第31話
「いい匂い…」
お皿に盛り付けをしている最中、ちょうど良くシャワーを浴びた後の九条さんが出てきた。
「もうできるので…」
「生姜焼き?」
「はい、あとサラダ…大丈夫ですか?」
作り置きしていたもの。
「あぁ、もちろん。」
味噌汁とご飯もよそって、ダイニングテーブルに並べると、
「やべ、本気で美味そうなんだけど。」
子供のようにわかりやすいくらい、笑顔を浮かべる九条さんに少しだけ胸が踊った。
そんな顔もするんだ…
「いただきます。」
少し怖くて、キッチンからその反応をチラリと盗み見る私は内心、冷や汗がたくさん。
作りますなんて出しゃばってしまったけれど、大丈夫だろうか?
味が合わなかったら…
「うま…」
一口、口に入れてすぐ九条さんがもらした言葉は否定的な物ではなかった。
「…大丈夫そうですか?」
心配そうに聞く私にも、
「すげー美味い。久しぶりにこんな美味いもん食べた。」
笑みを見せてくれた。
「よかった…」
九条さんの言葉にただただ、安心。
言葉通り、あっという間に綺麗に完食してくれたおかげで、私の心の中にあった不安も綺麗に取り除かれた気がしている。
やっぱり誰かのためにご飯を作るっていいなぁ。
父のためにいつもご飯を作って、そんな私が作ったご飯をどんなに忙しくてもしっかり食べてくれていたのが、すごく嬉しかったもの。
ご飯はやっぱり大切だって心から思うから。
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