第3話


黒いパーカーのイケメンは黒いワンボックスカーに乗っていると言っていた。


駐車場に行きそれらしき車を探していると、プァンとクラクションが1回鳴った。

音がした方向を見ると大きな黒いワンボックスカーから黒いパーカーのイケメンが降りて手を挙げていた。



「あ、」


…本当に来たんだ、この人。どうしよう…なんかすごくドキドキする…。



「こんばんは~」


「ごめん突然。来ちゃった」



黒いパーカーのイケメンは声もイケボだった。好きな低さの柔らかくて優しい声。



「とりあえず乗って」


と言った彼の笑顔は本当に素敵で。



「お邪魔しまーす」


車に乗り込むと、なんとも言えない良い香りがして頭が少しクラッとした。



「ちょっとドライブでもしますか」


近くで見ると更にイケメンの彼がまた甘い微笑みを見せると私の頭はますますクラクラした。


私好みの大きな車と、その車に似合い過ぎる彼のあまりの格好良さに、もうこのままどこかに連れてってほしいとさえ思ってしまった。



「名前は?」


「リエ。あなたは?」


「マサノリ」



彼の名前はマサノリ。私と同い年。


居酒屋で一緒に飲んでいたマナの知り合いとは高校の同級生だとか。


お互い軽く自己紹介をしてたわいもない話をして。同い年だからか気も遣わず自然と話も弾んだ。



「俺に一目惚れしてくれたんだって?」


「やだ…恥ずかしい」


「ははっ」


「いや、うん…かっこいいなーって」


「ありがとう嬉しいよ。てかすげーかわいいね。めっちゃタイプ」


「あ、ありがと」



ずいぶんサラっと言うのね。なんかちょっと軽いのかなこの人。みんなに言ってるのかな。でもイヤな感じはしない。



「あ、てかなんで車?飲んでたよね?」


「あーあれノンアルなのでご心配なく」


「そうなの?え?飲まないの?」


「いや、飲むよ。でも今日は飲まない。明日仕事早いし」


「そうなんだ。お疲れ様」



そんな彼とどこに行くわけでもないドライブ。


なんて乗り心地の良い車なんだろう。


それにこの人…運転が上手い。


私は18歳の時に付き合っていた彼氏の運転する車で事故に遭い、それ以来、男の人の運転する車が怖くなっていた。


それなのに、この人の運転する車には何故か安心して乗っていられる。


なんでだろう?不思議…怖くない。


そんな小さな事だけど、私の胸がキュウッと音を立てる。


柔らかくゆっくり話してくれる彼の声が本当に心地良かった。


彼の言葉ひとつ、仕草ひとつに、なんとも言えない妙な色気を感じるのは、やっぱり彼女がいるからだと思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る