第20話 電撃魔法を喰らわせた









 トレーラーから出て来た男達は、スカル団のマークが入ったお揃いの服を着てやがる。

 しかしトレーラーには賞金稼ぎ集団である、インターセプターのマークが描かれている。

 そうなると奴らは手を組んだってことかよ。

 最悪だな。


 俺は舌打ちしながら手榴弾のピンを抜く。

 そして銃座に身を隠したまま、ゴミを捨てるかのように手榴弾を投げ捨てていく。

 さらに箱から出してもうひとつ。

 三つ目を投げようとしたところで、スカル団の悲鳴と共に爆発が連続して起こった。


 しかし爆発の数と俺の投げた手榴弾の数が違う。

 俺以外にも手榴弾を投げている奴がいるらしい。

 ふと近くにいたリュウと目が合う。

 リュウがニヤリとしながら手榴弾を放り投げた。

 そういうことか。

 リュウめ、完全復活したようだな。

 頑丈な奴だとは知っていたが、あの程度の治癒魔法でここまで元に戻るとはな。 思わず笑ってしまう。


「リュウ、暴れるぞ!」


 そう言って、銃座に設置してある機関銃に取り付き引き金を引いた。

 リュウも多少ふらつきながらも機関銃をぶっ放す。


 既に手榴弾で倒れたスカル団の奴らが、芋虫みたいに地面でのたうち回っている。

 それ以外の者は物陰やトレーラーの陰に隠れていた。

 それなら狙うはトレーラーの銃座。

 俺はトレーラーのガンポッドに向かって撃ちまくった。

 しかし相手も考えることは同じ。

 お互いの武器を黙らせようと撃ちまくる。


 だが悲しいかな、防御力も攻撃力も向こうが上だった。

 敵の射手は完全に防弾された場所にいる上に、撃ってくる機関銃の数は向こうが四丁。

 対するこっちは手作り感が満載のバリケードみたいな銃座だし、機関銃はたったの二丁のみ。

 俺達のバスの方が圧倒的に不利だ。


 ただしトレーラーは今、直ぐ近くで停車している。

 この条件さえあれば俺に有利に働く。

 この距離で止まってさえいれば、確実に魔法が掛けられるからだ。

 それにこの距離なら、武器の配置も丸分かり。


 俺は詠唱を始める。

 トレーラーの全てのガンポッド部分に魔法陣が浮き出る。

 そして次の瞬間。


 浮き出た魔法陣に稲光が落ちた。

 物凄い雷鳴がとどろく。


 魔法でかみなりを起こしてやったのだ。

 電撃でやられたから、その仕返しだ。

 トレーラーの隙間から煙が漏れ始めた。

 うるさかった銃撃音が一瞬で消える。

 人前での魔法は封印していたが、今はそんな余裕もない。


 その時、リュウが叫んだ。


「9時方向っ、グレネード・ランチャー!」


 反射的に伏せる体勢に入った。

 発射音が耳に入る。

 一発じゃない、連続の発射だ。

 初弾はバスの運転席辺りの側面に命中。

 連射出来るグレネード・ランチャーということは、バギーから放たれたものか。

 となるとリボルビング・ランチャーだ。

 発射音に特徴があって分かり易い。

 ポンポンと連続して聞こえてくる。


 二発目は客席前部の側面。

 三発目と四発目は車体中央下部。

 五発目は車体後部の貨物室辺り。

 六発目は車体後部のエンジン室辺り。


 次々に爆発が起こった。


 全弾一気に撃ちやがったか。


 不幸中の幸いだったのは、全てノーマルの弾だったことか。

 ノーマル弾ならそれ程被害は大きく無いはず。


 屋根上の俺とリュウには被害無しだ。

 ならばお返しをしないといけないな。

 俺が機関銃に取り付き、銃口をバギーに向けようとした時だ。

 

「ヒャッハー、やってくれちゃったじゃねーか!」


 そんなことを叫びながら、リュウがバスから飛び降りた。

 そして愛用の武器を構えて走り出す。

 大口径のリボルバー型拳銃だ。

 始まったか、バトルジャンキーめ。

 それならバギーはリュウに任せるか。


 リュウがバギーに向かって走り出すと、標的はバスからリュウに代わった。

 バギーからは、AK系のアサルトライフルが応戦を始めた。

 これならリボルビング・ランチャーの再装填は間に合わないだろう。

 リュウの勝ちは目に見えている。


 俺は客席を確認することにした。

 車内を覗く。

 大丈夫そうだ。

 元々最初の攻撃でしびれて、床に這いつくばった状態だから無事なようだ。

 モエモエなんかは、防弾シールドに隠れたまま身動き出来ないのか、その格好が何だか笑える。


 俺は再び銃座に上がり、周囲の警戒をするために機関銃に手を掛けた。

 そこへガランと音を立てて何かが投げ込まれた。


 手榴弾!


 反射的に銃座の外に飛び出した。

 銃座の外、つまりバスの天井から飛び降りた。


 次の瞬間、俺のいた銃座で爆発が起きた。

 地面に落ちた俺は、全身打撲に苦しむ。

 それでも転がりながらバスの下に隠れる。

 そこで息を整えようとするが、胸を強打したせいか息がまともに出来ない。

 これだと魔法も放てない。


 そこへ誰かが後方からバスに近付いてくる。

 俺は必死に腕を動かし腰の拳銃をまさぐるが、装備して無いことに気が付く。

 持っているのは投石用のスリング革だけだ。

 ジャリジャリと音を立てて誰かがこちらに来る。


 足が見えた。


 男の足だ。


 この時点で味方じゃ無いのは判明。 


 クソ、まだ息がまともに出来ない!


 男の足が俺の隠れているすぐ横に来た。


 俺を探していやがる。


 男の足がバスとは反対の方向を向く。



 助かったか……



 そこへ、突然男の顔が現れた。



「なーんてね」



 見つからないフリをして、俺をからかっていたようだ。

 禿げ上がり、顔中にイボがある男。

 そのイボ男の手が俺に伸びてくる。

 イボ男に掴まれると、バス下から引きずり出された。

 俺は全身打撲の上に、息さえまともに出来ない情けない状態。

 もう、されるがままだ。


「派手にやってくれたじゃねえか」


 まずはそう言って、一発顔面を殴られた。

 かろうじて息が出来る様になってきたが、声なんて出やしない。

 喉がヒューヒューいうだけだ。

 

 これは終わった。


 そう思った時。


「う、ガガガガッ」


 目の前にいるイボ男の姿がブレた。


 そして体中の至る所が小さく破裂。


 これはあれだ。

 アースシェイク系の振動魔法だ。

 

 そしてイボ男は見るに悲惨な状態で、俺に覆い被さって来た。

 いや、倒れ込んで来たと言うべきか。


 そしてイボ男の居た後ろから、聞き慣れた少女の声。


「かっこ悪りぃなぁ、おっさん」


 聞き慣れた声だが聞き慣れた口調ではなかった。


 覆い被さっていたイボ男を何とかどかす。

 するとそこに居たのは、盾と警棒を持ったモエモエだった。











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