第3話

それから、1週間がたった、


ジメジメとしたあつさは、ねつを増して、


なにもしてないのに、あせがとまらなかった。


あの日から、さかぐちクンからの連絡は、1回もこなかった、


「ついた…」


約束はしてないけど、


わたしは、さかぐちクンのいえのまえにいた。


「ピンポーン、ピンポーン」


チャイムをならしても、さかぐちクンはでてこない、


まどがあいてるから、きっと、いるはずなのに。


すこし、ためらって、


はじめて、合鍵をつかった。


「…おじゃまします…、」


はじめてきたときにくらべて、


へやはかなり、ちらかっていた、


つくえには、たべたまんまの、カップ麺と、のみかけのペットボトル、


さかぐちクンは、ベッドでねていた。


「…さかぐちクン、さかぐちクン!」


「ん…」


ねむそうに目をこすって、


わたしをみるなり、ギョッとした。


「え、さいとうサン?待って、なんで」


「…ごめん、急に、ごめんなさい…、」


しんぱいで、とか、


あいたかったから、とか、


いいたいことは、いろいろあったけど、


さかぐちクンは、たぶん察して、


いいよって、かおして、わらった。


「うわ、ごめんね、汚くて。ちょっと顔だけ洗わせて」


さかぐちクンは、いつもみたいに、あかるくしてたけど、


むりしてるようにも、みえた、


それから、つくえの上と、床におちているものをかたづけて、


わたしのとなりに、すわった。


ききたいことは、たくさんあるけど、


なんていえばいいか、わかんなくて、


すこし、だまってた、


「…この間はごめんね」


わたしは、くびをよこにふった、


さかぐちクンは、ふふってわらった。


「あの日、両親の命日で、少し気落ちしてた。」


そのことばで、まっさきにうかんだのは、


あの日の線香の匂いじゃなかった、


「タバコ…、」


何回も、みた、


さかぐちクンが、火をつけたまま、ただ持ってるだけの、


タバコ、


「とーさんが、吸ってたから。うーん、なんていうか、線香代わり、みたいな。」


へやに、かすかに残るタバコの匂いをかいで、


わたしは、さかぐちクンのほうをみた。


「事故だったから、仕方ないんだけどね」


さかぐちクンは、こゆびだけ、つないできた、


「この時期は、結構しんどくて、」


彼の頬に伝うしずくを、


「そしたら、さいとうサンの顔見たくなって」


わたしのゆびで、溶かした。


「勝手にキスしてごめんね。」


わたしはまた、くびをよこにふった。

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