第10話

「とりあえずお疲れ。」


「お疲れ様です。」


注文をおえて、運ばれて来たビールで喉を潤すと、頑張ってよかったなんて思える。



「葵はお酒強くないだろ?」


「もう大学生の頃とは違いますよ。私だってそれなりにいけます。」


「春先の歓迎会では結構酔っ払ってたぞ。」


「あの時は井上先輩のペースに飲まれました。」


「井上危ないな、あいつ一番強いからタチ悪いんだよな。」



1つ上の男の先輩。


隣に座ってしまったのが運の尽き。


飲め飲めと言われ続け、経営企画部に慣れていない私はそのまま飲み続けてしまって、結局家が近い後輩に送ってもらうという中々の失態を犯してしまったのだ。



「今度から社内の飲み会は俺の隣な。見張っておく。」


「そんな、若い女性職員でもないのに気にしてもらうなんて…。」


そんなの贅沢すぎる。



「俺にとっては大学の頃から葵はずっと、目の離せない妹みたいなもんだから。」


心配してるんだ。



と、本当に優しい表情で、優しい口調で…



「…ありがとうございます。」


あぁ…


恥ずかしい。



ふと視線を落としてしまうくらいに妙に恥ずかしい気持ちになった。



目の前にあるビールをもう一口流し込んで、心を落ち着かせよう。


でないと、心臓がドキドキして痛いもの。

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