第6話
「うわー、海ってしばらく来てないなー」
そういって、さかぐちクンは、おおきく、のびをした、
「わたし、うみって、はじめて、」
「まじ?」
おおきく、いきをすって、さかぐちクンのてをひっぱって、はしった、
「さかぐちクン、なつだね!」
ふりかえると、さかぐちクンは、すごくびっくりしたかおをした、
「さいとうサン、初めて笑った…」
「え、うそ、」
すこし、はずかしくなって、ゆっくり、あるいた。
はいていたサンダルをぬいで、みずに、あしをつけると、おもってたよりも、ぬるかった、
「さいとうサン、ソフトクリーム売ってたよ!」
さかぐちクンは、いつのまにか、手にソフトクリームをもっていた、
「バニラと、いちごどっちがいい?」
「あ、どっちでも…」
どっちでもいいよ、っていいかけたけど、わたしは、いちごをえらんだ。
さかぐちクンは、また、目をまるくした。
砂辺にすわって、いまにもとけそうな、アイスをふたりでたべた。
「夏って良い思い出なかったけど、今日だけでひっくり返りそうだなー」
さかぐちクンは、とおくの波を、みてた、
「さかぐちクン、」
「んー?」
波のおとが、いったり、きたりを、くりかえしつづけていた、
「すきって、なんなんだと、おもう?」
「え?」
さかぐちクンは、わたしを、みつめていた、
「…わたしは、じぶんがすきなものも、きらいなものも、どうしたいのかも、あんまりよく、わかんない、」
ソフトクリームが、すこし垂れて、すなのうえに、おちた、
「なくとなく、こうしてればいいのかなって、おもうことだけ、してきたから、」
さかぐちクンは、とおくの波に、視線をもどした、
「でも、そしたら、わたしは、いてもいなくても、おんなじみたいに、かんじるの、」
ひるがちかづいて、だんだんとひざしが、つよくなってきた、
「さかぐちクンが…、」
「うん?」
「さかぐちクンが、すきっていってくれたとき、わたしも、そうなのかもって、おもった、」
「うん」
「…でも、そしたら、いままで、じぶんがやってきたことが、まちがってたきがして…」
こんな、きたなくて、からっぽなまま、
「さかぐちクンと、いっしょにいれる自信がない…、」
なみだがでそうになって、いそいで、溶けたソフトクリームをたべた、
となりをみると、さかぐちクンはもう、とっくにたべおわっていた。
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