第36話

「はぁ?謙遜すんなよ、このイケメン野郎が。」


嫌そうに顔を歪めた悟。


それと同時にマスターがちょうど新しい酒が入ったグラスを俺たちの前に置くと、



「イケメンがイケメンにイケメン野郎なんて、会話のレベルが違うなぁ、お前らは。」


茶化すようにそう言った。


正直、苦笑いしかできない。



「なんだよ、マスターだってイケメンじゃん。女の子手玉に取ってるんでしょー。」


悟が調子良くそんなことを言うと、勘弁してくれ、と笑いながら店の奥に消えて行った。




「話逸れたけど、女子高生、絶対お前に惚れてるじゃん。いや、つーか、もうヤッた?」



「うるせーよ。ヤらねーよ。」



こいつは本当に…


27にもなってそれしか頭にない。


っていうのは少し言い過ぎか。




「ヤッてねーのかよ、ヤれよ。」



「なんでだよ。」


…やっぱりこいつ、頭ん中それしかねぇ。




「俺ならヤる。すぐヤる。ちなみに可愛い?」



出た。


無類の面食い男だ。



まぁ、面食いだろうがなんだろうが寄ってくる女は数知れずってとこなんだろうけど。



にしても問題発言すぎる。


高校生だぞ。



「なぁー、可愛い?可愛くない?」



「あー、可愛いな。つか、大人っぽい。」



「へぇ…どんな?」



「学年に1人はいるだろ。綺麗だけど逆に近寄りがたい美人。」



「あー…、なるほどね。」



それに、不思議な空気を纏っている。


オーラ…?


よくわからない。


うまく例えが見つからないけれど、クールそうでいて、でも無邪気さも垣間見える不思議な女の子だと思った。


一見大人びているのに、あどけなさはしっかり残っている。


って、高校生なんだからあどけなさがあって当然か。

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