何この飲み会

PPP

『飲み行こうぜ』


スーたんと遊んどれよ。

なんか昨日から朝霧ばっかいるな、俺の章。

「あ、バイトか」

年末年始バイトだと言ってたっけ。


「うー寒っ」ブルブルッ

わざわざライトつけてまでベランダ掃除に励んでいた日暮れ。

朝霧のラインでやる気は急降下。

掃除道具を端に寄せて中に入った。

「天城のお友達の鍋屋さんとかいいな」

ラインに天城を探す。

『鍋屋さん名前なんだっけ』送信

PPP

『静香が渋谷のジョイジョイだって』

「マ?」

なんの嫌がらせ?

かじかむ手に水道の湯をかける。

まぁ暇だしいいんだけど。


スーたん嫌だろうな。

あ、静香くるなら喜ぶのか。


PPP

『予約しましょうか?いつ?』

『ごめん、ジョイジョイになった

 今から出て来れる?』送信


掃除で埃を被ったであろう服を着替え、家を出た。

あ、パンツ持ってくればよかった。

いや無しか。どのツラ下げてパンツ渡すんだよ。


誰かがもう先に来ているのかわからないけど、店のドアを開けると


「あ、こんばんは〜」

「お、忠信くんお疲れ、来てる?」

「皆さんお揃いですよ」


通された席には朝霧と静香、下田と天城がいた。

「忠信くんビールお願いします」

「りょ〜」

「あ、神田〜こっち」

「お疲れ様でーす」

「スズっころ今厨房みたいですよ」

「珍しいね、この時間に」

「新人が入って、スズさんが教えてます」

「え、厨房を?」

「食器洗いを」

そっちか。


「あ、そうだ」


行きかけた忠信くんが戻る。


「水族館のクッキーいただきました!

 あざーっす」


水族館?


「誰が彼氏なのかよくわからないけど」アハハ


「一周回って僕です!」

「絶対違いますよね?」

「あんたスズちゃん狙ってんの?

 こんな二大巨塔が取り合ってんのに」

アハハハハ

「静香さん上手い!」

わろえない


「静香ちゃん今日何してたの?」

「買い物行ったり」

「お!その腕についてるのはリンゴ!」

「買っちゃった〜」

「いいな〜俺も欲しい

 腕でSuicaピッてやってる人羨ましい!」

「え、神田も未だにカード?」ナカマガイタ

「いや普通スマホだろ」

「スマホっすね」

「普通ね」

「わたし腕でピッてしちゃったわ〜」

「いいな〜」

「買えよ」

「ほんと、買いなよ」

「ボーナス出ましたよ拓実さん」

「ボーナス以前にため込んでるでしょあんた」

「外貨に入れた」


生を一杯飲み干した頃


「静香さん!」


両手にジョッキ抱えたスーたんが来た。


「スズちゃーん」

「静香さん待っててね!絶対待っててね!」

「終わるまでいるよ、安心して」

「うん!」


すごいアウトオブ眼中


「しもぴーさんお疲れさまです!」

「いぇーい2番!」

「天城ちゃんこの前言ってた雑誌は?」

「忘れた」

「あ、拓実さんいらっしゃい」

「はいどうも」


そして見つめ合う朝霧のとスーたん。


まぁいいんだけどさ。

それでいいんだけどさ。


「注文ある?」

「俺この前のローストビーフサラダ」

「それ終わった、クリスマスのやつ」

「スズちゃん私キムチチヂミ」

「はーい」

「ポテトフライカリカリの方」

「光輝は?」

「じゃあポテトサラダ」

「巧実さん茶碗蒸しは?」

「いる~」

「あ、私も」

忙しそうな店員さんは、手慣れた操作で端末をピッピ押しながら行ってしまった。


「なんか意外と普通ですね」

「この二人揃えたらきょどると思ったけど」


静香が去って行くスーたんを凝視する。


「友達宣言が良かったのかしら」





バイトを終えた店員さんが来たのは22時だった。


「そこ変った方がよくないですか?

 スズちゃん神田主任の横?」

「静香先輩の横がいいんじゃね?」

「朝霧そっち行って」

「はいはい」


「おまたせ~」


「スズちゃん何飲む?」

「何にしよ〜」

「スーたん生搾り?」

「拓実さんそれなに?」

「お湯割り」

「ひと口ちょうだい」

「スーたん焼酎は臭いって言うじゃん」

ゴクゴク

「臭ーい」

「ほらね」

「やっぱカルピスサワー」

「忠信くんカルピスサワーお待ちして!なる早ね!」


「静香さん来てたんですね〜」

「そうなのよ、年始早々ゴルフあるの

 誰かのせいでね」ギロリ

まだ根に持ってる。


「また静香さんに会えてうれしいな~」


静香がスッと憂いた顔になる。


「ごめんね、連絡絶たなきゃよかったね」


そう言ってスーたんを撫でる。


朝霧は視線を落とした。



何が正解だったかなんてわからない。

あの時、当事者だったあのメンバーはみんな、それが正解だと決めたんだ。

後付けでなにかを肯定したり責めたり、そんなことは出来ない。


あの時、と、人はみんな後悔して時間をこなしていくんだ。


後悔をしないように、なんて言葉はきっと無意味。


どうやったって人は後悔する。


大事なのはきっと、その後。


その後悔を後悔のままにするか、糧にするか。






「じゃあ私スズちゃん送ってくね」

「やったー」


「静香さん友達はいいんすか?」

「別にいい~

 どうせ合コンまがいなことしてるし」

「尚更行け」

「ほんと行って欲しい」

「はぁ?」


スーたんは朝霧に送って欲しかったんでは?


「おやすみなさい」

「うん、おやすみ」


と思いつつ、渋谷で解散になった。



「朝霧よかったのか?」

「うん」

「もう一件行きますか?」

「俺は別にいいけど」

「巧実さんヒマなんですか?」

「ヒマすぎて明日実家帰ろうかと思う。

 正月おばあちゃん来るらしいし」

「え、あの韓国にいるアグレッシブな?」

「死ぬ前に日本の正月したいらしい」

「死なないでしょまだ当分」

「年々元気になっていく

 今はBTOBが好きなんだって」


それから4人で店を変えようと試みた。

年末30日。

それは至難の業。



「「「おじゃましまーーす」」」


うちになった。

手分けしても全員がスーパーの袋を抱えてる。


「神田、とりあえず氷」

「冷凍庫入れて」


封を切って一袋は製氷室にひっくり返し、あとは冷凍庫へ。

一緒に買ったアイスや冷凍のピザに唐揚げなんかも。


ふと朝霧が家を見渡す。


その表情は憂う。


スーたんの痕跡は無いはず。

全部片付けたから。



「神田さんピザ!」

「はいはい」

「俺うまかっちゃん」

どっから出して来た!

まさか食料物色してただけ?!

「自分で作れし、はい鍋」

飲んだ後にラーメンは食えないんじゃなかったか?



飲み直しの二次会が始まった。


「結局さ、有馬部長のワンマンですよ」

「あぁね」

「はげなのに」

「上司によるよなホント」


「いいですよね、エネ開」


天城が割と酔っている。


「いいだろ~」

「まじうらやま」


同じく酔っている下田が俺の肩を。

反対側で朝霧の肩を。




「スズちゃんが二人いればいいのにね~

 喧嘩しないでくださいよ~」



酔っ払いが。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る