第22話 モラハラ上手の綾木くん

 四股なんて言われても。それが俺の正直な感想だった。だけど女子たちは違うらしい。一緒にお風呂に入りながらも険悪な雰囲気なだんだんと立ちはじめる。


「私。今日。最初に。ここに。来た」


 ニコがなんかドヤァって感じにそう呟いた。それを他の女子たちが一斉ににらむ。


「はぁ?あんたのマグロよりもうちの感度のいいセックスの方がずっとましでしょ!」


「私。マグロ。じゃない!!」


「ていうかー!順番とかどうでもよくないですかー?どれだけ相手に喜ばれることしたかみたいな?」


「じゃあそれならあたしが一番でしょ?」


 なんかやいやいと言い合いになっている。くだらない足の引っ張り合いと見苦しいマウント取り。


「私の。幼馴染アオトより。レイジ君の方が。リードしてくれる」


「うちのダチのマツゴローよりレイジの方がうちのことわかってくれてるし!」


「わたしのところのタツキチ君よりせんぱいの方が堂々としてます!」


「あたしが住んでるナギはよりレイジの方がスマート」


「「「「だからレイジ(君)(せんぱい)(くん)は私(うち)(わたし)(あたし)のもの!」」」」


 だからいつ俺がお前らのものになったんだろう?俺は燻しがった。


「埒があかないわ。あなたもぼーっと聞いてないで誰が一番なのか選んでよ!」


「一番?」


「そうよ!だって四人をここに集めたってことはそう言うことでしょ!?」


 リルハがなんか女子側の話を纏めてきた。他の女子たちもうんうんと頷いている。


「はぁ…そもそもそれ以前の問題じゃない?」


「それ以前?!いいえ!誰と付き合うのかはっきりさせるべきよ!」


 うんうんと女子たちがやっぱりそれに追従する。だけど俺はその女子たちのノリについていけなかった。というかこの間何があったのかこいつらもう忘れてません?俺は激怒した!この無知蒙昧な女子たちをわからせねばならぬ!俺は立ち上がった。女子たちの視線が俺のエレファントに一斉に集まった。


「そっちじゃない!俺の目を見ろ!」


 そう言われて女子たちは俺と目を合わせる。俺はそもそも四股なんてしていない。それをこれから証明するのだ。


「まず一つ。俺はここでこうやって4人を集める意図なんてなかった」


「何言ってるの?一時間ズレで呼び出してたくせに?」


「ああ!そうだよ!一時間ズレだよ!一時間ごとに会ってエッチしてサヨナラするはずだったんだけど!くそ!予定が狂って各人のいる時間が被っちまったんだよ!そんなつもりじゃなかった!AVだって1プレイ1時間くらいだろう!俺もそうするつもりだった!…はい。ニコの時点で一時間オーバーしちゃって…あとはスケジュールが押してしまい四人が顔を合わせることになりました。その点においては誠に申し訳ありませんでした…」


 俺は不祥事やらかした企業の重役のように恭しく頭を下げる。女子たちはそれを聞いて唖然としていた。


「わたしよくしりませんけどー。風俗だって一時間以内でホテルから撤収って難しくないですかー?ていうかエッチ終わってわたしたちがすぐ出てく根拠って何ですか?」


「…すみません。めちゃくちゃ酔っていたので…男脳で判断しました。エッチ終えたら賢者モードで出てくやろ的な期待がありましたことをお詫びいたします」


 俺は再び恭しく頭を下げる。


「「「「うわぁ…」」」」


 女子たちが俺のことを馬鹿を見る目で見ている。まあ俺もバカだったと思う。女に賢者タイムはない。俺学んだ!もう過ちは起こさない!


「まあそれならそれでいいとしても。誰と付き合うつもりなの?うちはこんな宙ぶらりんな状況は嫌なんだけど…」


 タエコの疑問はもっともな気もするけど、そもそもの前提が間違っているのだ。だから俺は激怒しなければならない。この無知蒙昧な以下略どもにわからせねばならぬ。


「そもそもさぁ。俺たちって付き合う付き合わない以前の問題なんだけど?!」


 俺は怒りのボルテージを上げる。声を荒げると女子たちが目を見開いて俺を見る。


「俺さぁ!皆をお持ち帰りしちゃったときさぁ!それとなくこれから付き合う感出してたと思うんですけど!それに内心じゃ付き合う気でいましたよ!だけどなに?!皆さん何をしたか覚えていらっしゃいますか?!」


 俺がそう言うと女子たちがびくっと肩を震わせた。そして俺からさっと目を反らす。


「そうですよねぇー!みなさん!アオト!マツゴロー!タツキチ!ナギ!アオト!マツゴロー!タツキチ!ナギ!こいつらの名前を出して皆さん俺の前から姿を消しましたよね!なんなん!?俺何かわるいことしたぁ!?俺の方が先にセックスしたのに!俺はそいつらが理由でふられてるんですけど?!どういうことなんですかー?!ねぇ!どういうこと?!あ?!」


 俺が先にセックスしたのに…。おかしいよ!セックスできればお付き合いもできるんじゃないんですか?!むしろセックスできたのにお付き合いできないってすごく攻略何度高くない?!くない?!


「でも。幼馴染。いるのに。付き合うわけには。それは不誠実。私も傷ついた」


 ニコがなんか言い訳してるけど甘い。俺の方がずっとずっと傷ついているのだ。


「ねぇ!ねぇってばぁ!みんな俺の気持ちわかってないでしょ?!俺の方がずっとお前らよりも傷ついてるの!!いいか?!まずフラれる側はフラレタ側の100倍傷つくんだよ!そんでもってすでにセックスもしているからおまえらのさらに100倍傷ついているの!そんでもって男は女よりも2500倍くらい傷つきやすい生き物なの!それが四連荘!わかる?!俺がどれだけ傷ついたのか?!わかる?!100x100x2500x4=1億!!つまり俺はお前らの1億倍は傷ついてるの!可哀そうすぎるでしょ!?俺どんだけ可哀そうなの?!」


 俺は目の前の女の子たちよりも1億倍も傷ついているのだ。それがどれだけの痛みなのかこいつらはわかっていない。


「もうさぁ!付き合ってもいないどころかセフレにすらなれてない俺が四股とか言われるとさらに1万倍は傷つくよね?ほらこれで俺はお前らの1兆倍は傷ついてるわけだよ!」


 女子たちは俯き反省の色を見せているように見えた。さすがに俺がいかに傷ついたのかを知って身につまされたのだろう。


「それにさぁポジティブに考えてよ。ニコにはタエコっていう友達ができたし、ララミとリルハもなんか気の置けない友達同士になれたんでしょ?俺やっぱり悪いことなんもしてないよね?俺皆さんのことをここに強制的に集めたわけじゃないし、5pしたときだって皆さん楽しんでましたよね?性欲に溺れて絡み合いまくったよね?ないわーおれにわるいところまったくないわー!」


 論理武双してしまった。女子たちはぐうの音も出ないようで口を閉ざして静かに俺を見詰めている。


「たしかに。しちゃった…。タエコちゃんと百合プレイ…」


「それはその?!いいマンガを作るための経験積みだから!」


「なんだろう?こういう時って男の人がとりあえずごめんっていうシーンじゃないんですか?なんでわたしたちが悪いみたいに思わされてるんでしょう?」


「傷つけてごめんなさい!あたしが悪かったの!許して!」


 まあ皆さんはわかってくれたようなので、俺は再び浴槽に身を沈める。


「でさぁ。わりとガチな話、君たちはアオト、マツゴロー、タツキチ、ナギにこの関係バレたくないでしょ?」


 俺がそう言うと女子たちはこくんと頷いた。


「今。バレたら。アオト。可哀そう」


「マツゴローに申し訳ないよぅ」


「タツキチ君には恩がいっぱいあります。仇で返したくありません」


「ナギもなんとかしないと。あのままだといずれ刑務所にいきかねないわ。放っておけない…」


 なんか最後だけすごく怖い気がするんだけど。まあ各人もアオト、マツゴロー、タツキチ、ナギと過ごした長い時間があるのだろう。それを踏みにじって誰かと付き合うとかって選択は辛いだろう。


「俺ははっきり言えば、お前たちと恋愛してみたい。だけど色々と障害が多すぎる。いったん棚上げしない?一応情報交換で定期的には会うつもりだけど。人間関係がこんがらがってしっちゃかめっちゃくちゃでほんと着地点が全く見えないんだもの」


 俺がそう提案すると女子たちはこくりと頷いた。


「それ。いい。定期的に会って。相談」


「女子会+レイジみたいな感じね。なんか楽しそう!」


「仲間が多いに越したことはありませんよね。せんぱいがいてくれるなら何とかなりそうだし」


「そうね。こうやって一緒に戦える仲間って素敵よね。一人よりもみんなで問題に立ち向かえるって本当に素敵よね」


 女子たちも結論は出したらしい。こうして俺たちの奇妙な共闘関係が誕生したのである。これがうまくいくかは今は神のみぞ知るのだろう。俺の恋愛活動は果たしてうまくいくのか?とても気がかりであった。




---作者のひとり言---



各々の妥協で生まれるハーレムとは珍しい('ω')


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