第10話

そんなこんなで今日一日を少しだけブルーな気持ちで終えた私は、相変わらず一緒に歩いているのにイヤフォンを装着しようとする涼を怒りながら、お姉ちゃんから押し付けられた買い物を付き合わせ帰宅した。




共働きの両親に代わって、いつも私と姉が順番で晩御飯の支度をするのだけれど…



急に鳴り出すスマホ。



画面表示には、お母さんの文字。



『莉乃?もう帰ってるの?』



「うん、今家ついたとこ。」



この時間に電話なんて珍しいな。


まだ定時まで1時間はある。



『外勤先から直帰して良いって言われたから、もう帰れることになったの。だから今日はご飯作らなくて良いよ。』



「本当!?やったー!」



『それでね、昨日おばあちゃんが送ってくれた野菜お隣に持って行ってくれる?いつものところに入ってるから。トマトは野菜室。』



大量の野菜達。


この時期になると、田舎のおばあちゃんが家で採れた野菜を送ってくれるんだ。



「もう分けてあるってことだよね。了解だよー。」



こうしておばあちゃんや親戚が何かを送ってくるたびに、涼の家に持って行くのが日課。



その分、涼の家からもたくさんの物を貰ってるんだ。



ご近所付き合いってきっとこんな感じなんだろうなって。



お母さんに頼まれた野菜を手に涼の家のインターフォンを鳴らすと、



「はーい、あら!莉乃ちゃん!どうぞー!」



すぐに涼のお母さんの声がして、扉の鍵を開けてくれる。



慣れた足取りでリビングへ行けば、



「莉乃ちゃん、いらっしゃい。何だか久しぶりね。」



いつ見ても可愛いおばさんは、おばさんというのも何だか気が引けるくらい可愛い。

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