第13話

それと同時に、




「あら、涼起きた?」



おばさんがお茶を持って来てくれた。




「母さん、勝手にこいつ入れるなよ。」



寝起きの不機嫌さに加えて、さらに私に対する機嫌の悪さが表情と雰囲気からすぐに読み取れる。




「あらー、見られて困るものでもあるのー?莉乃ちゃん、もう少しで出来上がるから待っててね。」



「はーい。」



不機嫌な涼には慣れっこのおばさんは、変わらぬ様子でニコニコと部屋をあとにした。



「見られて困るものでもあるのー?」



さっきのおばさんの真似をして、私はわざとらしくベッドの下を覗き込んだ。



不機嫌な涼には私も慣れっこなのだ。



「んなありきたりなところにはねーよ。」



「え、てことは一応あるんだ。」



素直に認めるとも思わなかった。




「健全な男子高校生ですから。」



ふぁ~、と欠伸をしながら脱ぎ捨てた制服をようやくハンガーへかけ始める。



座っている目線から、立ち上がった涼を見るとなおさらその背の高さを実感する。



「春の身体測定、身長何センチだったの?」



「179。」



その制服のポケットからスマホを取り出すと、おもむろに操作し始めた涼は、




「お前いつまでいるんだよ。」



私に視線を一瞬移して、そんなことを言う。




「おばさんのタルトが焼けるまで。」



何もおかしいことは言っていない。



けれど涼からすれば早く出て行って欲しいんだろうし、なんならリビングで待っとけくらいに思っているのだろう。



心の中で、はいはいとため息を吐きながら立ち上がろうとした時、




「ふーん。」



涼が興味なさそうに返事をした。



あれ…?



てっきり、出てけって言われるかと思ったのに。

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