第15話 崩壊する街
いくら無法者の街と言えども、街中で激しい銃撃戦が展開されたとあっては、さすがに自衛団らしき部隊が出て来た。
だが頭に血が昇っているスカル団は、自衛団の制止など聞くはずもない。
逆に自衛団とスカル団との銃撃戦に発展した。
そこに武装バスからの激しい銃撃が加われば、街中は大混乱となる。
こうなると誰が敵なのか分からなくなってくる。
恐らくリュウも標的の区別など出来ていないと思われる。
多分だが、武器を持っている者を見つけ次第、スカル団じゃなくても撃ちまくっている。
もう俺は見て見ぬふりだ。
そんな銃弾が飛び交う中、バスは出入り口を目指す。
なんとか正面門まで来たんだが、門が閉じられていやがる。
「スズ、門が閉じられてる。ここは駄目だ。東門へ行け!」
『マジっすか。でもここでUターンは難しいっす!』
そう言いながらも、バスをドリフトさせながら方向を変える。
スズのドライビングテクニックには、毎度のことながら感心させられる。
街中を走っていると、混乱に乗じて強盗をやっている者が見られる。
それにギャング団同士の抗争のようなものまで見かける。
元々が無法者の街だからな、ちょっとした
そういった近くを通る都度、流れ弾が飛んできてバスの車体に当たるものだから、リュウが「良し、正当防衛!」とか言いながら、相手がギャング団だろうが盗人だろうが、手当たり次第に銃弾を撃ち込んでいく。
予備弾がスカル団の倉庫から盗んだ箱の中に入っていたらしく、リュウはストレスなく撃ち放題だ。
次第にあちこちで火の手も上がりだした。
そんな中、スカル団のマークの入ったトライクが、横道からこちらに迫ってきた。
だがリュウは直ぐにそれを発見し、機関銃を連射。
あっという間に運転手を血祭りにした。
するとトライクはそのまま横転し、近くの貯蔵庫らしき建物に突っ込んだ。
そこまでは良い。
問題はその後だ。
数秒後に爆発が起きた。
トライクが突っ込んだ倉庫には、燃料もしくは弾薬が保管されていたのだろう。
結構な規模の爆発だ。
これはヤバいな。
この街の全てのギルドを敵にしたかもしれない。
このままこのバンローの街にいるのはマズい。
何としてここから逃げないと危険だ。
「スズ、急げ、マズい展開だ!」
俺は運転手のスズを急かす。
東門に着くと、こちらも門が閉じられていた。
これだと、どこの門へ行っても閉じられているだろう。
ならば仕方ない。
「スズ、東門を突破出来るか?」
『う~ん、どうでしょうっすかねえ。このバスのグリルガード、そこまで丈夫っすかねえ。それ次第だと思うっすよ』
つまりやってみないと分からないってことか。
「スズ、構わん。試してみろ」
『了解っす!』
バスが加速する。
その方向には閉じられた東門がある。
俺は緊急車内放送を流す。
「これより悪路につき、大変揺れますので、しっかりと取っ手におつかまり下さい!」
そして東門に向かって機関銃を連射。
少しでも破壊し易い様にだ。
そこへバスが突っ込んだ。
激しい衝撃でバスを揺れる。
一瞬の浮遊感。
次に再び激しい衝撃。
何度か上下に揺られた後、何事もなかったかの様にバスは走って行く。
何とか突破出来たようだ。
後方を見てみると、街のあちこちから炎と煙が上がっている。
次回来た時に、街がなくなっていない事を願う。
まあ、しばらくは来れないだろうがな。
下手したらこの街では、お尋ね者だ。
しばらく走った所で、後部銃座のリュウから慌てる声で連絡が入る。
『ハコ社長っ、街が、街が爆発してるぞ!』
俺が振り返って街を見ると、確かに凄い規模の爆発が起きていた。
「うっわ〜、これは酷いな……」
そう俺がつぶやいた時だ。
街の方から物凄い速さで、何かが来るのが見えた。
衝撃波だ。
これはヤバイと思った時にはもう遅かった。
バスが激しく揺れる。
バスの上にいる俺とリュウは大変だ。
爆風で体を持って行かれそうになる。
「うあっ!」
咄嗟に銃座の防護板に掴まるが、飛ばされる代わりに床に打ち付けられた。
横腹に痛みが走る。
バスは緊急停車した。
少し落ち着いた所で、全員がバスから降りてバンローの街の方角を見るた。
その皆の顔は
リュウがつぶやく。
「まさかよお、街が消し飛んじまったとか……」
スズがそれに続く。
「あれって、私達がやったんじゃないっすよね?」
その疑問に俺が返答した。
「燃やした倉庫、爆発してたよな……あれが原因なのか。まあ、可能性は高そうだよな」
まさか街ひとつが消滅したとかは無いだろうが、壊滅的被害なのは先程の爆発で想像がつく。
リュウがつぶやく。
「俺達のせいなのかよ……こりゃあ、お尋ね者だな」
そこでモエモエが明るく言った。
「でもさ、証拠も消し飛んじゃったから、大丈夫、大丈夫」
全員が絶句した。
今やバンローの街は、煙に包まれて何一つ見えない。
その見たこともない光景を眺め、しばし沈黙が続いた。
俺がその沈黙を破る。
「ここで眺めててもしょうがないだろ。出発するぞ、バスに乗れ」
そこでやっと皆が動き出す。
リュウが真っ先に声を上げた。
「あ、ああ、そうだな。先へ急ごうぜ」
するとスズ。
「そうっすね。こういう事も、たまにはあるっすよね」
そして軽やかに踊るように、モエモエがバスに乗り込んで行く。
「そ、そ、気にしな〜い、気にしな〜い」
俺は最後にバスの周囲を見て回った後、バスに乗り込んだ。
酷くやられていた。
修理が必要な箇所ばかりだが、今は先を急ぐ。
予定よりもかなり遅れているからな。
予定が遅れればその分だけ、燃料など経費が掛かるからだ。
目的地のビックランドまではあと少し。
ここからは一気に走り抜ける。
――――と思っていたのだが、世の中そう上手くいかないもので、荒野の真ん中でバスが止まった。
かれこれ三時間ほど修理に時間を掛けているのだが、直りそうな雰囲気がない。
このままだと日が暮れる。
夜の魔物には出会いたくないのだが、それも無理そうな感じだ。
走っていないバスなんて、魔物の標的でしかない。
特に夜行性の魔物が危険である。
さらに運の悪い事に砂嵐がやって来た。
しかしバスの防弾ガラスも、半分以上が砕けてない状態だ。
当然のことながら、砂が車内へと吹き込んでくる。
その砂嵐も数十分で過ぎ去った。
リュウとスズは文句を言いながらも、再び修理再開だ。
そこでリュウが何かを発見したらしい。
「ハコ社長、あれ見てくれ。砂が流れてるぜ」
リュウの指し示す方を見ると、砂が地面に落ちていく所があった。
それは地下に空間があるとい事だ。
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