第6話 初ボス戦

 アポロはニコと一緒に、街の外へと出た。


 即死攻撃を放ってくるボスモンスターは、森のエリアである、グリーンフォレストを進んだ先にいる。

 グリーンフォレストのボスモンスターは別にいるのだが、途中にある分かれ道を左に進むと、ブラックフォレストというエリアへ進むことができる。

 そこへ入るとすぐに、ボスモンスターとの戦闘が始まるらしい。


「案内できるのはここまでです! 即死攻撃を防ぐアイテムが存在していれば、一緒に戦えたのですが、残念です!」

「ここまで案内してくれてありがとう! 行ってくるね!」


 グリーンフォレストは序盤のエリアということで、難易度はそこまで高くない。

 別れ道まで辿り着くのは、容易であった。


 アポロは別れ道を左に進み、ブラックフォレストへと足を踏み入れる。

 ブラックフォレストは先程までの緑溢れるエリアとは違い、木などはまるで腐ったように元気がない。


「NYUROOOOOOOO!!」


 ブラックフォレストは実質的にボス部屋なので、そこへ入るとすぐに巨大な漆黒の蜘蛛がお出迎えしてくれた。

 名前はデススパイダー。

 所々赤い模様が入っており、その名前の通りかなり凶悪なイメージだ。


 そして……


「うわっ! 何これ!?」


 デススパイダーから放たれたのは、紫色のガスのようなものだ。

 徐々に広がっていくというよりも、一瞬にしてエリア全体に広がった。


「これが即死攻撃!?」


 ニコから即死攻撃の正体がガスだという情報は得ていた。

 しかしいきなりだったので、正直かなり驚いている。


 だが、アポロはすぐに冷静になる。

 あの作戦があれば、勝機はあるのだから。


「ファイアボール!」


 ファイアボールをデススパイダーに向かって撃ち込む。

 即死攻撃を食らっても、まだ倒れてはいなかったのだ。

 即死攻撃対策として立てた作戦のおかげだ。


 その作戦とは……


「ゴリ押し!!」


 アポロには、今回の作戦の鍵となるスキルがある。

 そのスキルとは、【不死鳥】。


 それにより、3回まで死亡を無効にし、HPを全回復して復活する。

 ちなみに強制発動の効果だ。


 アポロのHPは一度0になったが、すぐにそのHPは満タンとなった。

 ガスはまだフィールドに充満しているので、このままだと、またすぐに倒れてしまうだろう。


 しかし、このゲームはアイテムなどで蘇生をした際に、3秒の無敵時間が与えられるとの情報をニコから得ている。

 アポロの不死鳥の効果も、例外ではないようだ。


「ファイアボール! ファイアボール! ファイボール!」

「NYUROOOOOOOO!?」


 デススパイダーは即死攻撃こそ強かったが、防御面はかなり紙であった。

 その為、レベルの低いアポロの攻撃1発1発が致命傷となった。


 だがデススパイダーのHPは、まだ削り切れていない。


「よし! 消えた!」


 ここまで粘れるプレイヤーは、今までいなかったのだろう。

 スキル【不死鳥】が3度発動したくらいの時に、エリア中に充満したガスが綺麗になくなった。


「ファイボール!」

「NYUROOOOOOOOOOO!!」


 アポロはもう一度魔法【ファイアボール】を発動させ、青い火球をデススパイダーに向けて飛ばす。

 デススパイダーの動きは非常にのろいので、その最後の一撃も当然のようにヒットした。


 HPゲージが全て削られると、青白い光の粒子となり、デススパイダーはその場から姿を消したのであった。


「か、勝った!!」


 どちらが負けてもおかしくない戦いだった。


 そして……


『初討伐、おめでとうなのだ! 初討伐ボーナスとして、追加で経験値、報酬金、アイテムをプレゼントするのだ!』


 ナビの声だが、ナビ本人かは不明なアナウンスがアポロの脳内に流れた。

 それにより、レベルが3から一気に10まで上がった。

 レベルは5辺りから上がりにくくなると聞いていたので、序盤のエリアで一気にレベル10まで上がるのはお得感があるかもしれない。


 報酬金は通常討伐とボーナス合わせて、12000Gだ。

 今まで誰も倒したことのないボスを倒したというのに、意外とそこまでバランスブレイクするような大金ではない。

 オンラインゲームなので、そういうものなのかもしれないが。


 取得アイテムは、通常討伐分としては何もドロップしなかった。

 モンスターが落とすドロップアイテムは装備を作る際に役立つものだが、そこはフェニックスなので特になくても問題なかった。

 ただ売れば金銭にはなるので、そこは少し残念だ。


 ボーナスとして貰ったアイテムは、【魔法の書】というアイテムであった。

 名前からして魔法が覚えられそうなアイテムである。


 どんな魔法が覚えられるかは、安全なエリアに行ってから確認するとしよう。

 折角勝ったのに、ここで面倒なイベントが起こってしまう可能性もあるからだ。


 例えばだが、次のボスが現れる可能性も0ではない。

 流石に追加でボスが出て来たら、勝ち目がない。


「このゲームのデスペナルティは確か……」


 ナビがゲームの説明をする時に言っていたことを思い出す。


『このゲームにはデスペナルティが存在するのだ! 決闘以外で倒されると、全てのGと、全てのアイテムを失うのだ! 装備に関しては装備をしていなくても、失う心配はないからそこは安心するのだ! 後は日付が変わるまで取得経験値が0になるから、そこも注意なのだ!』


 つまり、今負けると金銭が0となり、更にはアイテムである魔法の書まで失ってしまう。

 アポロはすぐにブラックフォレストから抜け出し、街へと戻った。

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