第8話

ココナッツみたいな甘い香りがする車内。

ルームミラーにはド派手なギャルとのプリクラが何枚も貼ってある。



「久しぶりじゃん」


「御無沙汰です先輩。お元気でしたか?」


「元気元気。いやーびっくりしたわーかわいくなってて」


「ありがとうございまーす」


「前はもっとダサくてちょっと太かったよな」


「あーひどい!女の子にそんな事言うなんてひどいです先輩ひどすぎます」



久しぶりに会った先輩とドライブ。

ドキドキはするけど緊張とはちょっと違う。先輩とまともに話すのってあの初めてのキスの日以来で3年ぶり2回目のはずなのに、何回も会って話した事があるみたい。不思議。



「つか今おまえ何してんの?」


「専門行ってます。○○って知ってます?」


「マジで!?誰か紹介して!」


ああ、なるほど。そっか、そういう事か。そういう感じか。それでドライブ誘ってくれたんだ。


じゃあいいや。試しに聞いてみよう。


「私なんてどうですか?」


「うん、おまえはいいや」


「あ、了解でーす」


即答。撃沈。


ちょっとショック。けっこーショック。

でも仕方ない。気を取り直して聞いてみる。


「どんな子が好きなんですか?」


「ギャル」


これも即答。また撃沈。


地味ではないがギャルではない私は無理なわけだ。納得。


「ギャル…ですね」


ギャルかー…ギャルが好きなのかー…。


「可愛い子いたら電話して」


先輩は電話番号を教えてくれた。


「わっかりましたー」



軽くフラれてなにげにショックだったけど、先輩の番号が聞けて嬉しかった。


先輩に少し近付けたような気がして。



「じゃあ、ギャル見つけておきますね」


私が助手席のドアを開けようとした時、先輩が私の右手を掴んだ。


「…?」


先輩の方に顔を向けると、先輩の顔がすぐ近くに迫っていた。



「目開けんなよ?」


と笑いながらゆっくり顔を近付けてくる先輩。



「あははっ」


つられて笑ってしまう私。



先輩の唇が優しく押し付けられた時、私はゆっくり目を閉じた。


先輩は私の後頭部を押さえると舌を入れてきた。


先輩と舌を絡ませる。


「……」


思ったよりキスが長くてちょっとびっくり。



しばらくすると先輩はキスをやめて


「…なんだよ、成長したんだな」


と笑った。



「おかげさまで」



先輩との3年ぶりのキスは煙草の味がした。

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