第32話

「ごちそうさまでした。」


「あ、私片付けるので…」


空いたお皿をシンクに運んだ九条さんに慌てていると、


「何でだよ、片付けくらいする。」


そのままスポンジを手に取って、洗っている姿がなんだか不釣り合い…というか不思議で…



「あ、じゃあ私は拭きますね。」


九条さんが、と言うより今のこの状況が不思議なのかも。


九条さんがお皿を洗って私が拭くなんて、側から見たらおかしい。



「久しぶりに誰かの作った家庭料理?って言うのかな、食べたなぁ…」



「自分ではあまり料理はしないんですか?」



「あぁ、買って済ませるか外食がほとんど。」



作ってくれるような女の人ならたくさんいそうなのに…


やっぱり大人の事情はそれぞれだ。



だけど、それなら…



「あの、私…作ります。」



「え?」



「九条さんの分も、ご飯作ります。」



「いや、それは嬉しいけど大変じゃん。」



「1人分も2人分も変わらないです。それに、家具とか色々お世話になってしまったので…」



リビングの一件もあって、申し訳ない気持ちがいっぱいすぎる。


せめてこれくらい、返さなければ。



「それは本当に気にしなくて良いことだから。」


控えめな私に気を遣ったのか、九条さんも少しだけ困った様子だった。



「あ、えっと…迷惑、ですか?やっぱりこれも干渉と同じ…」



迷惑ですか?なんて聞いて、迷惑だともハッキリ言えないだろうに、私も質問の仕方を間違えてしまったかもしれない。

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