第7話

ある日。


私はいつものようにレジのバイトに出ていた。


すると、とても懐かしい人がやって来た。



「まだバイトしてたんだ!」



コーラ1本を持ってデカイ声で話し掛けてくる男。


私のファーストキスの相手、中学時代の憧れの先輩だった。



「いらっしゃいませ。お久しぶりです」


レジも4年目にもなればもう軽くベテランの域。


「98円になります」


「バイト何時まで?」


先輩は100円をトレーに出した。


「22時までです。てゆーかお店が22時までです」


「あ、そ。外で待ってるわ」


「2円のお返しです。ありがとうございました」



お店の時計を見ると22時まであと15分だった。





「お先に失礼しまーす」



バイトを終え、事務所から出ると駐車場に車が停まっていた。


その車から先輩が出てきた。


「よっ。お疲れ」


先輩は右手に持った小銭をチャリンチャリンと音を立てながら私の方に歩いてくると、自動販売機の前で足を止めた。



「なんか飲む?」



季節は夏。

3年前と似た光景がちょっと懐かしくて嬉しくて。



「こんなとこで何してるんですか?」



3年前と違うのは、私に少しの余裕ができた事。



「待ってるって言ったじゃん。てかなんでおまえ半笑いなの?」



先輩は煙草を吸っていた。



「いえ、別に。あはは」



またキスされちゃうかも?なんて、まさかね。



「押して」


先輩がお金を入れた自動販売機のボタンが光っている。



「ごちそうさまでーす」


私はアイスティーのボタンを押した。



「時間ある?」


「あ、はい。大丈夫です」


「んじゃ、とりあえず乗って」


先輩は助手席を指差した。



もしかしたら本当にまたキスされちゃうかも…なんてちょっとだけ期待して先輩の車に乗った。


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