#父の話#
前回軽くふれた、父の話をしたいと思う。
私の父はそれはそれは強い霊感の持ち主だったようだ。
マンションに住んでいた頃、偶にうちにはお坊さんが来ていた。その頃はまだ幼かった私は、『唾を飛ばすハゲ』という最低な認識で、お坊さんが家に来るのを嫌がっていた。
ここからは私の祖母から聞いた話だ。
父は幼い頃から幽霊や、幽霊ではない何かが見えていたという。
子供の頃の父は内向的で、公園などには遊びに行かず、家の風呂場で誰かとお話をしていたり、祖父の部屋には『首の長い人が来るから嫌だ』と言って寄り付かなかったりと、色々と苦労してきたようだ。
父も大人になり、幽霊や幽霊ではないものに対して免疫もついてきたのか、あまり怖がらなくなってきた時、母と出会ったそうだ。
母は好奇心旺盛な人で、父と交際が始まりしばらくしてから父は自分に霊感がある事を話すと、母は真剣に親身に話を聞いた。
その姿から、父は母と結婚したいと思い、プロポーズ。母は喜んで承諾した。
【ここから先の話は、かなり危険と言われ、祖母から聞き出すのに苦労した話だ。あなたの身に何が起ころうとも、私は一切責任を取れない。
それでも大丈夫という方のみ、読み進んで欲しい。】
私が生まれる前の話だ。
親戚が亡くなったと聞き、両親は祖母の実家、新潟県に1週間程滞在していた。
親戚一同が集まり、故人の思い出話や現在の自分の状況などそれぞれ好き勝手に話しながら、食事と酒を煽いでいた。
父は下戸なもので、ビールを数杯飲んでその場で酔い潰れてしまった。
母は何を思ったのか、父のその姿をフィルムカメラに納めた。
たったそれだけだった。
たったそれだけで、全てが狂った。
何だかんだと日も経ち、父と母は祖母と共に神奈川県横浜市のマンションに帰って来た。
母はカメラをカメラ屋さんに預け、写真を現像してもらった。
写真を見ると、親戚の酔っている姿や新潟の美しい景色などが綺麗に現像されていた。
そして一枚の写真がおかしいことに気付いた。
酔い潰れて眠っている父の横に、白いモヤが写っていた。
母は光の何かかと思い、あまり気に止めず、箪笥の中にしまったらしい。
それからしばらくして、父がよく金縛りに遭うようになった。うなされている父を、母がよく起こしていた。
大晦日、母は掃除ついでに箪笥の中身を整理する事にした。
箪笥を開けると、あの日の新潟での写真が出て来た。酔い潰れて眠っている父の写真もそこにはあった。だが、前回見た時と少し違う。
父の横にあったモヤが、何かを着ている骸骨のようなものに見えたそうだ。
母は慌てて父に見せた。
父は母に『俺の寝顔を撮ったらダメだと言っただろ!』と怒鳴ったそうだ。
両親はその写真を持って、お寺に行った。
そのお寺がどうやら偉いお坊さんで、これからは定期的に祓いに行くと言われたそうだ。
お坊さんの話はこうだ。
「貴方(父)の前世はお坊さんでした。女に溺れて自殺したお坊さんです」
前世と同じ運命を辿らない為に、お祓いが必要なんだそうだ。
このお坊さんこそ、幼い私のいう『唾を飛ばすハゲ』だ。
マンションに住んでいる時は、両親はしっかりお祓いを頼んでいた。
だが、祖父母と共に住もうと近くに一軒家を建て、そこに引っ越してからはそのお坊さんの姿を見た覚えがない。
そして私が14歳の時、父は女に溺れて私の部屋の前で首を吊った。
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