第4話 1000人のプレイヤー

 無事に冒険者ライセンスを獲得したアポロ。

 冒険者ギルド内で、食事をしていくことにした。


 先程からただよって来る美味しそうな匂いに、我慢ができなくなったのだ。


「ただ今の時間、大変混みあっております。相席でもよろしいでしょうか?」

「別にいいですよ!」


 まるで、休日お昼時のフードコートのような込み具合である。


「では、ごゆっくりどうぞ」


 案内されたのは4人席だ。

 ファミレスのように仕切りなどもあり、正直雰囲気が酒場なだけで、どっちかというと冒険者ギルドの食事処はファミレスに近い。


 しかし、酒場のような席もあるにはある。

 まだ14歳であり酒は飲めないので、ファミレス席で助かった。


 相席となった正面にいる子も、同い年くらいの外見で、親近感がわいた。

 銀髪の女の子で、杖を背負っているので、魔法使いだろうか。


「はじめまして! アポロです!」


 なんだか、合コンみたいだ。

 行ったことはないが。


「こちらこそ、はじめまして! ニコです!」


 その名の通り、笑顔で挨拶を返してくれた。


「タメ口でいいですよ! あ、ちなみに私はこちらの方が楽というだけですのでお気になさらずに!」


 ニコは引き続き敬語での対応だが、不思議と堅苦しい空気はない。


「ちなみに冒険者同士はタメ口でも失礼にならないという、隠されたおきてがありますので、いきなりタメ口でも良かったんですよ!」

「そういうものなの?」


 確かにゲームなどでは、それが普通だが、このゲーム内でのプレイヤー同士のやり取りも、そういうものらしい。


「さては……」


 ニコは目をキラリと輝かせ、顔の前で手を組んでアポロを見る。


「私が住んでいる世界とは全く別な世界……つまりは異世界の方ですね?」

「えっと……?」


 残念ながら、地球人である。

 異世界には行ったことすらない。


 ただ、メルティが異世界から来たと言っていたので、異世界自体はあるのだろう。


「私、地球人ですよ?」

「地球! ということは、やはり異世界人ですね! 異世界人の友達がもう1人増えちゃいましたよ!」


 早速友達扱いしてくれるのは、嫌ではなく、むしろ嬉しいのだが……


「ど、どういうこと?」

「あれ? メルティさんに説明されなかったんですか?」


 ニコはキョトンと、首を傾げる。


「ゲームについてはされたけど、もしかして何か話して貰ってないことがあったりするの?」

「その反応だと、メルティさん話忘れていますね!」

「詳しく話して貰ってもいいかな?」

「勿論ですよ!」


 とのことで、漫画肉 (メニュー名はワイルドステーキという名前)を注文し、それが来るまでその説明を聞くことにした。


「メルティさんは、このゲームには現在約1000人のプレイヤーが参加してるって言ってたと思うんですけど、それは聞いてますか?」

「うん! 結構多いよね!」


 思ったよりも、多くの人数がプレイをしているゲームだ。


「では、そのプレイヤーについての詳細を聞いてますか?」

「それは何も言われなかったかな?」


 アポロが首を傾げながら返答をすると、ニコは言う。


「このゲームに参加しているプレイヤーは、同じ世界の人間だけじゃないんです」

「え……」


 同じ世界の人間だけではない。

 つまりは……


「異世界の人も、プレイヤーとして参加しているってこと?」

「そうなりますね!」


 そうか。

 このゲームは地球の技術と魔法があるようなファンタジーな異世界の技術を組み合わせて、作られている。


 となれば、異世界の人間に遊んで貰いたいと思うのも、製作者としては当然のことなのかもしれない。


「私は多分メルティさんと同じ世界の出身です! 私が住んでいる世界も魔法がありますからね! とは言っても、私は魔法使えないんですけどね! 生まれつき魔法の才能が無かったんですよ。しかし! このゲームなら、バリバリ魔法を使えます! ゲーム最高!」


「夢が叶って良かったね!」


「はい! ちなみに私は争いごとが嫌いなので、実際魔法が使えたとしても、それでモンスターを倒したりはしなかったとは思いますけどね!」


 ニコは嬉しそうに語るのであった。


「それにしても、異世界の人がいるゲームかぁ」

「嫌ですか?」


「嫌じゃないけど、壮大過ぎるというかなんというか」


「確かに驚きですよね! それに、魔法もない、モンスターもいない。そんな世界から来たんですよね? 情報量が多過ぎて、私がアポロさんの立場ならもっと混乱しちゃいますよ」


「あれ? 私の世界のこと話したっけ?」

「ふふふ! 実はアポロさん以外にも異世界人の友達がいるんですよ!」

「そうなの!?」


 どんな子だろうか?


「今度アポロさんを合わせてあげたいですね! 青い鳥が恋しいって言っていたので! アポロさんの姿を見せてあげたら、きっと喜んじゃいますね!」

「鳥好きかぁ! 私も動物は好きだし、会って見たいな! 同じ世界なら、リアルでも友達になれるし!」

「それ少しズルいですね!」


 と、冗談を言うようにニコは笑った。


「家が近いといいなぁ!」

「私もいずれはアポロさん達の世界にお邪魔したいですね! ちなみにその友達は、レイワに住んでいるそうです!」

「うぅ……地理が苦手過ぎて、よく分からない……どこの地名だろう?」


 勉強自体あまり得意ではないアポロだが、特に暗記科目は苦手なのだ。


「ちなみに私は上野! ……って、よく考えたらネットの人に個人情報言ったら駄目じゃん!」


 先生もそう言っていた。

 周りにインターネットをやっている人がいないので、つい気が緩んでしまった。


 正確にはネットとは少し違うかもしれないが、似たようなものだろう。


「そういえば、私も大切な友達の個人情報を勝手に言っちゃいましたね……。後で謝っておきます」

「なんかごめんね?」


 ここで、ワイルドステーキが到着する。

 通称、漫画肉だ。


「美味しそう! 凄くバーベキュー的な匂いがするよ!」

「いつ嗅いでも、いい匂いですね!」


 ナイフとフォークが握れないことには今気が付いたが、これは漫画肉なので、思い切りかぶり付くとしよう。

 アポロは翼の先端を手のように使い、かぶり付いた。

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