第15話

そのあとすぐにお母さんが帰宅し、



「ねぇお姉ちゃん、また彼氏のとこ泊まるって私に今日の買い物おしつけたんだけど。」



「さっき莉乃に電話する前に、愛衣あいに電話したら言ってたわ。明日のご飯は愛衣が作ってくれるって。」


いつも2人ともごめんね。



と少し申し訳なさそうにするお母さん。



「お母さんが謝ることじゃなくない?家族で協力して生活するのなんて当たり前だし。それよりお父さんにお姉ちゃん泊まるって言ったのかな。」



「まぁ、帰ってきたら話せば良いわ。」



ニッコリと微笑むお母さんに、苦笑いの私。



私たち娘のことが大好きなお父さん。


高校生の時にお姉ちゃんに彼氏ができた時は三日間くらいご飯がまともに喉を通ってなかったし、大学生になって初めてお泊まりした日にはフラフラとした挙句ソファーにダイブするかのように倒れてしまった。



良い加減慣れてきたというのはあるけど、それでも今日みたいな日は顔色を悪くするのが目に浮かぶ。



そんなお父さんを見て、



『結婚するなんて言ったら死んじゃう勢いよね。』と、お母さんはいつも呆れてる。



そんなお母さんがご飯を作ってくれている間に、涼から借りた漫画を読んで、相変わらず抑えきれない興奮を、話の内容なんてまったくわからないお母さん相手に放出させながらご飯を食べる。



へー、ふーん、そうなんだー、と例え棒読みの相槌が返ってきていても、私は気づかず喋り続ける。



恋多き姉とは違って恋バナの一つもしない、むしろ漫画の話ばかりする娘をお母さんはどう思っているのか。



なんて、話し終えた後にそんなことが頭をよぎったけれどまぁ良いか。



涼とも語りたいから、後で漫画返しにいこっと。



そんなことを考えながら私はお風呂へと向かった。

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