異世界の技術が使われたVRゲームを遊ぶことになったけど、アバターガチャでフェニックスになってしまった件

琴珠

第1話 ナビなのだ

《藤宮アポロ》


 スマホに1通のメールが届いた。


『おめでとうございます! あなたは選ばれました! 後日、下記の場所に来てください! なお、このメールはあなたしか読むことはできません!』


「あ、怪しい!」


 アポロは中学2年生の女の子だ。

 それでも、このメールがなんとなく怪しいのは分かった。


 だが……


 行かなくてはならない気がする。


 本日は土曜日。

 学校も休みなので、そこへ向かうことにした。



「ここって……」


 アポロがやって来たのは上野にある、「博物館植物園駅」だ。

 上野には現在使われていない駅が2つある。

 1つは博物館動物園駅、この駅は昔は使われていたらしい。


 そしてもう1つが博物館植物園駅だ。

 こちらに関しては、駅として作ったのはいいが、結局駅として使用されなかったらしい。


 勿論、入り口含め中に誰も入れないように鍵がかかってはいるのだが、メールに書いてある箇所に隠し扉があり、そこから中に入ることができた。


 中は暗く、何も見えなかったので、スマホのライトで照らしながら進んでいった。

 しばらく進むと、またしても扉があった。


 しかもただの扉ではなく、液晶付きの扉だ。

 ここに暗証番号を入力して、中に入る形らしい。


 アポロはメールに記載されていた、4桁の暗証番号を入力する。

 入力に成功すると、自動で扉が開いた。


「何があるんだろう……」


 不安ではあるが、戻る気はない。

 まるで、魔法にでも掛けられているように。


 中に入ると、そこに広がっていた光景は……


「失礼します……って、研究所!?」


 様々なメカニカルな機械が転がっている、研究所のような部屋であった。


「ようこそ」


 そこに座っていたのは、30代くらいの女性研究員であった。


「適当に座って」


 と言われたので、病院などにあるような丸い椅子に、彼女と向き合う形で座る。


「あの……ここって……」

「今から言うことは極秘、いいね?」

「は、はい」


 謎の威圧感で、思わず頷きながら返事をした。

 まさか、危ない実験にでも参加させられるのだろうか?


「その前に自己紹介をしておこうか。私の名前はメルティ・サイエンス。ぶっちゃけ異世界人だ」

「あはは!」


 笑っておいた方がいいと思ったので、笑った。

 ちなみに彼女の外見は黒髪ロングの、至って普通の日本人だ。


「冗談じゃないよ、とは言っても、無理もないけどね」


 本気で言っていたらしい。


「私は異世界人でありながら、こっちの世界の“ゲーム”というものに非常にかれてね。この世界の技術と異世界の技術を合わせて、夢のようなゲームを作りたいと考えていたんだ。考えていたというか、もう作ったんだけどね」

「夢のようなゲーム!?」


 ゲーマーという程でもないが、ゲーム好きなアポロはそれがどんなものなのか、気になった。


「うん。アニメとかでよくある、VRゲームって奴だよ。こっちの世界の技術だけだと、まだまだ厳しいけど、異世界の技術を掛け合わせれば開発はそこまで難しくなかったよ」

「VRゲームって、まさかあのゲームに入って戦うって奴ですか!? アニメで言うと、ブレイドアート・オンライン的な!?」

「そうだね」

「おお!」


 遊んでみたいという思いが、強くなった。


「興味を持ってくれて嬉しいよ。ということで、これを」

「これは?」


 渡されたのは、至って普通の白いスマホであった。


「私、スマホ持ってるんですけど」


 アポロは自分のシルバーカラーのスマホを取り出し、指を指す。


「今渡したスマホには異世界の技術が使われていてね。限られた人にしか見ることも、さわることもできないし、何よりそれがゲームの世界にダイブする装置の代わりだからね」

「そういうことですか!」


 本当に極秘なゲームなのだということが分かる。


「ちなみに参加者は今の所、1000人程度かな」

「思ったよりも、多いですね!?」


 てっきり、自分が1番最初か、2人目くらいだと思っていたが、全然違った。


「ゲームの遊び方は簡単、そのスマホのゲームアイコンをタップすれば、ゲームの中に入れるからね。そこで色々聞くといいよ」

「はい! ありがとうございます!」

「気を付けて帰るんだよ。後それと」

「なんですか?」

「君がここに来てしまったのは、メールに掛かっていた魔法のせいだから、後で自己嫌悪しないように」

「そうなんですか!?」


 確かに、本来であればあんな怪しいメールの言う通りの場所には来ない。


「じゃあ、何かあったらいつでも来てね」

「はい!」



 家に帰り、ベッドに横になると、白いスマホ電源を入れる。

 設定なども特になく、ホーム画面も普通のスマホと変わらないように見えるが、その中で見たことのないアイコンを発見した。


 ゲームと書いてあるアイコンなので、おそらくこれをタップすればゲームが始まるのだろう。


 アポロはゲームアイコンをタップする。

 そして次の瞬間には、見渡す限りが真っ黒の空間にいた。


『ようこそ、【ファンタジー・オンライン】の世界へ!』


 ずん〇もん……要するにアポロが住んでいる世界のインターネット動画でよく使われている、電子音声がアナウンスとして流れた。

 無料で使用できるので、こういう細かい所でコストを削減したのだろうか。


 そしてゲームの名前は、かなりシンプルだが、その分分かりやすい。

 ファンタジー世界を舞台にした、オンラインゲームということだろう。


『僕はチュートリアルを担当する、ナビだよ! よろしくなのだ!』

「よろしく! で、最初は何を決めるの? アバターとか作っちゃう?」

『残念ながら、アバターは作れないよ!』

「どうして!?」

『リアリティを持って貰う為らしいよ! でも、安心して! リアルの見た目と全く一緒にはならないのだ!』

「どういうこと?」

『リアルの姿を極限まで美化した姿がアバターになるのだ!』

「なるほど!」


 これなら、リアルバレをする可能性も低いだろう。


『が、例外もあるのだ!』

「例外?」

『たまにだけど、レアなアバターがあてがわれることがあるのだ!』

「私スマホゲーはあんまりやらないから詳しくないんだけど、ガチャって奴だね!」

『そうだね!』


 レアなアバター、どんなアバターなのだろうか?

 エルフや獣人、といった感じだろうか?


「あれ? ってことは、ここですることって何?」

『ゲームの簡単な説明だけだね! 後、ログアウトの仕方とかを説明するのだ!』


 とのことで、ナビに一通り基本的なことを教わると、目の前が次第に真っ白になっていった。

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