輩、ブチギレ
スズと飲んだ次の朝
「お疲れ様で~~す」
新幹線の時間まで本社で書類を処理していた時
「え、静香?」
「静香さん!」
「おぉ~静香ちゃ~ん」
いきなりやってきたのは静香だった。
「あら朝霧来てたの」
「お前何?」
「今日から冬休み~」
「え、早くね?」
「その代わり正月からゴルフよ」
「そりゃ穏やかじゃねぇな」
「あんたは?」
「赤坂の契約」
「あぁね」
ストールを解きコートを脱ぎ、執事下田は言われなくともそれをささっとハンガーに掛けた。
「神田」コイコイ
微笑んだ静香の人差し指が神田を呼ぶ。
怖え。
神田も何かを察したのか顔が青ざめる。
「何でしょうか…」
「お前か」
ネクタイが締め上げられる。
「東京YSBの社長の元旦ゴルフに
へーこらついてったのは。
当たり前のようにご案内届いただろが」
「すみません…
断れなくて今年行きました…」
元旦仕事だから、前倒しで帰ってきたらしい。
「よく仕事片付いたな」
「片付いてはないけどね」
「押しつけてきたのか」
「あんたは仕事片付いたの?」ニヤニヤ
仕事?
「光芝はもう年明けてから神田がやるし
赤坂もまとまったし仙台はイベントまだだけど」
「そっちじゃないわよ
スズちゃんゲットできたの?」
「新種のポケモンっすか?」
「そのレイドやりたいな」
「スズちゃん!きみにきめた!ってね」
アハハハハ
「アハハじゃないわよ」
最近、やから度が増してる気がする。
「まだ神田んちにいるの?」
誰も情報流してない。
まぁ忙しかったし、静香もロス行ってていなかったしな。
「もういないよ
スーたん自分ち帰った」
「そう、寂しい?」
「まぁ寂しいっちゃ寂しいけど
なんというか友達として?仲良くしよっかって」
「間に受けたのね、この前の話」
「そういうわけじゃないけどそれがベストかなって」
「で?朝霧はポケモンボール投げたの?」
「100球は投げたと思われますが
この先輩ゲット出来んのですわ」
「ズリの実使わないと」
「いやどっちかというとナナの実だ」
アハハハ
「え、待って」
ぴたりと空気が止まる。
怖い。
「何で神田と終わったのに
朝霧のとこにいないわけ?」
「一人にないりたいんだと」
「何でよ」
「そりゃ色々思うことあるんだろ」
「いろいろって何よ」
「一人で頑張りたいって。
大学とかピアノとか色々」
「そんなの朝霧がいてもいなくても
結局は一人で頑張るんだからいいじゃない」
「まぁそうだけど。
色々と考えることもあるんじゃねぇの?」
「それであんた
はいそうですねって聞いたの?」
「なんかお友達になりました」
「はぁぁぁ?」
「仕方ねえじゃん
神田のこともやっぱ引きずってるし
確かに考える時間は必要な気もする」
やからはクルッと神田の方を向いた。
神田は再び青ざめる。
「あんたスズちゃんになんて言ったの?」
「え…っと…
同居やめようって…」
「で?」
「や…その…付き合ってるわけじゃないからって
なんていうかその…
なるべくスーたんが気を使わないように?」
ブチッッ!!
おい、何か切れたぞ
「この…あほんだらどもが!!」
俺も?!
「静香さんどうどう…」
「うっさい!」
「ココカイシャアルヨ」
「神田!!」
「はい!!」ビシッッ
「そんなの引きずるに決まっとるだろが!!
例え朝霧を好きでもあんたと暮らしてた間
スズちゃんはあんたのこと好きだったでしょ!
やる事やっといてそれを
付き合ってないだとぉぉぉぉ?!」
「く…苦しいーーー」
「静香さん死んじゃいますよ!」
「何をお前がふっとんじゃ!
こまっしゃくれやがって!
朝霧を好きだと言わせてふられてやらんかい!
だから朝霧のとこにも行けず
こんなことになるんだろが!
ふられましたはい次いきます!って
そんなこと出来ると思っとんのか!
このいい人かぶれが!
お前なんか神田川に落ちて見世物になればいい!」
「風邪引きますよこんな時期に川は!」ドウドウ
またピタッと止まった。
神田のネクタイ締め上げたまま。
「あんたそれいつ?
100球も投げれるほど前…?」
「えっと…あのコンサートの次の日」
ブチッッッ!!!
また切れた。
医学的に大丈夫か?
「あんたね…
あの高熱の次の日に何しとんじゃ!!」
「え…」
「はぁ?マジで?マジで言ってんの!?」
「はい…すみません」
「次の日にふって追い出したのよね…」
「追い出したというか…
いやはい…追い出しました」
「具合悪いのに?」
「いやもう熱は下がってて
食欲もあって元気だったよ」
「馬鹿!あんた熱出した事ないでしょ!
ないわよね!なんとかはってやつだわ!」
「はい…ここ最近は記憶に無いです…」
「でしょうね!
だからそんなこと出来るのよ!
昼間元気でもね夜にまたぶり返すの!
そんで何日かは怠くて具合悪いでしょ!
それをあの熱の次の日に追い出しやがって…
長いこと空けてた家に帰って食べ物もなく
寝床もどうなってたかわかったもんじゃないわよ」
「だからか…」
「何が」
「電気ポットどうやって洗うのかって聞かれた」
「あんたが看病してやんないでどうすんのよ…
こんな馬鹿野郎だったなんて…マジつらたん…」
「つらたんて」
「静香さん若干古いです」
「で、次あんた」
へ?俺も?
「何が神田を引きずってるよ」
「だってそんな感じが…」
「元を辿ればこの男の別れ方が悪い」
「スミマセン…」
「でも仕方ないでしょ?
スズちゃんには
この大馬鹿男がヒーローだったのよ。
ピンチを救って優しくしてやって
一緒に暮らして寂しくないように愛してやって。
そりゃ好きになるでしょ」
それはわかってる。
でもスズには神田の方が良かったんじゃないかって、どうしても余計なことをしてしまった気がして。
俺が現れなければ、あのまま幸せに暮らしていたかもしれないと思わずにいられない。
「あんたはそれを受け止めてやれないわけ?
スズちゃんは理不尽にフラれた事も受け入れて
あんたを好きだと決めたんでしょ?」
「お前たまにはまともにキレるんだな」
俺もホント大馬鹿男だ。
「言ったわよね」
ギロリ
「どっちでもいいの
スズちゃんが幸せなら」
「呑気にお友達ごっこしてるうちに
第三者にペイっと持ってかれたら
あんたら二人まじで殺るから」
「「はい…殺ってください」」
「さっさとゲットしてこんかーーーい!」
この輩の大暴れに、本社エネ開本部のフロアが静まりかえったのは言うまでもない。
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