第5話
1週間後。
今日は会社の飲み会。
スマホの画面で22時を過ぎた事を確認した時ちょうどマーくんから電話がかかってきた。
「はーい」
『リエ?今何してる?』
ああ、好き。この声。
初めてかかってきたマーくんからの電話の声はやっぱり心地良い。
「今?会社の飲み会~。飲んでないけど」
『…ふ~ん。終わったら電話ちょうだい』
それだけ言ってマーくんは電話を切った。
電話の向こうのマーくんはなんだか少し怒っているような気がした。
二次会が終わり、三次会へと流れていく。
マーくんに電話しなきゃ。
帰るなら今のこのタイミングしかない。
「すいません、私ちょっと…」
「えー!?リエちゃんもう帰っちゃうのー!?」
ベロベロに酔っ払った上司と先輩をなんとか振り切り抜け出す事に成功した時には0時を過ぎていた。
ヤバい遅くなっちゃった…マーくん起きてるかな?怒ってるかな?
ドキドキしながら電話をかける。
そういえば、知り合ってからマーくんに電話するの初めてだ。
『はい』
低いトーンに少し焦る。
「ごめんね遅くなって」
『来て』
「え?」
『いいから早く来てよ。リエ』
うわぁ…やっぱりなんかちょっと機嫌悪そう…。
とりあえずマーくんがいるというお店に向かった。
「ごめんマーくん。おまたせ」
「遅い~」
お店に着くとマーくんは少し酔っているみたいだった。
「酔った勢いで電話してきたのね?」
マーくんは私の肩をグッと抱き寄せると
「なんで電話くれないん?」
と少し強めの口調で言ってきた。
「え?」
イキナリ何を言い出すのかと思えばそんな事?
どうやらマーくんは、知り合ったあの日に連絡先を交換したものの、メッセージも電話もしてこない私が気に入らなかったらしい。
でも私には、軟派な感じで知り合った男には自分からは絶対に連絡しないという変な拘りがあった。
たとえそれがちょっとでも気になる男でも。
一夜限りの相手なら尚更。
相手からの連絡を待つわけではないけど、自分からしてしまうとなんだか負けたような気がして。
くだらないプライド。
連絡がこなかったらそれまで、縁がなかった、と諦めるだけ。
「俺に会いたいんじゃなかったんですかー?」
ちょっと何それ…何言ってんの!?確かに会いたかったけど。
「何を言ってるんですか?」
負けじと言い返す。
するとマーくんは笑いながら私の手を握り頭を撫でてきた。
「ナンパしてきたクセに」
どこか余裕のあるマーくんの笑顔に私はまさにK.O寸前。
「な、ナンパなんかしてないし」
やだ…酔ってるからってそんな風に触らないでよ…。
「俺に一目惚れしたんでしょ?」
「……」
マーくんの笑顔と声にどんどん高鳴る私の胸。
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