第2話 青き不死鳥
真っ白になった世界に、再び色が付く。
「温泉?」
気が付くと、暖かいお湯のようなものに体半分を沈めていた。
こういったゲームで、温泉から始まるのは珍しいが、悪い気はしない。
この温泉は山の頂上にある露天風呂のようで、景色も中々だ。
「それにしてもリアルだなぁ、本当に温泉に入っているみたいだよ!」
少し休んだ後、アポロはお湯から出る。
そして、ここでとあることに気が付く。
「お湯じゃない……?」
今まで温泉のお湯かと思っていたが、どうやら違ったらしい。
「マグマじゃん! ゲームでマグマって、速攻ゲームオーバーになったり、ダメージを食らったりしそうなイメージなんだけど、このゲームは大丈夫なの!?」
と、ここで自分の体の異変にも気が付く。
「燃えてる!? というか、鳥!?」
アポロは自分の体を見るが、どう見ても鳥であった。
青い炎がメラメラと燃えている。
「もしかして私、フェニックスになってる!?」
レアなアバターとは言っていたが、想像と違った。
エルフでも獣人でもなく、フェニックスだった。
「流石に予想外だよ!」
VRゲームと言えば、戦闘以外にも楽しみにしていたことがある。
それは、その世界での生活そのものである。
非日常的な世界で、日常を送る。
おそらく、多くのプレイヤーがやりたいと思うことの1つだろう。
だが、これでは人間の生活を送るのは難しいのではないのか?
「って、そうだった! 確認しておかないと!」
ナビには、ログインしたらすぐにメニューを開いて、ログアウトボタンの確認をするように言われていた。
「メニュー!」
別に口に出さなくてもいいのだが、つい口に出してしまった。
メニューからログアウトボタンは非常に目立つ位置になっており、これならば誰でも分かるだろう。
「ステータスも確認しておこう!」
手……というか、翼の先端でメニュー画面を操作してステータス画面を開く。
~~~~~
ネーム:アポロ
レベル:1
スキル:不死鳥
魔法:なし
~~~~~
「なるほどね!」
ナビが説明の時に言っていた。
『このゲームは限りなくファンタジーな異世界を再現する為に、詳細なステータスについてはあえて伏せられているのだ! 半分現実世界だと思って、あまりステータスに縛られずに楽しんで欲しいのだ! レベルが相手より低くても、諦めちゃ駄目なのだ!』
とのことだ。
「それにしても、スキル不死鳥ってなんだろう?」
アポロは不死鳥の箇所をタップする。
~~~~~
スキル:不死鳥
説明
自分のHPが0となった場合、発動。
自分のHPを全回復させる。
このスキルの効果は3回まで発動可能。
このスキルの効果は無効にならない。
~~~~~
「3回までかぁ」
流石に死なないとなると、ゲームとして成り立たなってしまう。
その為、3回という制限があるのだろう。
もっとも、こういったスキルは成長によって、性能が上がる可能性というのも十分にある。
どちらにしても、序盤からこのようなスキルを持っているのは、かなり強いのではないのだろうか?
アポロはメニューを閉じると、下の景色を眺める。
少し遠いが、かなり大きな街が見えた。
人間であれば、あそこの街がスタート地点だったのだろうか?
「遠いけど、飛んで行けばすぐだね!」
このゲームに飛行スキルがあるかどうかは現時点では不明だが、スタートの段階で飛べるアポロはかなり有利だろう。
「うおおお! これが空!」
アポロは、下の世界を見下ろし、テンションが上がっていた。
「まだ慣れてないから、結構疲れるなぁ」
街までまだ先だが、一旦地面に足を付けることにした。
「SURAAA!」
着地した瞬間、近くにいたスライムがこちらに向かって体当たりをして来た。
「いきなり戦闘!?」
かと思ったが、アポロの体に触れた瞬間スライムは青い炎に包まれ、燃えて最終的には青白い光の粒子となって消滅した。
「何もしてないけど!? もしかして、私の体って攻撃判定があるの!?」
アポロが燃えているのは、フェニックスという、あくまでもそういったキャラだと分かりやすいようにかと思っていたのだが、実際に触れるとダメージを受けてしまうらしい。
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