第14話

思わぬ返事に一瞬戸惑いそうになりつつ、



「あぁ、そうだ。これ、昨日出たやつ。」



「わー!まじ!!!!」



涼から受け取ったのは、大好きな漫画の新巻。



いつの間に!!!



「読む!」



小学生になって涼が買い始めた唯一のマンガ。



私も一緒に夢中になって読んだし、お互いに主人公が好きすぎて喧嘩したこともあった。



どっちの方が主人公を好きな気持ちが大きいかで争うなんて、今考えたら意味がわからない。



「今、読み始めたら中途半端になるから持って帰ってゆっくり読むね。」



「汚すなよ。」



「汚さないってば。」



もう、本当に一言多いんだから。




「ねぇ、本当に恵麻の後輩のこと覚えてないの?」



「は?何が?」



「何が?じゃないでしょ。今朝の話。恵麻の後輩をフッたって言ってたじゃん。」



何となく気になる、涼の恋バナ。



どんな子に告白されてるのかすら私はよく知らない。



「先週3人くらいに告られたし、なんか友達連れてくる奴とかいるし、一々顔なんて覚えてない。」



冷めた声で小さくため息を吐くと、




「そんなに俺に彼女が出来るのが嫌か。」



わざとらしくニヤついた表情をしてみせた。



「はー?それはどうでも良い。」



「…あっそ。」



でも、確かに涼に彼女が出来たら…?


深く考えたこと無かったなぁ。



「涼に彼女出来たら…登下校も一緒にできないよね。」



「それはどうでも良くね。」



「良くないよ。私だったら彼氏が他の女の子と二人で歩いてるの、何か嫌だな。」




いくら私が涼とはそんなんじゃないって言ったって、見る方がどう捉えるかだもん。



やっぱり良くないよ。




「…へぇ。」



再び視線をスマホに移した涼は、ベッドに背を預けるように寝転んだ。



その時、ちょうど一階からおばさんの声がして私は大きな声で返事をした。




「じゃあ借りてくから。」



「おー。」



やっぱり私には視線を移さないまま返事をした涼に気にすることもせず、私は隣にある自分の家へと戻った。

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