異世界の技術が使われたVRゲームを遊ぶことになったけど、アバターガチャでフェニックスになってしまった件
琴珠
第1話 ナビなのだ
《藤宮アポロ》
スマホに1通のメールが届いた。
『おめでとうございます! あなたは選ばれました! 後日、下記の場所に来てください! なお、このメールはあなたしか読むことはできません!』
「あ、怪しい!」
アポロは中学2年生の女の子だ。
それでも、このメールがなんとなく怪しいのは分かった。
だが……
行かなくてはならない気がする。
本日は土曜日。
学校も休みなので、そこへ向かうことにした。
◇
「ここって……」
アポロがやって来たのは上野にある、「博物館植物園駅」だ。
上野には現在使われていない駅が2つある。
1つは博物館動物園駅、この駅は昔は使われていたらしい。
そしてもう1つが博物館植物園駅だ。
こちらに関しては、駅として作ったのはいいが、結局駅として使用されなかったらしい。
勿論、入り口含め中に誰も入れないように鍵がかかってはいるのだが、メールに書いてある箇所に隠し扉があり、そこから中に入ることができた。
中は暗く、何も見えなかったので、スマホのライトで照らしながら進んでいった。
しばらく進むと、またしても扉があった。
しかもただの扉ではなく、液晶付きの扉だ。
ここに暗証番号を入力して、中に入る形らしい。
アポロはメールに記載されていた、4桁の暗証番号を入力する。
入力に成功すると、自動で扉が開いた。
「何があるんだろう……」
不安ではあるが、戻る気はない。
まるで、魔法にでも掛けられているように。
中に入ると、そこに広がっていた光景は……
「失礼します……って、研究所!?」
様々なメカニカルな機械が転がっている、研究所のような部屋であった。
「ようこそ」
そこに座っていたのは、30代くらいの女性研究員であった。
「適当に座って」
と言われたので、病院などにあるような丸い椅子に、彼女と向き合う形で座る。
「あの……ここって……」
「今から言うことは極秘、いいね?」
「は、はい」
謎の威圧感で、思わず頷きながら返事をした。
まさか、危ない実験にでも参加させられるのだろうか?
「その前に自己紹介をしておこうか。私の名前はメルティ・サイエンス。ぶっちゃけ異世界人だ」
「あはは!」
笑っておいた方がいいと思ったので、笑った。
ちなみに彼女の外見は黒髪ロングの、至って普通の日本人だ。
「冗談じゃないよ、とは言っても、無理もないけどね」
本気で言っていたらしい。
「私は異世界人でありながら、こっちの世界の“ゲーム”というものに非常に
「夢のようなゲーム!?」
ゲーマーという程でもないが、ゲーム好きなアポロはそれがどんなものなのか、気になった。
「うん。アニメとかでよくある、VRゲームって奴だよ。こっちの世界の技術だけだと、まだまだ厳しいけど、異世界の技術を掛け合わせれば開発はそこまで難しくなかったよ」
「VRゲームって、まさかあのゲームに入って戦うって奴ですか!? アニメで言うと、ブレイドアート・オンライン的な!?」
「そうだね」
「おお!」
遊んでみたいという思いが、強くなった。
「興味を持ってくれて嬉しいよ。ということで、これを」
「これは?」
渡されたのは、至って普通の白いスマホであった。
「私、スマホ持ってるんですけど」
アポロは自分のシルバーカラーのスマホを取り出し、指を指す。
「今渡したスマホには異世界の技術が使われていてね。限られた人にしか見ることも、
「そういうことですか!」
本当に極秘なゲームなのだということが分かる。
「ちなみに参加者は今の所、1000人程度かな」
「思ったよりも、多いですね!?」
てっきり、自分が1番最初か、2人目くらいだと思っていたが、全然違った。
「ゲームの遊び方は簡単、そのスマホのゲームアイコンをタップすれば、ゲームの中に入れるからね。そこで色々聞くといいよ」
「はい! ありがとうございます!」
「気を付けて帰るんだよ。後それと」
「なんですか?」
「君がここに来てしまったのは、メールに掛かっていた魔法のせいだから、後で自己嫌悪しないように」
「そうなんですか!?」
確かに、本来であればあんな怪しいメールの言う通りの場所には来ない。
「じゃあ、何かあったらいつでも来てね」
「はい!」
◇
家に帰り、ベッドに横になると、白いスマホ電源を入れる。
設定なども特になく、ホーム画面も普通のスマホと変わらないように見えるが、その中で見たことのないアイコンを発見した。
ゲームと書いてあるアイコンなので、おそらくこれをタップすればゲームが始まるのだろう。
アポロはゲームアイコンをタップする。
そして次の瞬間には、見渡す限りが真っ黒の空間にいた。
『ようこそ、【ファンタジー・オンライン】の世界へ!』
ずん〇もん……要するにアポロが住んでいる世界のインターネット動画でよく使われている、電子音声がアナウンスとして流れた。
無料で使用できるので、こういう細かい所でコストを削減したのだろうか。
そしてゲームの名前は、かなりシンプルだが、その分分かりやすい。
ファンタジー世界を舞台にした、オンラインゲームということだろう。
『僕はチュートリアルを担当する、ナビだよ! よろしくなのだ!』
「よろしく! で、最初は何を決めるの? アバターとか作っちゃう?」
『残念ながら、アバターは作れないよ!』
「どうして!?」
『リアリティを持って貰う為らしいよ! でも、安心して! リアルの見た目と全く一緒にはならないのだ!』
「どういうこと?」
『リアルの姿を極限まで美化した姿がアバターになるのだ!』
「なるほど!」
これなら、リアルバレをする可能性も低いだろう。
『が、例外もあるのだ!』
「例外?」
『たまにだけど、レアなアバターがあてがわれることがあるのだ!』
「私スマホゲーはあんまりやらないから詳しくないんだけど、ガチャって奴だね!」
『そうだね!』
レアなアバター、どんなアバターなのだろうか?
エルフや獣人、といった感じだろうか?
「あれ? ってことは、ここですることって何?」
『ゲームの簡単な説明だけだね! 後、ログアウトの仕方とかを説明するのだ!』
とのことで、ナビに一通り基本的なことを教わると、目の前が次第に真っ白になっていった。
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