第3話 決闘のチュートリアル

 草原のようなエリアでしばらく休憩すると、再び飛翔し、街を目指すことにした。

 ちなみに休憩中にもスライムなどのあまり強くなさそうなモンスターが向かってきたが、それらは全て燃えた。


「大きい街だなぁ!」


 しばらくすると、街の目の前まで来た。

 兵士が門番のように出入り口に立っていたが、他の人達も特に話しかけずに出入りしていたので、アポロも街に入ろうとする。


「モンスターか? 見たことのないモンスターだな。テイマーとは別行動か?」

「テイマー?」


 テイマーというのは、確かモンスターを仲間にしている者のことを指すハズだ。

 他のRPGなどのゲームではそのようなことが多いので、このゲームもそうなのだろう。


「別行動というか、私プレイヤーなので!」

「プレイヤー? 冒険者のことか?」

「そんな感じです!」


 この兵士の頭上には名前もレベルも表示されていない。

 つまりは、NPCなのだろう。


 その為、プレイヤーという言葉が分からないのかもしれない。

 面倒なイベントを起こしたくはないので、とりあえず冒険者ということにしておいた。


「念の為、冒険者ライセンスを確認させて貰えないか?」

「実は、まだ冒険者になってないんですよね!」

「そうか。だったら早い所、冒険者ギルドで発行して貰った方がいいぞ。それにしても、モンスターが冒険者になる時代かぁ。世の中もすっかり変わっちまったな。おじさんは付いていけないよ」


 とのことで、無事に街へ入ることができた。

 もしこれがゲームでなければ、おそらくここまでスムーズに話は進まなかっただろう。


 そして、おそらくあの会話は、冒険者ギルドに行った方がいいですよというチュートリアルのようなものなのかもしれない。

 もっとも、強制イベントではないのだろうが、冒険者ライセンスとやらがあった方が今後便利なことがあるのかもしれない。


「とにかく、最初は何やるか迷うし、とりあえず冒険者ギルドに行こう!」


 ナビの言う通り、かなりリアルなゲームで、ほぼ現実と変わらない。

 つまりかなり自由度が高い。


 ここまで自由だと、何をやっていいか分からないので、門番の兵士の言う通りに、アポロは冒険者ギルドへ向かうのだった。



 冒険者ギルドの扉を潜ると、街の景色とは全然違う光景が広がっていた。

 RPGや狩りゲーに出てくる酒場のような場所と言えば、分かりやすいだろうか。


「美味しそうな匂いもする!」


 一般的に漫画肉と呼ばれる、左右に骨が付いている肉を食べているプレイヤーもいる。

 食べてみたいものである。


 しかし、今の目的は冒険者ライセンスの発行だ。


「冒険者ライセンスを発行したいんですけど!」


 受付へ行き、受付の男性に話しかける。


「了解です」


 と、言われすぐにライセンスが発行された。

 カードのサイズは定期券くらいで、触れた瞬間それは消えた。


「冒険者ライセンスはメニュー画面から表示が可能です」

「ありがとうございます!」


 受付の人と話を終えた、その時だ。


「よぉ! 新人!」

「え?」


 誰もいなかった空間から、なぜか体格の大きな男性が現れた。


「誰ですか?」

「お前……この俺、【デュエルノ・チュートリアル】様をご存知ないとは、失礼にも程があるな! この野郎! 今すぐ決闘デュエルだ!」

「あ、そういうことか!」


 このゲーム、どうやら決闘システムがあるらしい。

 彼は、それのチュートリアルの為に生えて来たキャラのようだ。

 名前が決闘のチュートリアルと、非常に分かりやすい。


「まず決闘のやり方だ! メニュー画面を開け! その次に、決闘したい相手を注視しろ! すると、メニュー画面に決闘の項目が追加されるハズだ! そこをタップして、決闘を申し込め! 相手もOKを出せば決闘が始まる!」

「なるほど!」


「おっといけねぇ! 決闘の前に、フィールドを選択できるぜ! 1つはこのフィールドで戦う、もう1つは闘技場だ! ここは冒険者ギルドで決闘は不可能! 迷惑が掛かっちまうからな! となると、今回は闘技場だな!」


「でも、ここのギルドに闘技場ってありましたっけ?」

「安心しろ! 闘技場の場合は、専用フィールドに転送され、そこで戦うことになる! つまり、どこにいようと決闘が可能って訳だな!」


 デュエルノの言う通りの手順で、画面を操作すると、いきなり周囲の景色が、観客席で囲われたかなり広い闘技場へと変化した。

 一瞬の内に移動したのだろう。


「決闘は基本的に10秒後に開始される! ただし、事前に細かく設定も可能だ! そこは相手と相談しろよ!」

「はい!」


 10秒が経過すると、決闘が開始された。


「おらああああああああ!」


 デュエルノは背中の大きな剣を抜き、こちらに向かって走って来る。

 ただ、スライム並の速度だ。


 チュートリアルなので仕方がない。


「そうだ! あれを試そう!」


 アポロは休憩中、レベルが3にまで上がった。

 特に戦闘らしい戦闘は行わなかったのだが、経験値は貰えていたらしい。


「そして、魔法も覚えた! ファイアボール!」


~~~~~

魔法名:ファイアボール

説明

火球を生成し、それを放つ。

☆エクストラ効果

一定確率で、当たった相手のHPを0にするまで燃え続け、追加ダメージを与える

~~~~~


 発射した青い火球は、デュエルノにヒットした。


「ぐあああっ!」


 HPを削り切ることはできなかったが、エクストラ効果が発動したようで、デュエルノの体は燃え続けていた。


「くそがあああっ!」


 デュエルノのHPは0となり、景色は元の冒険者ギルドへと戻る。


「くそ野郎! 覚えてろよー! 後、俺みたいのはマナー違反だから真似すんじゃねぇぞ!」


 そう言うと、デュエルノはどこかへと走って行った。

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