第3話

長かった残暑が終わり、木々が黄色に色付いて、少しずつ過ごしやすくなってきた。


夏休みが終わってからは、週に何回か、お互いの家に行き来するようになった。


今日はさいとうサンの帰りが遅いから、彼女の家でカレーを作って待っていると伝えていた。


暮れかけている夕日。


日も短くなったな、と感じていると、ちょうどマンションの外灯がついた。


階段を上って、さいとうサンの部屋の前を見ると、制服姿の女の子が座り込んでいた。


「あの、ここの家に何か?」


女の子は慌てた様子で立ち上がった。


「あれ!ここって、お兄さんの部屋でしたか?すみません!間違えました!あれ?」


「ここは、さいとうサンの部屋だけど…、知り合い?」


女の子はハッとして、表情をクルクルと変えながら、意を決した顔をした。


「妹なんです…!もしかしてお兄さんは、お姉ちゃんの彼氏ですか!?」


早口でハキハキと喋る姿は、まるでさいとうサンとは、似ても似つかないな、と思ったけど、


所々、パーツがさいとうサンと似ていた。


今日、妹が来るなんて言っていなかったから、突撃訪問なのかな。


「えっと、彼氏では…。というか、今日さいとうサンは、バイトだから遅くなるみたいだよ。」


「…お姉ちゃん、バイトなんてしてたんだ…」


さいとうサンは、1年の秋から花屋で週に2回バイトをしている。


家族なのにそんなことも知らないのは、さいとうサンが口下手だからってだけじゃない気がした。


おれが勝手に部屋に入れるのも、どうかと思ったので、


その場でさいとうサンにメッセージを送ってから、女の子には近くのファミレスで一緒に待とうと誘った。


姉然り、妹然り、男にこんなに簡単に付いていくのはどうかとも思ったけど、


それはまた、さいとうサンに改めて言うことにして、歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る