第3話

橘莉乃たちばなりの


高校二年生。


2人姉妹の次女。




共働きの両親と大学生の姉と4人暮らし。



普段はこんなに寝坊することなんかないのだけれど、ない…のだけれど……ない…はず…



こう見えて遅刻したことは一度もない。



小中と陸上部だった私は足の速さには自信があったりする。



何より今日は天気が良くて、



「気持ちぃー!」




走りがいがあるなぁ、なんて思っていると、



「あー!!涼!おはよー!」



角を曲がった所で、見覚えのある背中。



ここまで来れば、もう大丈夫。


ほっと胸を撫で下ろしながら、



「もー、家出る前に起こしに来てよー。」



猫背気味のその背中をバシッと叩くと、



「おはよ。つか朝からうるせー…寝坊?」



相変わらず耳につけたイヤフォンを私に外されて嫌そうな顔をする。


一度視線を合わせてすぐにポケットに入れたままのスマホを取り出すと、外したばかりのイヤフォンを綺麗に絡ませた。




「そうなの。お姉ちゃんに起こされてなかったら多分まだ寝てたからね!」



「ドヤるところじゃねーからな。」



バカか、とため息をつかれた。



涼とは家が隣同士のいわゆる幼なじみの腐れ縁。



よく漫画なんかで、部屋が目の前でベランダを伝って行ったり来たり…


なんてのがあるけれど、うちはちょっと違う。




確かに部屋は窓越しに隣。


けれど私の部屋にベランダはあるけれど涼の部屋には無いし、行ったり来たりなんてそんな危ないこと中々しない。



お互いの部屋に入ることだってここ最近じゃほとんどないし。



私は気にしないけど、涼は多分そういうの気にするから…

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