ハッカーバトラー猫田タマキ

ブロンズランクマッチ 猫田タマキVSファン・スーイェン

「タマキさーん、次の試合でファン・スーイェンさんと戦うって聞きましたよー」


 ここはクィーンズ・ナイトのブロンズランクの控え室、ここで次の試合に向けて休憩していた猫田タマキは同じくブロンズランクの格闘女王である鈴木キョーコに話しかけられていた。


「おっ、キョーコちゃんッスか、いやーそうなんスよー」

「私も少し前にスーイェンさんの闘技を見ましたけどカンフーってすごいですね、あの洗練された動きにはビックリしちゃいました。」

「スーイェンちゃんのカンフーは本格的ッスからねー、でも私だって負けてないッスよー」


 そういいながら連続蹴りの動作をその場で見せるタマキ。このクィーンズ・ナイトは格闘女王同士が戦いあう場ではあるが、必ずしも格闘女王同士の仲が悪いわけではない。少なくともキョーコとタマキは良好な仲を築けていた。


「えー、でもタマキさんこの前私に負けたじゃないですかー」

「おー言ったなー、このこのー」

「や、やめてくださいよー」


 控え室でじゃれあうタマキとキョーコ。すると控え室の扉が開く音がし、2人がその方向を向く。


「タマキ様、次の闘技の準備ができました、こちらへどうぞ。」


 そこにいたのはこの闘技を取り仕切る運営スタッフの1人、そのスタッフの男はタマキを呼んでいるようだった。


「おっと、もう時間ッスか、じゃあ行ってくるッス、キョーコも応援してくれると嬉しいッスよー」

「あ、はい!タマキさん頑張ってください!」


 そういい残しタマキは控え室から出ていった。



「よーし!じゃあ次の闘技を始めるぜ!俺の名はDJドグマ!!次の闘技もこの俺が実況をやらせてもらうぜ!!」


 DJドグマの実況に湧く観客たち、その観客たちを大歓声が包み込む。


「おっとー、これはまたすごい歓声だ!では早速格闘女王の紹介といくか!!まずはここ最近メキメキと頭角を表してきたカンフーの使い手!!ファン・スーイェンだー!!」


 DJドグマの実況とともにファン・スーイェンが歓声に包まれながら闘技場へと歩みを進める。彼女は黒髪を後ろに結んで束め、黄色いチャイナドレスを着た

女性であった。


「そして対するは、ハッカーバトラー猫田タマキ!!ハッカーに戦闘能力はないだろと思うなかれ!!彼女のスピードはまさに目にも止まらぬ速さ!!果たしてファン・スーイェンに勝つことはできるのかぁ?!」


 そして猫田タマキも歓声を受けながら闘技場へと歩みを進める。そして、2人は闘技場の中で向かい合った。


「次の相手はどんなやつかと思ってたけど、中々かわいい子猫ちゃんがやってきたアルね」

「へへ、子猫ちゃんとは言ってくれますねー、でも子猫だからって舐めてたら痛い目みるッスよ?」

「ふぅん……それじゃあやってみるアルよ!!」

「スーイェンの掌底で試合のゴングが鳴ったー!!」


 最初に仕掛けてきたのはスーイェンであった。彼女はタマキに接近し掌底を打ち込む。タマキはそれをギリギリで回避。


「おおっと!!不意打ちとはズルいッスね!!」

「勝負の世界にズルもなにもないアル!!」


 そしてスーイェンは続けて2度3度と掌底を打ち込んでいく。しかしタマキはそれを全てギリギリのところでかわしていく。


「ふん!!かわしてばかりじゃあ私には勝てないアルよ!!」

「そりゃそうッスね!!じゃあこっちも行かせてもらうッスよ!!」

「おおっと!!タマキがスーウェンの掌底を掴んだぞ!!」


 DJドグマが叫ぶ、タマキはスーイェンの掌底をがっちりと捕まえていた。


「捕まえたッス!!」

「クッ!!放すアル!!」

「放せと言われて離すほど私は甘くないッス!!」


 そしてそのままタマキはスーイェンを自分の方に引き寄せ、連続蹴りを繰り出す。


「ぐがっ!!止めるアル!!」

「おおっとタマキの連続蹴りがスーイェンにヒット!!スーイェンたまらず後退するー!!」

「まだまだいくッスよー!」


 タマキは更にスーイェンに連続蹴りを打ち込む、しかし……。


「隙アル!!」

「なっ!?」


 スーイェンはタマキの連続蹴りが一瞬止まったところを見逃さず、カウンターで彼女の腹部に掌底を一撃打ち込む。


「くはっ!!」

「今度は私が連続で攻めるアル!!」


 スーウェンは突きを連続で繰り出し、タマキに攻撃を仕掛ける。


「スーイェンの鋭い突きがタマキにヒットするー!!」

「きゃあっ!!」


 スーイェンの鋭い突きにたまらず悲鳴をあげるタマキ、それを聞いたスーイェンは更に突きのスピードを早めていく。


「中々かわいい声で鳴くアルね!!それじゃあもっといい声を聞かせてもらうアル!!」

「やっ……やめっ……!!」


 タマキはスーウェンの攻撃を受け続ける。


「おーっと!!これはタマキ何もできずにやられっぱなしだ!!これは勝負あったかー!?」


 DJドグマは叫ぶ、それに気をよくしたスーイェンは更に攻撃を仕掛ける。


「これでトドメアル!!」


 そういってスーイェンはタマキの腹部に掌底を打ち込もうとする。しかし……。


「これを待ってたッス!!」

「なっ……なにアル!!」


 タマキはスーイェンが掌底を打ち込もうとした瞬間、彼女の腕を掴みそのまま一本背負いの体勢に入る。


「なっ……きゃああああああ!!」


 スーウェンはそのまま地面に叩きつけられる。


「な……なんで私の攻撃をカウンターすることが……!?」

「あんたの攻撃を何度も喰らってわかったッス、あんたは強烈な攻撃はお腹に叩き込む傾向にあるッス、だから最後の一撃はそこに放つだろうと考えてカウンターを取らせてもらったッス」

「くっ……」

「それにしてもあんた、かわいい声で鳴くッスね、最後にもう一度聞かせてもらうッスよ!!」


 そういうとタマキはスーウェンを空中に放り投げる。


「なっ……なにをするアル!!」

「私の必殺技ッスよ、【ローリングCAT】行かせてもらうッスよ!!」


 タマキはスーウェンに向け錐揉み回転をしながら飛び上がる、そしてそのままスーイェンに蹴りを繰り出す。

「きゃ……きゃああああああああ!!」

「決まったー!!タマキのローリングCATがスーイェンにヒットだー!!」


 タマキのローリングCATを喰らったスーウェンはそのまま地面にたたきつけられる。


「くっ……こんな小娘に負けるわけには……いかないアル!!」


 そしてスーウェンはフラフラになりながらも立ち上がる。


「おーっと、まだ立つのかスーウェン!!しかしフラフラだ!!」

「私はファン・スーイェン……私は……ガハッ!!」


 しかしそこまでだった、最後の力を振り絞って立ち上がったスーウェンであったが、これ以上の戦闘は無理だったのだ。


「そこまで!!勝者、猫田タマキー!!」


 DJドグマが試合の結果を宣言する。それを聞いた観客たちは再び歓声に沸いた。


「タマキ!!今回は強かったぜ!!」

「タマキー!!強かったぞー!!」


 観客たちの声援を聞きながら、タマキは勝利の余韻に浸っていた。


「やっぱり、勝つっていうのは

いいもんスね」


 タマキは感慨に浸りながら控え室へと戻っていくのだった。

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