどうかしら?いくわよ!!【スーパーワシントンタックル】!!」


 マーガレットはそう叫ぶと、そのままの超高速でダイヤに体当たりを仕掛けた。


「くっ……避けなきゃ……!!」

「もう遅いわ!!食らいなさい!!」


 

 マーガレットはダイヤをタックルで吹き飛ばす。


「きゃあああああ!!」

「ダメ押しのもう一撃!!喰らいなさい!!」


 マーガレットはダイヤにもう一度タックルを喰らわせると、そのままの超スピードでダイヤを地面に叩きつけた。


「んああ!!あっ……あぁ……」


 ダイヤは地面に叩きつけられた衝撃で気を失い、その場に倒れ込む。マーガレットの勝利であった。


「これは決まった!!勝者!!マーガレット・ワシントン!!」


 DJドグマの実況と同時に観客たちは大いに盛り上がる。


「うおおおお!!やったぞー!!」

「マーガレット・ワシントン最高!!」

「いいぞー!!もっとやれー!!」

「ふふ……どう?これで私のパワーの方が上ってことが分かったかしら……って、気絶しちゃってるわね」


 マーガレットはダイヤの気絶を確認すると、そのまま闘技場を後にした。


「と言うわけで、本日のシルバーランク第一試合はマーガレット・ワシントンの勝利に終わったぜ!!それじゃあ次の試合まで少しの時間休憩を挟むぜ!!」


 こうして、力とテクニックの戦いはマーガレットの勝利で幕を閉じた……。

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