第2話

季節は過ぎて、夏になった頃には、さいとうサンとの関係はただの同級生ではなくなっていた。


2人で海に出掛けた帰り道に、


さいとうサンは、照れくさそうに鍵を渡してきた。


「ひとりに、なりたくないときとか、いつでも、あそびにきてね、」


あまり喋るのが得意じゃないさいとうサンの、


精一杯の優しさに、嬉しくてつい笑ってしまった。


突然押しかけたあの日のことを、


ずっと気にしていたのかもしれない。


さいとうサンと過ごす日々は、温かくて、


同時に恐怖も感じた。


大切な人、大切にしたい人、


また突然、居なくなったら、


今度こそ耐えられないかもしれないと思った。

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