第5話

落ち着くために、さいとうサンは、運ばれてきた水を一気に飲み干した。


さっきまでちゃんと話していたはずの、さくらちゃんは、モジモジしていた。


そこで初めてさいとうサンは、おれを見た。


「あ、さかぐちクン、ごめんね…。えと、どうしよう、」


「ううん、お疲れさいとうサン。おれ、帰った方がいいよね?」


立ち上がろうとしたおれを止めたのは、さくらちゃんだった。


「ごめんなさい!予定があったのに!お姉ちゃん急に来てごめんね、顔見れて良かった!」


さくらちゃんは急いで財布からドリンクバーのお金を出して、立ち上がった。


それから、さいとうサンの両手を握って思いっきり笑った。


「お姉ちゃん、またいつでも帰ってきてね!2人でも遊ぼうね!」


まるで嵐が去るように、さくらちゃんは全力で手を振って走り出した。


さいとうサンは、しばらくその背中を見つめた後に、ごめんねって言って、さっきまでさくらちゃんが座っていた方の席についた。


結局その日はカレーライスはやめて、そのままファミレスで食べることにした。

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