第4話

ドライブの途中、コンビニに寄った。


「リエ」


不意に名前を呼ばれドキッとした。


「なに飲む?」


彼はコーラを手に取っていた。

私がグレープフルーツジュースを選ぶと


「妊娠してんの?」


なんて笑った後、


「あとは?」


と言って私のグレープフルーツジュースをすっと取ると私の手を握り指を絡めてきた。



なにこの人…エロいんだけど…すっごいドキドキする。


こんなカッコいい人が彼氏だったらどれだけ幸せなんだろうか…羨ましいな、彼女。


私の中にはもう嫉妬のようなものが小さく芽生えてしまっていた。




―――




彼は人気のない駐車場で車を停めた。



「ごめんリエ、煙草吸ってもいい?」


「あ、どうぞ。私も吸うから」


「あ、吸うんだ」


彼は煙草に火を点けた。


「煙草吸う女は嫌い?」


「隠れて煙草吸う女が嫌い」


「あーいるね。そういう子」


「リエも吸えば?」


「ありがとう」



彼はまだまだ吸える長さの煙草を灰皿に入れた。


私が煙草に火を点けると


「何吸ってんの?」


と顔を近付けてきた。


「ひとくち吸わして」


と言って私の煙草をするりと奪ったと思ったら、チュッと私の唇が音を立てた。


「!」


「あ、間違えた」


ニヤリと笑ったその顔は子どもみたいに意地が悪くてかわいくて、でもやっぱりかっこよくて思わず笑ってしまった。


「ふふ」


「え、なんで笑うの?面白かった?」


彼が顔を近付けてきた。


「うん」


ちょっと…待って待って…この人本当にカッコよすぎる。


「じゃあさ、もう一回する?」


「え」


私の返事を待たずに、彼の唇がまた私の口を塞いだ。


「…あ、ちょっとごめん、コレ消しちゃうわ」


と言って私から奪った煙草を灰皿に入れるとすぐにまたキスをしてきた。


彼は私の後頭部を手で押さえ、煙草の味のキスは段々と深くなっていく。



「ん…」



彼のキスは私のカラダをとろけさせた。キスだけでこんな気持ちになったのは初めてかもしれない。


お互い顔の角度を変えて何度も何度もキスをした。長くて深くて甘いキスを。


でも彼はそれ以上の事はしてこなかった。




帰り際。



「また会いたい。連絡先教えて」


彼がスマホを取り出した。


「彼女いるんでしょ?」


彼の目を見て聞いてみた。


「いないよ」


彼は視線をスマホへと逸らした。


「いるって聞いたけど?」


「いないって言ってんじゃん」


と言ってキスをしてきた。


「ん」


…いる。絶対いる、彼女。


こんな時の勘はやけに鋭く働いてよく当たるもの。


「また会ってくれる?」


「うん」


だけど…また会ってもう一度このとろけるような甘いキスがしたい私は、彼に彼女がいようがいまいがもうどうでもいいと思ってしまっていた。



「マサノリだから…『マーくん』って呼んでもいい?」


「うん。よろしく」



連絡先を交換した。


マーくんの口からはハッキリ言われなかったけど、彼女がいるのは確実だと思う。


これはもうただの女の勘。


彼女がいないわけないのよ、こんなに色気がダダ漏れしてるんだから。



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