第16話
ピンポーン
「あら、莉乃ちゃん?どうぞー。」
「お邪魔しまーす!」
夜9時を回りそうな頃。
他の家ならこんな遅くに気軽にお邪魔なんてできない。
何度来ても優しく受け入れてくれる。
「おばさん、タルトすっごく美味しかったです!!!これお皿!あと涼に返すものが…」
頂いたタルトのお皿と涼に漫画を返そうと再び涼の家にやってきた。
「あら、わざわざごめんね。今お風呂入ってるから部屋で待っててくれる?」
おばさんの言葉に、
「はーい、あ。すぐ帰るからお茶いらないよ。」
と返事をして、私は二階へ上がった。
まさか1日に2回も涼の部屋に入るなんて。
もちろん、さっきと何も変わらない部屋の風景。
漫画を片手にカーペットに座って、そのまますぐ後ろにあるベッドに頭を預けた。
さっきも見たけれど、やっぱり目につく寄せ書きされたバレーボール。
「バレー頑張ってるよなぁ。」
確かにうちの高校は強豪でも無いし、ましてや地区予選も突破できるかできないかのレベルで…
中学時代、色々な高校のスカウトを蹴って、この高校の受験を決めた時は誰もが驚いていたのを今でもハッキリ覚えている。
まぁ、結局社会人チームに入ってるから高校なんてどこでも良かったのかもしれないけど。
中学の頃は、バレーボールの雑誌にジュニアの特集として掲載されたこともあったのに。
当の本人は、バレーは好きだけどプロになりたいわけじゃないからって。
そんなこと言っていたっけ。
春高目指さないのももったいないよなー、なんて思いつつ…
うとうとしかけた時、
「だからー、何でいるんだよ。」
お風呂あがりでほんの少しまだ髪の濡れた涼がわざとらしく大きなため息。
「漫画返しに来ただけだもん。それより…」
手に持った漫画をテーブルにポンと置くと、
「ねぇ、最後のシーンやばかった。普通に涙出た。」
興奮気味に口を開く。
「あー、でもその少し前のシーンの方が俺は…」
私より多少はテンションが低くても、こうして語れるのも実はすごく楽しい。
一見冷たい涼だけど、中身は昔から変わってない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます