第0話

例年よりも、すこしだけはやい、初雪がふった、


ちょっと前まで、ハロウィンモードだった花屋の装飾も、


すっかり気分のはやい、クリスマスモードになっていた。


気がつけば、ここでバイトを始めてから、2年がたっていた。


「ねぇ、知ってる?」


店長が、一輪の花をわたしに差し出してきた。


「ガーベラの花言葉」


それは、淡い薄紅色だった。


「いえ…」


店長は、まるで花を撫でるかのように、やさしく微笑んだ。


「ガーベラは、“希望”や“前進”。あなたにひとつあげるわ。」


そういって、もう一度わたしに笑いかけてから、ブーケを束ねる作業にもどった。


「希望…、前進…。」


そんな話をしているうちに、ちょうど時間がきたので、


わたしはあらためて店長にお礼とあいさつをして、退勤をした。


よるはすっかり冷えるようになって、


つめたい風が、おおきく吹いた。

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