第11話

「おばあちゃんが野菜送ってくれたから持ってきたの!」



「あらー!ありがとねいつも。あ、そうだ!」



持ってきた袋を手渡すと、




「今ね、デザート用にタルト焼いてたの。良かったら持って行って?」




家に入った時から感じていた甘い匂いはどうやらフルーツタルトを焼いてる最中だったみたい。




「いいのー!?おばさんのタルト大好きだから嬉しい!」



「ふふ、ぜひ持って行って。まだ少し時間もかかるからその間、涼の相手でもしてあげてくれる?」



「涼、今日はバレー行ってないの?」




涼は学校の部活には入っていないけれど、大人のクラブチームに混ざってバレーボールをしている。



小学校から続けていたバレーを高校でやらないのにはビックリしたけど、中学の時のコーチからその社会人バレーに誘われたらしくそっちを選んだみたい。



いつも学校が終わってすぐ自主練も兼ねて早くに行っているから、この時間でも家にいるのは珍しいな。




「今日はお休みみたいよ。そのせいで、帰って来た途端寝ちゃって…お茶持って行くから遠慮なく部屋に入っちゃって。」



ニッコリ笑うおばさんに、背中を押されるような形で私は2階の涼の部屋へ向かった。




滅多に入ることがない涼の部屋。



しかも当の本人は寝ているっていう…



起きたら怒られそう…



でもおばさんが言ったし、まぁいいか。



特に深く考えることもせず、私は、



「涼ー!入るよ!」



一応、ドアの前で呼びかけてから、中へと足をすすめた。



もちろん返事はないし、案の定、ベッドの上でスヤスヤ眠っている。




制服も脱いだままカーペットの上に脱ぎ捨てられている。




「超男子っぽい。」



私がそんなことしたら、せっかくのプリーツスカートが台無しになっちゃうもん。

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