第7話

なみのおとを、かき消すかのように、さかぐちクンはおおきくわらった、


「えーうそ、おれ振られたー?」


そういって、さかぐちクンは、てをひろげながら、砂辺に寝転んだ、


わたしはすこしだけ、くびをよこにふった、


「なんてね、うそうそ」


わたしは、ちかくのなみの跡をみた、


さかぐちクンの、いきを吸うおとが、きこえた、


「…初めてさいとうサンのことを知ったとき、少しムカついたんだ」


もうしわけなさそうに、そういった、


「なんにも欠けてないように見えるのに、自分のことを大切にしないのが当たり前だと思ってるみたいで。」


「…うん、」


「でも、見てると、そうじゃないのかもって思うようになった。」


さかぐちクンは、ニコってわらった、


「講義室で、女子グループが席に迷ってる時、さりげなく移動して横並びの席をつくってあげたり」


「…それは、」


じゃまかもしれないって、おもった、から、


「だれかが寒そうにしてるとき、そっと何も言わずに窓をしめてあげたり」


それも、たまたま、まどのちかくに、すわっていた、から…、


「さいとうサンは、自分のことより、人のことをよく見てる人なんだと思った。表情とか、感情とか、誰も気にしないようなささいなこととか。」


「…そんなこと、ないよ、」


「そうかな。おれはそういうとこ、いいなって思ったけど。」


ジリジリと、たいようがねつを増す、


あせが背中を伝った。


「いいように、とらえすぎ、だよ、」


「さいとうサンは、悪いように考えすぎ」


さかぐちクンのこえが、いつもより低くかんじた、


「ぶっちゃけ、おれのこと少しでも好きかも?って思ってくれただけで、にやけちゃうくらい嬉しいんだけど」


ちらっと視線をおくると、たしかにすこし、かおがゆるんでいた、


「恥ずかしいから見ないで」


さかぐちクンのかおが、あかいのは、たぶん、なつのあつさのせいじゃなかった。

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