第2話

たった数ヶ月、そばにいた時間があっただけで、


わたしは、彼を、知った気になっていた、


こんなに、よわそうなひとを、


わたしは、しらない。


「じゃあ、おれ帰るわ」


「え、もう…?」


またさみしそうに、わらった、


「今日は、多分我慢できないから。」


さかぐちクンは、そのままあるいて、


そそくさと、くつをはいた。


わたしも、そのあとをおいかけた。


「…しなくていいよ、がまん、」


すこし、おどろいたかおをしたあとに、


ふふって、わらった、


「ごめんね」


ふれたか、わからないくらいの、キスをした、


「好きだよ。」


やさしいこえで、おやすみっていわれた気がしたけど、


うるさいセミのこえで、かき消された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る