　こちらは2024年夏に行われた「第七回こむら川小説大賞」の参加作品全238作品を読んだうちのピックアップとなっています。作品数が多いのでピックアップもたくさんありますので、いくつかに分けて案内します。

【第七回こむら川小説大賞】

https://kakuyomu.jp/user_events/16818093082011920376

【緋星の君/月餠さん】

https://kakuyomu.jp/works/16818093082974302319

　キャラを愛しているのがいい！

　魔術医療師のローズさんと助手のヨダカ君が依頼を解決していくお話、なのですがここから先にもうひと展開あります。そっちの展開のほうを先にクローズアップさせたくなるのですが、丁寧に読者にキャラの魅力を伝えてから更にキャラを掘り下げていくところに愛情を感じました。短編小説ってどうしてもキャラが使い捨てになりがちなので、こんな風にキャラを大切にしているのがすっごくいいなあと思いました。素敵です！

【パラレル泥酔/菊池ノボルさん】

https://kakuyomu.jp/works/16818093082952551561

　その能力が一番欲しい！

　個人的に泥酔小説大好きなので、もうタイトルだけで絶対面白いと思っていました。違う世界の自分にどんどん出会っていく話で、藤子・F・不二雄の『パラレル同窓会』のようなシュールさがありました。登場人物全員が酔っ払いなのでもう全体的に絵面が大事故すぎて面白いのですが、どうにもいろんな世界の登場人物たちにはいろんな能力が備わっているようです。そこで登場人物たちは話し合って誰の能力が一番かを決めるのですが、ここでもうその場の全員が納得する結論に達するところがとっても面白かったです。その能力、私もとっても欲しいです！

【あやかし/くろかわさん】

https://kakuyomu.jp/works/16818093082852478469

　べべん、と鳴る琵琶。

　読み終わって「うわあかっこいい」と唸ってしまった作品です。開幕で「なんだこの変な奴は」と読者を引き込むスピードがものすごく早くて、後はもう流れでお願いしますとぐぐーっと読んでしまいました。情報開示の順番（フラグ立て）がとっても上手で、読者の期待を裏切らない展開が最高でした。そして謎の琵琶法師がいいですね。キャッチコピーも何から何までかっこよかったです！

【隣の天使/もももさん】

https://kakuyomu.jp/works/16818093083045373832

　それは、天使の贈り物。

　天使病という背中に羽根が生えてしまう奇病にかかった女の子たちのお話です。まず「天使病になっちゃった」というコピー全部から作品の内容に雰囲気まで詰め込んでいるところがすごいです。そしてコピーを裏切らず、ふんわりしっとりの雰囲気を最後までまるごと書いているのがいいなあ、と思いました。結末も情景がとてもきれいで素敵でした。

【埋まらぬ牙/黒本聖南さん】

https://kakuyomu.jp/works/16818093083040377856

　なんで、生まれてきたんだ？

　個人的にものすごく心をかみ乱された作品でした。血を得るためにとある一族に執着する吸血鬼と、その吸血鬼に何らかの感情を抱く主人公のお話です。この二人の世界が限りなく閉じてお話が完結しているのもいいのですが、外に無限の広がりがあるのがいいですね。個人的にひとりものすごく気になるキャラクターがいますが、本編に全然出てこないんですよ。そこが想像力を掻き立てて、すっごくいいです……第七回こむら川小説大賞の金賞は伊達でないです！

【あなたの願いが叶うなら/不可逆性FIGさん】

https://kakuyomu.jp/works/16818093083086153310

　叶う願いはひとつだけ。

　とある病院で出会った男子高校生と異国の女の子のボーイミーツガールです。女の子は日本語が喋れないので、翻訳機でやりとりをします。そのもどかしい感じがとってもよくて、二人が好きになってしまいました。それからクライマックスで彼女が入院していた理由などが明かされていくのですが、描写のひとつひとつがキレイでじーんとしました。なんだか、朝日を見たくなる作品です。